埼玉県南東部に位置し、約34万人の人口を抱える中核市の越谷市。その中心といえるのが、JR武蔵野線の南越谷駅と東武スカイツリーラインの新越谷駅が隣り合うエリアだ。ここから徒歩5分ほどの場所にあるのが複合型商業施設の越谷サンシティで、2029年のリニューアルオープンに向けた建て替え計画が進んでいる。
半世紀にわたって親しまれた複合施設が
越谷市の主導で建て替えリニューアル
1979年の誕生以来、越谷市民に愛されてきた越谷サンシティ。約2万㎡もの広大な敷地に建つこの複合施設は、イオン南越谷店などが入る商業施設棟と越谷コミュニティセンターなどが入る公共施設棟に分かれている。
越谷コミュニティセンターは約1600名を収容できる大ホール、小ホール、展示ホールなどを備え、文化や芸術の拠点施設としてお馴染みだ。ほかにも越谷市の南部出張所や南部図書館があり、市民にとって不可欠な施設といえるだろう。
建てられたのは40年以上前だが、公共施設棟は当時の流行りだったモダニズム建築のたたずまいが存在感をアピール。1階と2階に広場を設けたゆとりのある敷地の使い方のおかげで、ヴィンテージマンションのような魅力を放っている。
しかしながら、1998年に新越谷駅直結の商業施設である新越谷ヴァリエが、2008年には隣町にイオンレイクタウンがオープンしたことで、越谷サンシティ周辺のにぎわいも徐々に減少していった。
こうした状況の中、2018年に越谷市は「(仮称)南越谷駅・新越谷駅周辺地域にぎわい創出事業構想案」を策定。南越谷駅と新越谷駅周辺地域におけるにぎわいの創出と、今後の越谷サンシティのあり方について検討を行ってきた。
その一方で商業施設棟の管理・運営を行ってきた第三セクターの越谷コミュニティプラザ(KCP)は、経営不振によって解散が決定。越谷市がKCP所有分の土地・建物を購入し、越谷サンシティ全体の所有権を取得したことで、再開発計画が一本化された。そして、2019年に越谷市は「越谷サンシティ整備基本計画」を決定し、整備コンセプトや施設機能などの方向性が明らかになった。
激動する時代の変化を見極めながら
市民から愛されるまちづくりを目指す
新しい越谷サンシティは、これまでと同じように公共施設と民間施設によって構成。イベントホールや図書室、出張所、広場といった機能も引き継がれる予定だ。そして、民間施設には、公共施設との相乗強化が期待できる内容がこれから決められていく。
整備コンセプトには、以下の4点が盛り込まれている。1つ目は「シビックプライド(郷土愛)を醸成するシンボリックな空間の形成」である。
全国の都市で均質化が進み、その土地ならでは個性が失われる中、「センシュアス・シティ(人が肌で感じられるまち/五感で感じられるまち)」として南越谷ならでの魅力を発信。これまでの歴史や時代の変化などを踏まえ、市民のシビックプライド(郷土愛)を醸成するシンボリックな空間を目指す。
2つ目の「人を育て、人から愛される施設」は、まちづくりの主役は市民という考えから生まれたものだ。
魅力的なまちづくりには、市民自らが実現したいことを掲げ、主体的に活動することが欠かせない。ホールや広場を利用したイベントの開催など、市民の参画を促進するためにはどのような仕組みが必要なのかといったことが、これからも検討されていく。それによって、市民から愛される施設になる。
3つ目は「広い視野を持った『にぎわい』づくりと経済効果の実現」。
これは人口減少による市税収入の減少など、将来を見据えた上での「にぎわい」づくりや経済効果の追求が求められるということ。子や孫の世代のために、将来に負担を残さない経済を確立し、南越谷駅や新越谷駅周辺だけではなく、中核市として埼玉県南東部を牽引する施設になることを目標とする。
最後の4つ目は「最新テクノロジーの導入、活用」で、コロナ禍によってテレワークの実践など、新しい生活様式が浸透したことを反映させたもの。
例えば鉄道、バス、タクシーなどのさまざまな輸送サービスを統合的に提供するMaaSを活用すれば、新しい越谷サンシティとその他の地域との往来も容易になるだろう。こうした時代の変化を捉え、最新テクノロジーの導入・活用によって、新たな越谷サンシティの整備が行われる。
現在のテナントや施設は2024年まで営業を続け、並行して再開発の詳細や事業者の選定などが決められていく。そして2025年から解体がスタートし、新生越谷サンシティが誕生するのは2029年を予定している。
健美家編集部