コロナ禍以降、中古マンション価格は高騰傾向を維持してきた。2022年頃から伸び率は鈍化しているものの、いまだ高騰が継続している。一方、在庫件数は増加の一途を辿っている。
需給バランスに鑑みれば、価格は下落トレンドにあるのが市場原理というもの。それにもかかわらず価格が伸び続けている理由は、成約物件の傾向に変化が見られているからだ。
■記事のまとめ
中古マンション市場では在庫数が増え、成約件数が減少傾向にある中、価格だけが高騰を続けている理由は、成約マンションの中で取引額が大きいエリアかつ単価の高いタワーマンションが占める割合が上昇していることにあると考えられる。
コロナ禍では、主に一次取得層の住み替え需要が上がったことによりマンション、戸建ともに価格が上がっていったが、戸建はすでに下落トレンドにある。マンションについても、表層では堅調に推移しているように見えるが、その内容は着実に変化しているようだ。
■目次
1)在庫増を横目に高騰を続ける中古マンション価格
2)【2023年10月】成約価格が新規登録価格・在庫価格を大きく上回る
3)港区・江東区のタワーマンション成約比率が増加
3-1 23区内の中古マンション取引額は港区・江東区がトッ
3-2 港区のタワマーンション取引割合は過去約6年で最高4)中古マンション価格高騰はタワマンの成約比率が高まったため
◇在庫増を横目に高騰を続ける中古マンション価格
上記グラフは赤の折れ線グラフが前年同月比の成約価格、赤の棒グラフが成約平米単価の推移を表している。2022年と比べると高騰率は逓減しているものの、価格は上がり続けていることがわかる。
一方、紫の範囲で表されているとおり、在庫数は着実に増加しており、成約件数も2022年以降、減少傾向にある。
◇【2023年10月】成約価格が新規登録価格・在庫価格を大きく上回る
上記グラフは、一都三県の成約平米単価・新規登録平米単価・在庫単価の推移を表したもの。
長期的なスパンで見ると、昨今では徐々に3つの価格が近づき、2023年8月、10月は成約平米単価が他の価格を上回っていることがよくわかる。
中古マンションの価格予測をするときには「成約価格」が見られるものだ。売り出し価格と実際の成約価格には一定の乖離があることから「成約価格<在庫価格<新規登録価格」となるのが原則だと考えられる。
グラフを見てもわかるように、現在のように成約価格が頭一つ出ている、かつそれが継続的起こっているの状況は非常に稀有な事象だ。
また過去にもこのような状況があり、その際は価格が高騰に推移したが、今回は価格下落トレンドに変わる兆候と同調査では捉えている。
◇港区・江東区のタワーマンション成約比率が増加
成約価格が新規登録価格・在庫価格を上回っている事象の要因特定のため、マンションリサーチでは成約マンションのエリアや築年帯、物件の特徴などさまざまな調査をしたところ、成約エリアおよび物件の特徴に次のような傾向が見られた。
●23区内の中古マンション取引額は港区・江東区がトップ
2023年10月の成約マンションをエリア別で見ると、23区内のトップは港区、2位は江東区となった。両区に共通しているのは、タワーマンションが多いということ。そのため、両区の成約マンションのうちタワーマンションが占める割合も調査した。
●港区のタワマーンション取引割合は過去約6年で最高
両区の成約マンションのうちタワーマンションが占める割合は、2018年から20~30%程度で推移している。一方、2023年10月の比率は、港区が42.3%、江東区が35.1%。この比率は2018年1月以降、港区は1位、江東区は2位となっている。
■【まとめ】中古マンション価格高騰はタワマンの成約比率が高まったため
在庫数が増え、成約件数が減少傾向にある中、価格だけが高騰を続けている理由は、成約マンションの中で取引額が大きいエリアかつ単価の高いタワーマンションが占める割合が上昇していることにあると考えられる。
コロナ禍では、主に一次取得層の住み替え需要が上がったことによりマンション、戸建ともに価格が上がっていったが、戸建はすでに下落トレンドにある。マンションについても、表層では堅調に推移しているように見えるが、その内容は着実に変化しているようだ。
タワーマンションの比率が高まっているということは、実需以外や富裕層による取引が増加しているということも示唆している。物価や株価が上昇するなかで平均収入は一向に上がらない状況にも見られるように、中古マンション市場においても「格差」は広がっているものと推測される。
健美家編集部