都市 OS やデジタルツインの活用で
竹芝地区の都市課題解決に取り組む
近年、複数の再開発により大きく姿を変えている港区・竹芝地区。東急不動産とソフトバンクの2社は、スマートシティの国家戦略特区でもあるこの竹芝エリアで、最先端のテクノロジーを街全体で活用するスマートシティのモデルケース構築に取り組み、その延長として「Smart City Takeshiba」を推進してきた。
竹芝地区で収集した人流データや訪問者の属性データ、道路状況、交通状況、水位などのデータを用い、エリアの回遊性向上や防災強化などに取り組む同プロジェクト。
両社が「Smart City Takeshiba」を開始したのは2019 年7月のこと。以降、2020 年度に国土交通省の「スマートシティ実装化支援事業」や「ProjectPLATEAU」、東京都の「スマート東京」に採択されるなど徐々に認知度を上げ、その歩みを進めてきた。
2023年6月、両社は各々の知見をかけ合わせることにより、街の状況をリアルタイムに把握・情報発信できる防災サービスの導入、デジタルツインによる災害発生時のシミュレーションを活用した防災力の強化など、竹芝地区のような都市部での課題を解決していくとし、
都市 OS やデジタルツインの活用による防災力の強化や防災業務の効率化などの実証を行ったと発表した。
リアルタイムデータを活用し
防災力強化や地区の回遊性アップを図る
柱となるのは、以下の4点だ。
■ リアルタイムデータを活用した防災サービスの導入による防災力の強化
災害発生時に発信される情報が街の管理者や施設管理者など対象ごとに最適化されていないという課題に対し、ソフトバンクは街の防災情報を一つに統合、街の状況をリアルタイムに把握して情報発信できる防災サービスを開発。
また、東急不動産とソフトバンクは、この防災サービスを基に自治体が情報収集を効率化できる「統合管理 UI」を構築。
豪雨発生時の対応の効率化を検証する実証実験を 2022 年 12 月に行い、災害時の情報の収集・発信など複数の作業において所要時間を約 50%以上削減できることを検証した。
この実証実験を通して機能の改善などを行った上で、竹芝地区の情報を統合管理・発信する防災サービスとして、竹芝エリアマネジメントが導入するという。
■デジタルツインを活用した災害発生時の帰宅困難者の受け入れ対応
災害発生時における竹芝地区の帰宅困難者は、災害発生から数時間後に約 4 万 7,000 人、災害発生から 3 日間は約 1 万 8,000 人から 3 万 2,000 人までに上ると想定されている(浜松町駅・竹芝駅周辺地区 都市再生安全確保計画に関する資料)。
一時滞在施設として災害時の帰宅困難者の受け入れを行う施設は増えてきているが、自治体と施設側の情報連携や施設の受け入れ対応、周知や誘導など、アナログな対応に頼ることが多いという課題も。
この解決策として、両社は、3D 都市データの制作技術を持つ株式会社キャドセンターや、クラウドを活用したアプリケーションやAI/IoTの開発に強みを持つ株式会社 Fusic と共に、竹芝地区のデジタルツインを構築。
自治体と施設間の情報連携や来訪者の一時滞在施設への避難、一時滞在施設における入館時の受け入れ対応などの効率化を検証した。
これにより、自治体や施設管理者が帰宅困難者に一時滞在施設の開設情報を「LINE」などを通して伝えることで、施設へのスムーズな誘導や受け入れが可能に。
検証では正確性や迅速性、省力性などについて高い評価が得られ、受け入れ対応においては約 70%以上の効率化につながるという結果となった。
■サイネージによる回遊性の向上
竹芝地区はオフィスやホテル、商業施設などが点在する一方で、来訪者の属性データの捕捉や人流動態の実態を把握できておらず、地区全体の集客や回遊性向上が難しいという課題があった。
そこで両社は竹芝エリアマネジメントと連携し、9 施設に合計 20 台の可動式サイネージを設置。
サイネージには、来訪者の人流データや属性データを取得する機能を搭載したカメラを設置し、来訪者の属性や行動パターンを把握することで各施設の販促に活用するとともに、相互送客を促し、来訪者の回遊を高める取り組みを進めている。
■シェアサイクルに関する情報発信・表示による回遊性の向上
竹芝地区は、3 方向を海または河川に囲まれており、隣接する浜松町地区、芝浦地区への交通手段が不足している状況。このため、エリア内の回遊性が低いという課題があった。
そこで、両社は回遊性の向上に向けた取り組みとして、竹芝地区でシェアサイクル「HELLO CYCLING」を提供する OpenStreet 株式会社などのシェアモビリティ事業者のデータと連携。
竹芝エリアマネジメントの「竹芝公式 LINE」や両社が手掛けるスマートビル「東京ポートシティ竹芝」のデジタルサイネージに満空情報を表示するなどの取り組みを進めている。
交通手段に関する情報を簡単に確認できることで、異なる交通手段の利用を促進するとともに、竹芝地区の回遊性の向上につながることを目指すという。
東急不動産とソフトバンクは、今後これらの取り組みで得られた成果を、東急不動産が推進する「広域渋谷圏」をはじめとした新たな都市開発案件や、東急不動産の関連施設へ積極的に導入。都市課題解決の取り組みをさらに拡大していくとしている。
異なる強みを持つ2社がタッグを組み取り組むスマートシティプロジェクト。竹芝地区を足掛かりとし、今後もさらに広がりを見せてくれそうだ。
健美家編集部(協力:
(さいとうかずみ))