暖かい季節になってきましたね。この時期は入退去が数多く、いわゆる賃貸繁忙期にあたりますが、皆さんの物件運営は順調でしょうか?
いわゆる「 コロナ鎖国 」が解禁され、留学生の受け入れが急速に進んでいます。現在は在留外国人の新型コロナによる入国人数規制が完全撤廃されて、初めての留学生入学シーズンです。
このチャンスを活かして空室対策を行う一つの手段が、物件周辺の日本語学校や専門学校、大学の学生課に出向いて、「 私の物件では外国人を積極的に受け入れている 」と紹介するやり方です。
でも、その前に絶対に知っておいていただきたいことがあります。それが今回お伝えする「 外国人入居者の家賃の支払い方 」についてです。
■ 外国人入居者と日本人入居者では根本的に違う家賃の支払い方
前回のコラムで、”外国人の家賃支払いリスクと保証人事情“についてお話しました。日本では当たり前のことでも、海外では一般的ではないことがあるんだな、と感じていただけたかと思います。
参照:専門の家賃保証会社が増加中。外国人入居者の家賃支払いリスクと保証人事情
実はこの文化・制度の違いは他にもいろいろとあるのです。その一つが家賃の支払い方です。実は、外国人入居者のいる賃貸現場では、「 現金手渡し 」で大家さんが店子さんから家賃をもらうという江戸時代のような現状がまかり通っています。
■ まるで江戸時代? 大家が店子から現金手渡しで家賃を回収
え、令和のこの世の中に、入居者さんから現金を手渡しでもらうの? と驚く方も多いかもしれません。しかし、これは事実です。実際に私の物件でも手集金で家賃を収めてもらっています。
私が5棟目の物件を購入したお話は、第7話で書かせていただきました。群馬県館林市の物件で、既存の入居者は全員外国人でした。引き渡し時には空室もあったのですが、2ヶ月程度で満室になりました。
参照:「 外国人賃貸 」を売りに担保評価の低い中古アパートの満額融資付に成功した話”
この物件では、既存の入居者さんの一部が家賃保証会社に加入しておらず、管理会社さんが毎月、手集金を行ってくれていました。この他、3話で紹介した2棟目の物件でも手集金を行っている部屋が複数ありました。
参照:外国人向けの賃貸物件オーナーを目指して大家歴1年で脱サラしました
なんでこんなことになっているのか疑問に思う方も多いでしょう。その大きな理由として、来日したての外国人たちは、日本で銀行口座を持っていないということがあげられます。
■ 銀行口座が開設困難な在留外国人
「 来日したばかりで忙しいから銀行口座を作っていない 」というわけではなく、「 そもそも口座開設のハードルが非常に高くなっている 」という現状があるようなんですね。
海外のマネー・ローンダリングやテロ資金供与が社会問題化したことが要因のようです。以前、来日したての外国人の方の銀行口座開設を比較的受け入れてきた「 ゆうちょ銀行 」でさえも、最近では口座開設の審査がとても厳しくなっているといいます。
参照:口座を開設される外国人のお客さまへ( 郵便局のサイト )
どのくらい大変かを例に出すと、大学教員のような高度な技能を持つ外国人の方々でも、銀行口座を開設するのに苦労する、というケースもあるほどです。
そんな状況ですから、仮に家賃保証会社の審査に通っても、「 引き落とし口座がない 」という事態に陥ります。それでは、「 口座開設までの間、まずは指定口座に振り込んでください 」ということになるのですが、それも容易ではありません。
なぜなら、発展途上国から来た方々は、母国で銀行口座を保有することもないため、銀行口座にお金を振り込むやり方以前に、仕組み等を知らないのです。そこを無理に推し進めれば、( 入居者に悪気はなくても )振り込みがない、ということが起きてしまいます。
■ 面倒な手集金、、、しかしメリットも絶大!
そこで、次善の策として、家賃を部屋まで手集金しにいったり、管理会社に持参してもらったりという形になるわけです。とても面倒に聞こえますよね。実際に手間ですし、未収金になるリスクも高いです。
しかし、このアナログな手法には、家賃保証会社の口座引落にはないいくつかのメリットがあるんです。
例えば、母国に仕送りをしている外国人の方は毎月カツカツの生活費で資金繰りをしている方々が多くいます。そういう人は、給料日が例えば10日で家賃保証会社の口座振替が月末だった場合、家賃引き落としができない(お金が入っていない)ことになりかねません。
そういった事情を考慮した上で、集金の日時を相談して決めていくことで、外国人入居者の個別の金銭事情に寄り添うことが出来ます。
また、シェアハウスなど、賃貸と比べて比較的短期で居住する方々は、家賃保証会社に加入する費用の負担がトータルの家賃と比べると大きくなってしまいます。それを避けるために、手集金を選択するオーナーさんや管理会社さんも多く見受けられます。
そしてこれが家賃手集金の最大のメリットなのですが、毎月家賃を支払ってもらうことで、入居者の外国人の方々とコミュニケーションをとることができ、そこで近況や困り事などをヒアリングすることが出来るのです。
部屋の状況はどうか、仕事の状況はどうかなどです。このようにして、毎月の手集金を利用することで、定期的にコミュニケーションを取っていると、外国人入居者も寄り添う姿勢に好感を見せることができます。
そうすると、第4話で書かせていただいたとおり、「 大家自身が外国人入居者と仲良くして、ほかの入居者を紹介してもらう関係を作ること 」もできるのです。
参照:平凡な中古物件でウェイティングリストができる。外国人入居希望者が殺到する賃貸物件の作り方
「 この日本人大家は話がわかるから、母国の同胞に教えてあげなくちゃ 」と自分から積極的に入居付けを行ってくれるようになるんです。
ちなみに、外国人専門の保証会社のGTNさんのオフィスの入口に行ってみると、受付電話がおいてあり、内線番号の張り紙の中に、
“家賃を支払に来た人は内線123”
という専用ダイヤルがありました(笑)。わざわざ池袋のGTNオフィスまで家賃を払いに来るとはなんと律儀なことでしょう。
「 家賃を支払いたいのに、支払い方がよくわからない 」という状態の外国人の方々が一定数いらっしゃるんだなということが、しみじみ実感できた張り紙でした。
■ 空室率改善に向けて行動する覚悟があるならおすすめ
日本人入居者相手の賃貸経営はある意味日本の常識の中で処理できることが多く、外国人入居者相手の賃貸経営に比べると楽です。いままで通りのやり方で十分経営がうまくいくオーナーさんは、こんな苦労をする必要はありません。
しかし物件の老朽化、人口減少、競合物件の乱立で空室率が高くなってきた物件を抱えている場合や、コストを抑えるために自ら汗をかく覚悟がある大家さんには、非常にコスパの良い打ち手となるのが、外国人入居者の受け入れです。
もちろん、管理会社さんに手集金の引き受けをお願いすることは難しい場合もあるでしょう。大家さんとしての業務に大きな負担がかかることもあるかもしれません。ですが、外国人入居者を受け入れると空室率の改善が可能です。
手集金にも対応できる柔軟な体制を取っておくと、その恩恵を継続的に受けることができ、賃貸経営が安定するだけではなく次の物件購入の自信にもつながる、ということは是非お伝えしたいと思います。