新旧の価値をつないで魅せるパークウェイ構想
「吉祥寺」と聞くと、首都圏版「住みたい街ランキング」上位の常連として浮かぶ方も多いだろう。この吉祥寺界隈から都心側に向かって広がる久我山周辺までのエリアにかけてここ数年、もとより定評のあった資産価値や賃貸需要の点で更なる価値向上につながる変化が生じている。
吉祥寺の代名詞とも言える井の頭公園が起点となり、一部開園し現在も造成中の高井戸公園までをつなぐ「井の頭・久我山 緑のパークウェイ構想」が提唱されている。
散歩やジョギングのコースとして玉川上水、神田川沿いをグリーンベルトに見立てることで、ファミリー層やシニア世帯のみならず、単身者層なども含めた幅広い属性に更なる魅力を提供する狙いだ。
このパークウェイ構想の一角をなす高井戸公園は、京王井の頭線久我山駅から富士見ヶ丘駅にかけての景色を一変させている。北地区として2020年6月に一部開園、2021年6月に残部分が開園した。
過去には企業等の所有地だった区画が都立公園として生まれ変わり、児童やランナー、ペット愛好家など、地域住民に幅広く利用され始めている。
一方、南地区は現在造成中で、こちらは地元住民から旧所有にちなんだ通称「エヌグラ(NHKグラウンド)」と呼ばれていた区画。しばらく遊休地の状態だったが、都立の複合スポーツ施設として生まれ変わる計画が進行中で、2023年2月に稼働予定。
また、同地域にある杉並区立の小中学校(富士見丘小学校、富士見丘中学校)で新校舎の建て替え計画が着工された。高井戸公園と隣接して新規施設が立ち並ぶ一大エリアとなる予定。
加えてこの小学校建て替えにより、頓挫していた都市計画の一つとして中央自動車道の高井戸ICに下り入口が建設される可能性も再浮上している。
現在の高井戸ICは上り方面の入口しかなく、下り方面入口の建設に関しては近隣住民の反対もあり長らく絵に描いた餅となっていた。が、中央自動車道沿いに位置する富士見丘小学校の建て替えに伴う移転が決まり児童への環境配慮というボトルネックが一つ解消されることから、下り方面入口の建設に向けて転機を迎えつつある。
新たな道路もエリアのブランド力向上に貢献している
現在進行形の地域開発に先立って、人や車の流れを変える新たな価値向上も数年前から始まっていた。
府中市から調布市をかすめ東西に走り三鷹市へと続く「東八道路」。その新宿方面への延伸部分が、区画整理や環境アセスメント、近隣住民への説明会などを経て、2019年6月に開通した。
国の史跡としても有名な玉川上水を保存する役割を兼ねた緑道も、中央分離帯代わりに整備された。車道部分は杉並区内で中央自動車道の高架下に繋がり甲州街道へと続く。
この東八道路延伸部分の開通により、久我山エリアでは新宿方面と府中方面双方へのアクセス向上という恩恵を直に受けることとなった。
また、この東八道路延伸部分の特徴の一つは、車道から完全分離した歩道と自転車道が併設されていることだ。その機能および瀟洒なデザインは、緑と相まったコントラストも手伝って自転車道整備の先進国であるオランダをはじめとしたヨーロッパ域内を思わせる充実ぶりだ。
一方、地域情報としては玉川上水でのホタル観賞を名物として駅前商店街も賑わう6月の久我山ホタル祭りが有名だが、加えて7月の湯の花祭りや、富士見ヶ丘駅前で8月に開催される七夕祭りなども存在感を発揮する。
新たな地域開発と昔ながらの催し物の存在で、新旧が織り交ざったハイブリッドな街として更なる発展を遂げつつある。「住まう」ことへの需要を高めていくことが期待されるこのエリアに注目したい。
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執筆:三刀流大家
■ 主な経歴
健康関連業界で都内に勤務する現役サラリーマン。ヨーロッパ駐在を経て帰国したのち、副業テニスインストラクターとしても活動。兼業大家でもある”三刀流”ライター。
趣味・ライフワークは、読書、映画、献血、テニス、日記、ワイン、高カカオチョコ、コーヒー、モーツァルト、CHAGE&ASKA、キン肉マン。
北海道大学卒業。薬剤師免許、バイヤー向け資格CPP-A級(Certified Procurement Professional)保有。