イギリスの情報誌『MONOCLE』が2021年に発表した、住みやすい小さな街ランキング「Bright lights,small city」で世界3位に選ばれた福岡県糸島市。
福岡県の最西部に位置し、海と山に囲まれた豊かな自然と、福岡市中心部まで車で約30分、福岡市営地下鉄空港線と直通しているJR筑肥線で天神、博多駅、福岡空港まで乗換なしというアクセスの良さが国内外から注目され、移住者が増えている。2022年の転入超過数は896人。2018年以降、人口を増やし続けている。
糸島の歴史は、弥生時代にまで遡れる。邪馬台国の記録で有名な中国の歴史書「魏志倭人伝」に伊都国(いとこく)の記述があり、現在の糸島市と福岡市西区の一部に存在していたとされている。
そんな糸島が注目され始めたのは、2005年に九州最高峰の国立大学・九州大学が福岡市内に点在していた複数のキャンパスを、糸島市と福岡市西区にまたがる「伊都キャンパス」へ移転・集約し始めた2005年ごろからだ(2018年には移転が完了)。伊都キャンパスの移転に伴い、糸島市内の学生・教員人口が増加した。
九大移転を機に、糸島市も、「九州大学があるまち糸島市」を市内外に積極的にPR。2015年度からは、九州大学の学生が市内各小学校へ出向き、日頃大学で行っている研究や勉強内容を小学5年生に分かりやすく教え、楽しく児童と交流する「九大寺子屋」を市の授業として行っている。
また市内の中学生向けには、基礎学力 の向上と将来への夢や希望を九大生と共に考える機会として、「伊都塾」を開催。
中学生向けに伊都キャンパスを案内するツアーを開催するなど、九大のリソースを活用して市内の教育環境を充実させている。こうした取り組みが受けて、糸島市は子育て世帯が全国から移住してくる自治体へと変貌を遂げた。
九大移転と同じ時期から、海中に建つ白い鳥居と夫婦岩で有名な夕日の絶景スポット桜井二見ヶ浦や、海岸沿いにある「糸島ロンドンバスカフェ」、「ピンクのブランコ」などのフォトジェニックなスポットがSNSで話題になるように。
2012年からは2年に一度、糸島国際芸術祭が開かれるようになり、糸島はオシャレでアートが盛んな町という認識が若者を中心に定着し、国内外から芸術家なども移住してくるようになった。
自治体の取り組みとSNSから自然発生的に広がったマーケティング活動が奏功して、冒頭のイギリス誌をはじめとする国内外の「住みたい街」ランキングで上位の常連となった糸島市。市内の基準地価もこの10 年で大幅に上昇している。
住宅地として人気のある糸島市 波多江駅北3丁目の2021年の基準地価は63,500(円/m2)。2010年の1.3倍以上だ。糸島高校前駅近くの住宅地も1.35倍、南風台3丁目の住宅地は1.45倍となった。
不動産価格が上がり続けているとはいっても、同じJR筑肥線・地下鉄空港線沿線の福岡市中央区や西区の半値以下で土地を購入できるため、不動産投資の観点から見ても糸島市は非常に魅力的だ。
糸島市は、九州大学や民間企業などと連携して、研究者やその家族、学生、地域住民等が交流する研究交流拠点である「糸島市サイエンス・ヴィレッジ」の実現を目指している。
現在約1500人とされる市内在住の九大学生に卒業後も定住してもらうため、企業や研究所、大学発ベンチャー企業などを誘致したい考えだ。
学研都市としてもさらなる成長を目指す糸島に注目したい。
健美家編集部(協力:
(おおさきりょうこ))