今回は実際に融資を受ける前の段階、物件未保有のサラリーマンが銀行との関係性を構築するのに有効な作戦を考察したいと思う(つまり、より初心者向けの初手の内容となる)。
銀行との関係性は、基本的には融資によって構築される。しかし、新規申込の場面において、銀行が申込者を評価する際は様々な角度から評価することが多い。
今回は、そんな定性評価に向けた下準備について説明したい。

1.銀行は「口座の動き」だけは追える
ドラマ半沢直樹でもこのようなシーンがあったが、銀行が事実確認などを行う際、まずは口座の動きをチェックすることが多い。
口座の動きとは通帳の履歴の事で、振込、引き落とし、ATMでの入出金、移動金額、振り込み元の名義、など様々な情報を得ることができる。
私も入行して最初の頃は「通帳の動きなど大した情報にならない」と考えていた時期もあったが、意外や意外、通帳の履歴を深く読み込んでいくと、その人物のお金周りに関わる様々なことが推察できるのである(不動産プレイヤーが謄本を見て様々なことを推察するのと同じ原理である)。
これは裏を返せば「その銀行の通帳を持ち、実態に基づいた入出金を行う事により、銀行に対して一定の情報共有を行っている」と言えるという事である。
事業者であれば、取引先との商流、給与支払い・従業員数、売上と支払いのサイクル、などの情報を通帳から読み取ることができるのでき、サラリーマンであれば生活に関わる入金と支払を集約することにより、銀行に対して少なからず自己開示ができるという事になる。
銀行は様々な角度から人物像を判断するため、情報は多ければ多いほど、人物像を定めやすくなり、ひいては定性評価を高める事にも繋がるのである。
2.家計簿をひとつの通帳で完成させる
サラリーマンが事業者のように通帳を用いて自己開示を行うには、何をするべきか。
それは「給与振込、居住費、支払、貯金」の流れを一つの通帳で完結させ、銀行に家計簿を示すことが有効だと言える。
銀行は、融資の安全性の観点からは金遣いが荒い人間を好まず、質素倹約で貯金ができる人間を好む。
お金を貸す側の気持ちになればわかることだが、
・年収1,000万円で貯金を100万円作った人
・年収500万円で貯金を1,000万円作った人
の2名の人間がいたとして「定性評価」として好まれるのは後者であることが多い。
自分が後者の人間であることを示すためには、言葉で説明するのではなく「通帳の流れで証明する」のが効果的であると言える。
所謂「言葉でなく行動で示す」という事である。
3.銀行開拓の下準備として
定性評価を高めるための具体的な行動としては、
「近い将来融資取引を狙いたい銀行」において、
「生活の資金の流れを通帳に記す」ことにより、
定性評価の準備を行うことが有効であると考えられる。
そのためには給与振込の設定、住宅ローンの利用などは特に効果的で、可能な限り取引を狙う銀行に集約しておくと良い。
また、地方の小さな銀行であれば預金の重要性が増すので、積立定期などで貯金を分けておくのも心象が良いだろう。
ただし、注意すべき点は、狙うべき銀行が「不動産への融資を行う銀行」であることをある程度予測する必要がある点だ。どれほど通帳の流れを準備しても、不動産融資を出さない銀行は出さないので、せっかくの努力が無駄に終わってしまう可能性が高い。
4.まとめ
銀行が通帳で判断する以上、通帳を整える事により、ある程度の定性評価アップを見込める。
あくまで定性評価判断の一要素ではあるが、初期の審査突破に向けて定性評価が無視できない要因である以上、可能な限り準備しておくことをお勧めする。
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執筆:
(はんざわおおや)