東京・秋葉原駅と茨城・つくば駅を結ぶ「つくばエクスプレス(TX)」について、第2次茨城県総合計画に位置付ける県内延伸方面案の中で、土浦・茨城空港・水戸・筑波山の4案が示されていたが、「TX県内延伸に関する第三者委員会」(委員長・岡本直久筑波大教授)から3月末に「TX県内延伸に関する提言書」が示され、延伸先を費用対効果の観点から土浦方面とした。
茨城県は、この提言書の内容を踏まえて5月1日から30日までパブリックコメント(意見募集)を実施する。延伸計画はパブリックコメントを経て6月末をめどに最終決定される予定だ。
土浦はJR常磐線で電車も特急が停車することや、水戸や茨城空港、筑波山への延伸に比べて距離も短いことで工事期間も短く費用対効果から実現可能性が高いと判断された。
地価上昇の契機となるか
新たな沿線の開発は、地元の活性化につながる。実際、TXが開業する以前のつくば市と現在のつくば市、その周辺の市町村を比べると目を見張るものがある。陸の孤島と言われたエリアにデベロッパーなどが進出して宅地開発が進んで移り住む人が増加している。
県庁所在地の水戸の人口が約27万人、つくば市はTX開業時2005年から3割ほど増加して約25万人となっている。新駅の相乗効果は大きい。
かつて土浦は県内で有数のにぎわいを見せていたが、バブル経済が崩壊し、長引くデフレ経済下が続き、人口減少などで街は衰退の一途をたどってきただけに今回の土浦方面へのTX沿線に対する地元の期待は膨らむ。
土浦市の安藤真理子市長は、今回の提言を受けて「私たちの熱い思いが実を結んだものであり、本市にとって大変喜ばしいことであると受け止めております。TXの土浦延伸に向けて、茨城県を始め、各関係機関との十分な協力・連携を図ってまいりたい」とのコメントをホームページ上で発信している。
土浦市の人口は約14万人。茨城県は2050年ごろの構想とし、実現まで少し先となるが、地元からは、早くも延伸に伴い人口が増えるのか、観光客の増加がどの程度まで見込めるのか、といった側面からの経済波及効果に期待する声が聞かれる。
国土交通省が今年3月22日に公表した「令和5年地価公示」を見ると、土浦市の住宅地の平均価格は1u当たり2万9800円、上位の価格で同5万1300円、下位の価格で同8640円となっている。
変動率は前年比で横ばいであるが、来年発表される地価公示にはTX延伸がどの程度まで反映されるのか。路線の延伸や新駅の誕生といったインフラ整備が行われれば、地価は上昇へと向かう。こうした動きに対して不動産事業者は素早い。これから人気の出そうな立地に注目して地上げの準備を進めているかもしれない。
一次は県内有数の繁栄を誇った
ただ、TX沿線の柏の葉キャンパスや流山おおたかの森、研究学園のようになれるかは未知数である。
柏の葉や流山などのエリアは、TX開業前は何もない、誰も見向きもしていない、といった場所だったが、大手の不動産開発事業者が街づくりを推進し、企業や研究機関などを誘致できたことで発展してきた。観光資源が乏しいエリアを発展させた前例である。
土浦も国内外の観光客を引きつける魅力は乏しいものの、一時は県内有数の繁栄を誇った街だったことを考えればポテンシャルは小さくない。その土浦復権に向けては、前述の誘致力を持っているかが問われてきそうだ。
まずは、パブリックコメント実施後の延伸計画最終決定の発表が待たれるところである。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))