「人生100年時代」という言葉を、誰しも一度は見聞きしたことがあるだろう。ネットやテレビなどのメディアはもちろん、国や自治体の政策等においても今や当たり前のように用いられるキーワードだ。
ビジネス学者のリンダ・グラットン氏らが2016年に出版した書籍「LIFE SHIFT（ライフシフト）」の中で提唱されたこのキーワードは、書籍のベストセラー化、シリーズ化に伴って大きなムーブメントへと発展した。
これからの時代は、100年生きることが珍しいことでなくなるばかりか、当たり前のようになる。そんな長寿社会において、我々はいったいどのように生きていくべきか。
そんな極めて重要なテーマを提示してくれているのだが、とはいえ400ページを越える骨太な書籍だ。存在は知ってるけど読んだことはない、という方も多いのでは。
そんな方にもおすすめなのが、この度エッセンシャル版（要約版）として発売された『16歳からのライフシフト（東洋経済新報社）』だ。
原著の大切なエッセンスを凝縮し、高校生でも理解しやすいように、より多くの方に届くように再構成されている。もちろん不動産投資本ではないが、これから不動産投資で成功を目指したい方にも「投資脳」を鍛えるうえで役に立つはずだ。
従来型の人生設計では「人生100年時代」を生き抜けない？
求められるのは自分らしい人生設計、人と違って当たり前
本書では、人生100年時代においては「20歳前後まで教育を受け、60歳ないし65歳までバリバリ働き、その後は引退して余生を楽しむ」といった「教育→仕事→引退」の従来型3ステージ制の人生設計は成り立たないと問題提起している。
変化の一層激しいこれからの時代、長寿社会において人生はマルチステージ化し（たとえば「教育→仕事→子育て→再教育→仕事→再教育→仕事→引退」といった様な）、一斉行進的な画一的なものから十人十色、人それぞれに異なって当たり前のものになっていくというのだ。
大前提として、人生100年時代では多くの人がこれまでより10年、20年も長く働かなければならない。公的年金はもはや当てにならず、自分で働いたり投資して稼がない限り、十分な老後資金を確保することが難しい。
こう考えると、どんよりと気が滅入ってくる感じがするが、それは未来を過去の延長、つまり3ステージの人生のものさしでで考えるからである。
マルチステージの人生においては、がむしゃらに働くステージがあれば、自分を深く知るために旅に出るステージもある。男女問わず仕事より子育てに軸足を置くステージもあるだろう。大学などに入り直して一から学び直すステージだってある。
可能性は拓かれ、まさに縦横無尽だ。発想を転換すれば、長い期間働くということも魅力的に思えてくる。
人生100年時代、お金を稼ぐだけでは不十分
幸せに長生きするには「有形資産」と「無形資産」の両輪が必要
「現在の大人たちの議論は、お金の問題に偏りすぎている」と著者は言う。確かに昨今「老後資金に○千万円必要」とか「将来のために投資を」ということがよく言われるが、人生100年時代への備えは、いかにお金を稼ぐかということだけで足りるものではない。
支えになってくれる家族や友人、試練に立ち向かう強い心と体といったお金（有形の資産）以外の要素、いわば無形の資産が欠けてしまえば、長い人生で金銭面の成功を得ることさえ難しい。
無形資産がなければ有形資産が築けないし、有形資産がなければ無形資産の維持もまた難しい。幸せに長く生きるためにはどちらの資産も不可欠で、バランスが取れていなくてはならないということだ。
我々はいま大きな変化の時代に生きており、その影響から逃れることはできない。それは10代、20代の人に限った話ではなく、50代でも、60代でも同じだ。
あなたがいま何歳だとしても、残された人生は過去のどの世代よりも長い。本書で価値観をアップデートしつつ、100年生きるという前提のもと「自分らしい人生」について自分自身に問いかけてみてはいかがだろうか。
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