海老名市初の市街地再開発事業
駅周辺の都市機能の更新・商業を活性化
海老名市は神奈川県中部に位置するまち。南北に長く、東は大和市・綾瀬市、西は相模川を隔てて厚木市、南は藤沢市・高座郡寒川町に接している。
鉄道はJR・小田急線・相鉄線の3路線が乗入れ、市内には9つの駅がある。東名高速・圏央道に乗り入れる海老名インターチェンジもあり、車による移動もしやすい。
交通利便性は高く、通勤・通学のアクセスが良いことから、東京・横浜のベッドタウンとして栄えてきた。人口は増えていて、2023年1月1日時点で前年同期比2015人増の13万9538人となり、8月には14万人を超えた。
鉄道の玄関口は海老名駅だが、その南西に位置しJRと小田急線、相鉄線が乗入れているのが厚木駅だ。海老名市にあるのに「厚木」を名乗っているのは、開業当時、厚木駅の所在地である海老名市河原口よりも相模川の対岸で栄えていた厚木を冠するほうが乗客が増えると考えたからだという。
ターミナル駅の海老名駅、厚木市の中心駅である本厚木駅に比べると規模は小さい厚木駅だが、近年は駅南地区で「厚木駅南地区第一種市街地再開発事業」が進められていて、6月30日には工事が完了。再開発事業エリアを「ファーストリンクテラス」と名付け、7月6日には駅前広場でまちびらきセレモニーが行われた。
厚木駅南地区第一種市街地再開発事業は海老名市初の市街地再開発事業だ。事業の対象は厚木駅前の約1haの区域で、住宅中心に土地が利用されていた場所。一方、地区内には老朽建物や空閑地が存在し、住民の減少や高齢化に伴い小売店の閉店や商店の老朽化も進行。道路の幅員も狭く駅前広場も未整備の状態だったという。
こうした課題を受け、厚木駅南地区市街地再開発準備組合の発足を経て、2019年には同組合の設立が認可。2度にわたる事業計画変更認可を受け、2021年からは施設建築物の新築工事がスタートし、今年6月末には住居への入居、まちびらきと同時に公共施設の供用も始まった。
整備されたのは、14階建てと11階建ての2棟からなる総戸数201戸の住宅棟「ファーストリンクレジデンス」をはじめ、商業棟や駐車場。公共施設としてロータリーなどを備えた「駅前広場」と、区域南側には憩いのスペースとなる「いちかいどう広場」も新たに作られた。
組合の発足から5年の歳月をかけて誕生した、ファーストリンクテラス。居住世帯は24戸から201戸に増加した。広い歩行空間に加え、一般車とタクシーの乗降場などを配備した駅前広場ができたことで、送迎の安全性と利便性の向上も期待できる。駅前の大規模な複合施設はにぎわいを創出し、近隣の発展に貢献。人口増が続く海老名市のさらなる発展を後押しする存在になるかもしれない。
実際のところ、海老名市の住宅需要は右肩上がりを続けている。それを示すかのように、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で海老名市の標準的な中古マンション価格は21.53%、賃貸マンションの賃料は6.27%上昇している。
同市では海老名駅近く、厚木寄りの「中新田丸田地区」でも土地区画整理事業に向けた準備組合が設立され、今後は区画整理により分譲マンションや商業施設、戸建て住宅など大規模なまちづくりが始まる見通し。
海老名駅西口地区からJR相模線・相鉄厚木線の線路下を通り、文化会館・中央図書館方面に抜ける「(仮称)上郷川原口線」の供用も2024年に始まる予定だ。まちづくりは盛んに行われ、さらなる変化を遂げていくようだ。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))