大阪IR、2030年ごろ開業へ 経済効果は1兆4000億円
京阪の動きにJR、近鉄なども延伸計画に本腰か
大阪市で2030年ごろの開業を予定している「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)」の整備計画が政府に認定されたことで、関連のインフラ整備が進み、不動産投資家にとっても、大阪がますます投資妙味のあるエリアになりそうだ。
とくにチャンスを生みそうなのが鉄道の延伸だ。報道によると、認定を受け、京阪ホールディングスがIRの会場方面への延伸を今年度中にも最終決定する方針を固めたという。JR、近鉄などほかの鉄道会社も、IRが認定されれば延伸の検討を始めるというスタンスだったため、京阪の動きに触発され、一気に事態が動き始める可能性がある。沿線の居住人口や宿泊人口の増加が期待できそうだ。
大阪IRは、大阪湾に浮かぶ人工島・夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)で、30年前半ごろに開業することが計画されている。ちなみに、夢洲で25年、大阪・関西万博も開かれる。
大阪府と市は国に対し、昨年4月に整備計画を申請。はじめは、秋ごろまでに認定されるのではないかとの見方も上がっていたが、遅れに遅れ、最終的に今年4月14日の認定となった。
事業者は、米カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人とオリックスを中核株主とする「大阪IR株式会社」。年間の来場者数を約2000万人、近畿圏への経済波及効果を1兆1400億円とそろばんを弾いている。
IRが目的で来阪する国内外からの観光客による消費や、IRや関連施設で働く人たちの雇用、必要な設備の建設まで、経済的な好影響があれこれ広がりそうだ。
そして、不動産投資家が注目したいのは、IRが開業することで夢洲方面への鉄道延伸計画が進み始めそうだということだ。
京阪は今年7月に会長直轄の延伸検討委員会を立ち上げへ
中之島駅と大阪メトロ九条駅が接続、京都からもIRへ行きやすく
メディアの5月の報道によると、京阪HDは、夢洲方面への中之島線の延伸を、今年度中にも最終決定するという。その前段階として、7月に、加藤好文会長直轄の検討委員会を立ち上げるとのことだ。
具体的には、現在、終点となっている中之島駅を、大阪メトロ中央線が通る九条駅とつなぐ。大阪メトロ中央線は、すでに夢洲への延伸が決まっている。つまり、中之島駅と九条駅がつながれば、京阪に乗ると、簡単に夢洲のIR会場まで行くことが可能になるというわけだ。
路線図を見ていただければわかるように、京阪が通る大阪府内の駅の周辺はもちろん、京都方面からの夢洲への便も良くなる。
IRで働く人のための賃貸住宅や、IRへ観光に行く人、IR内に設けられる、大規模な会議や展示場の会場となる「MICE(マイス)施設」に仕事で行く人のための宿泊施設などの需要が高まり、不動産投資家にとり、いいチャンスが生まれるだろう。
加えて京阪HDは、京都方面と夢洲を結ぶ新たな観光特急列車の開発も検討しているという。これも、京都周辺の宿泊施設の需要拡大の追い風となりそうだ。
JR西日本は桜島線を延伸計画 USJ観光客とのダブル需要も
近鉄は奈良線とけいはんな線の接続を目指す
一方、JR西日本が検討しているのが、桜島線を夢洲まで延伸させる計画だ。現在の終点は桜島駅で、近くにはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)がある。桜島線が夢洲まで延びれば、USJとIRを一緒に楽しみたいという観光客の宿泊需要が沿線で高まるだろう。
また、桜島線を夢洲まで延伸させるためには、大規模な海底トンネルの工事が必要となる。その工事にかかわる建設関係の人たちの賃貸需要も高まることだろう。
一方、近鉄グループホールディングスも、奈良駅とつながる奈良線と、前述した大阪メトロ中央線に乗り入れるけいはんな線をつなぐ計画を持っている。
この接続計画が実現すれば、やはり奈良の観光と、IRでのレジャーを同時に楽しみたいという人の、奈良での宿泊需要が高まるはずだ。
IRに対しては、ギャンブル依存症や土壌汚染への懸念をめぐり反対する人が地元でも少なくない。
しかし、国が認定してしまったからには、そうした懸念を和らげる対策がとられつつ、すべてが前に進んでいくことだろう。
不動産投資家にとっても数多くのチャンスが生まれてくるので、しっかりアンテナを張り、賢く動いていきたい。
取材・文:
(おだぎりたかし)