よく訊かれる質問のひとつに、「 床が少し傾いている物件を購入しても問題はないでしょうか? 」というものがあります。私はいつも、「 基本的に床が傾いた物件は購入しないほうが良いですよ 」と回答します。
というのも、他のリスクと違い、「 床の傾き 」は購入後のリフォームで抜本的な対策を行えない場合がほとんどだからです。もっと細かくいうと、抜本的な対策は技術的には可能ですが、コストがかかりすぎるために投資として成立しないのです。
では、「 脇田は床の傾いた物件は購入しないのか? 」というと、矛盾するようですが、そうでもありません。下記の「 条件 」を全て満たす場合、個人的には床の傾きがあっても取得してしまっても問題ないと考えています。
1、表面的な大工工事で「 その場しのぎ 」が可能な場合
床の傾きには必ず原因があります。例えば、地震の影響で地盤が傾いてしまった場合とか、人工的に造成した土地が時間の経過によってずれてしまった場合、地下水の影響等で地盤が不同沈下した場合などです。
また、土地に問題はないけれど、単純に新築時の床の施工精度が低くて傾いているというケースも可能性としてはあるでしょう。
本来は、床の傾きが発生している根本的な原因を調査した上で、その原因を取り除いていくべきなのですが、例えば、土地の傾きを建物を維持した状態で補正していくことはコスト面から現実的ではありません。
そのような場合に、次善策として考えられるのは、根本原因には手を付けずに、フローリング等の床材の下にある根太の厚みを場所ごとに調整する等の方法で、表面的に傾きを解消してしまうというやり方です。
大工さんやリフォーム会社さんへ物件購入前の調査時に、「 この床の傾きを表面的に解消するための見積りを下さい 」とお願いすれば、大体のコストを把握できると思います。
この場合、手を加えるのは、表面的な床材や根太のみですので、早ければ数日で調整可能ですし、コストも普通に床材をやりかえるのと大差ないケースがほとんどだと思います。
2、今すぐに問題が拡大する見込みが低い場合
床が傾いた物件をあえて購入しようという場合、その傾きが、現在進行形のものか? そうでないか?ということが重要なポイントになってきます。
事前に大工さんやリフォーム会社さん、インスペクターに依頼して調査を行った上で、「 今すぐに問題が拡大することはないでしょう 」ということであれば、ひとまず安心はできます。
しかし、例えば「 この床の傾きは、1カ月前の地震のせいでしょう。余震が発生する可能性もありますし、半年後に今の状態が保たれているかは不明です 」という場合には、当然、手を出さないほうが賢明です。
このあたりの判断のさじ加減は、それぞれの投資家が、納得できるラインを自分で見つけるしかないというのが正直なところです。
3、物件価格が1世帯あたり30万円未満の場合
私の経験では、少なくとも長崎等の地方部においては、1世帯あたり30万円以上の予算があれば、わざわざ床が傾いたハイリスク物件を取得しなくても、もっと低リスクのボロ物件を購入することができます。
ですから、この水準以上の「 超 」低価格物件の場合のみ、検討の俎上に載せればいいのではないか?というのが私の考えです。
1世帯あたり30万円という価格に精緻な根拠はありませんが、戸建の場合、1棟30万円。アパートの場合、4世帯で120万円、8世帯で240万円という計算になります。
つまり、誰がどう考えても「 超 」が付くほどのお買い得物件でもない限り、手を出さないほうが良いというのが私の意見です。
4、木造物件の場合
そもそも、建物の構造が木造以外の場合、物件価格が1世帯あたり30万円未満であること自体がほとんどないと思いますが、私なら、建物の構造が木造以外の場合、床が傾いた物件は購入しないと思います。
というのも、床が傾いているということ自体、建物の価値が大きく損なわれている状態です。ということは当然、最悪のケースを想定し、近い将来建物を解体することになっても問題ないよう準備しておく必要があるということです。
木造であれば、建物を解体し更地に戻すのも比較的安価です。しかし、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の場合、そうはいきません。建物の構造が木造かそれ以外か? が、ぎりぎりリスクをコントロールできるか? できないか? の分水嶺なのです。
~ 次回に続く ~