テナント系の大家さんは大きな損失を受けていますが、レジデンス系の大家さんはそれほど影響を受けていないというのが、私のクライアントの大家さんの現状なのです。
もちろん、一部家賃を減額したり、退去が増えたりはしていますが、昨年比の売上( 家賃収入 )と比べると、5〜10%の減少程度です。多い人でも20%いっているかどうかでした。
しかし、入居者さんのお勤め先の企業努力や雇用調整助成金で給与が維持されているからかもしれません。生活レベルにまで景気が悪化すれば、当然家賃にも影響してくるでしょう。
また、第三波も心配です。今年の確定申告は、来年の状況が読みにくい中で、どう着地させるかを考えなければなりません。今日は、今年中に大家さんがやるべきことをお伝えします。
1.コロナ支援策を申請しているか?
コロナによって売上が下がった場合、要件を満たせば、支援策が受けられます。期限が迫っているため、該当する方は、早目に申請をしましょう。詳しくはコラム63話をご覧ください。
参照:大家さんが使える返済義務のない支援策
1)国民健康保険等の減免
事業収入や不動産収入が前年比30%以上見込まれれば、所得に応じて、国民健康保険料等が20%〜100%減免を受けられます。( 前年の合計所得金額が1,000万円以下などの所得要件あり )
対象者:個人の大家さん
申請期限:令和3年2月1日( 予定 )
2)令和3年度の固定資産税の減免
令和2年2月から10月までの任意の3カ月間の売上高を前年同期間と比較して、減少の割合によって、免除を受けられます。
◯30%以上50%未満の減少⇒2分の1の免除
◯50%以上減少⇒全額の免除
対象者:個人・法人の大家さんが対象
申請期限:令和3年1月31日
3)持続化給付金
ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、法人は200万円、個人事業者は100万円を上限に受け取れます。ただし、個人の場合は、事業所得がある場合のみ( 不動産所得者は対象外 )です。
対象者:法人の大家さん
申請期限:令和3年1月15日
2.青色申告承認申請の提出
コロナによって、届出などの期限の延長が認められています。令和2年度の確定申告を青色申告にしたい場合は、令和2年3月15日までに青色申告承認申請を税務署に提出しなければなりませんでした。( 1月16日以後に新たに賃貸を開始した場合には、業務開始から2ヶ月以内の提出 )
もし期限に間に合っていなかった場合には、コロナによる影響のために提出が遅れた旨を記載すれば、受け付けてくれる可能性があります。実際にコロナにかかっていなくても、コロナによって外出を自粛していたことでも認められます。
青色申告にしていないと、青色申告特別控除、少額減価償却資産の特例( 30万円未満の設備の全額償却 )、損失の3年間繰越控除などが適用できませんので気をつけてください。
3.電子申告の準備
青色申告で申請をすることで10万円の特別控除があります。そして、青色申告者が、事業的規模かつ複式簿記などによる帳簿をつけた場合には、10万円に代えて65万円の控除が受けられました。この控除が令和2年から55万円に引き下げられています。
ただし、次のいずれかの要件を満たす場合には、今まで通り65万円の控除が受けられることになります。
@帳簿を法律で認められた電子保存をしている場合
A電子申告を行う場合
電子保存は、要件が細かく届出などの手続きが必要です。電子申告をする方が簡単です。10万円分の控除が少なくならないように、電子申告をする準備をしておきましょう。
4.消費税の届出
2020年10月1日から居住用賃貸建物について、仕入れ税額控除ができなくなりました( 2020年3月31日までに請負契約等をしていた場合を除く )。つまり、消費税還付することが原則できなくなったということです。
消費税の還付をするためには、消費税の課税事業者となり、かつ、原則課税になる必要がありました。還付ができなければ、原則課税ではなく、簡易課税にした方が有利であることが多いです。
簡易課税制度では、「 みなし仕入率 」というパーセンテージを使い、売上にそのパーセンテージをかけたものを仕入れにかかる消費税とみなされるため、払う消費税が少なくなる可能性があります。
《 不動産賃貸業に関わる「 みなし仕入率 」 》
不動産賃貸に係る「 みなし仕入率 」は40%
不動産の売却に係る「 みなし仕入率 」は60%
太陽光発電収入に係る「 みなし仕入率 」は70%
不動産賃貸に係る「 みなし仕入率 」は40%
不動産の売却に係る「 みなし仕入率 」は60%
太陽光発電収入に係る「 みなし仕入率 」は70%
個人の場合、課税事業者かどうかの判定は、原則、前々年( 基準期間 )の課税売上高が1,000万円超になります。
事務所や店舗の賃料や駐車場の賃料があれば、自分が課税事業者になっているかどうかの判定は比較的わかるかと思いますが、気づきにくいものとしては、2年前に1,000万円を超える建物( 事業用 )を売却している場合です。
2021年に課税事業者になってしまい、消費税を納める金額を少なくしたい場合12月31日までに、「 消費税簡易課税制度選択届出書 」の提出が必要です。来年の賃貸状況がどうなるか未知数ですが、年内にやらなければならない対策はしっかりやっておきましょう。
【 お知らせ 】
大家さん用の青色申告ガイドの改訂版が11月6日に発売されました。自分で確定申告ができる、賃貸経営に特化した確定申告本です。今年で8年目になりました。本屋さんで見かけたらお手にとってみてください。
『 大家さんのための超簡単!青色申告 』【2020-2021度版 】
