習志野市の中心駅で始動した大規模再開発事業
千葉県北西部に位置し、東京から約30㎞県内にある習志野市。東は千葉市、西は船橋市、北は八千代市に接し、南は東京湾に面する。
古くは騎兵連隊・鉄道連隊が置かれるなど軍都として栄えたが、戦後に軍用地跡は病院や学校に建て替えられ、現在は文教住宅都市として発展を遂げている。
臨海部は埋め立てられ袖ケ浦団地、秋津団地などの大型団地が建設されるなど、東京のベッドタウンとしても側面も。1955年には約3.2万だった人口は1995年に15万人を超え、直近では約17.4万人と増加の一途をたどってきた。今後も2025年までは増えるとされるが、その後は緩やかに減少に向かうとされている。
JR津田沼駅は市の中心駅であり、乗り入れるのは総武本線。総武快速線と緩行線を走行する総武緩行線の2系統が停車。1日の平均乗客巣は約8.5万人で、県内では西船橋駅、船橋駅、柏駅、千葉駅に次いで5番目に多い。
1995年度までは13万人を超えていたが、東葉高速鉄道東葉高速線が開業した1996年度より、大きく減少している。
駅は北口と南口にわかれ、北口にはミーナ津田沼、イオンモール津田沼、イトーヨーカドー(2024年9月をめどに閉店)などが立地。南口にはモリシア津田沼、Laharu津田沼、奏の杜フォルテなど大型店舗が多数。
各主要施設はペデストリアンデッキで結ばれ、南口は津田沼公園、モリシア津田沼を経由し、津田沼ザ・タワーへと続く大規模な駅前デッキ網が張り巡らされている。駅周辺には大型店の出店が相次ぎ、関東有数の繁華街として成長した。
そんな津田沼駅だが、南口では3.4haに及ぶ大規模な再開発事業が進められており、昨年12月には高度利用地区などの都市計画手続きがスタート。
県との事前協議や案縦覧、都市計画審議会への付議などを経て今年10月の都市計画決定を目指している。施行予定者は野村不動産だ。
住宅棟や2棟の複合施設、駅前広場などを整備する巨大プロジェクト
事業の施行区域は津田沼駅南口駅前広場や津田沼緑地、商業・業務複合施設であるモリシア津田沼があるエリア。
南東側に50階程度で約1000戸が入る住宅棟、南西側に地上9階・地下2階建ての複合施設を2棟建設し、地下2階に駐車場、地下1階から地上4階にモリシア津田沼と同規模程度の商業機能、5階北側には約4000㎡の屋上広場、南側の5階から9階に習志野文化ホール、南西側の5階から8階にはオフィスが入る予定だ。
駅に近い北側には駅前広場とその上に約2500㎡の駅前広場デッキも整備するという。
開発整備の方針としては「立体的な都市基盤整備による交通結節機能の強化と駅前の顔づくり」「駅へのアクセス性やまちなかの回遊性を高める歩行者ネットワークの整備」「駅前の魅力を高めるオープンスペースの整備、周辺地域と連携した緑のネットワークの形成」「文化とにぎわいの拠点形成と定住人口増加に資する都市機能の導入」の4つを掲げる。
実現すると駅南口の景観は大きく変わるとともに、方針に掲げる定住人口増加が実現する可能性があり、現状の人口推計を覆すかもしれない。
駅前の広大な区画が更新されることで、エリアの付加価値向上への貢献も期待される。
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で津田沼駅周辺における賃貸マンションの賃料は6.65%、中古マンション価格は10.35%上昇した。
前者は千葉県の変動と同水準だが、後者はやや低めなだけに、今回の再開発で風向きが変わるかもしれない。
いずれにしても、同エリアは東京から近くベッドタウンとしてはもちろん、駅周辺にも大型商業施設が多いことから、住まいのニーズは底堅いと考えられる。ビッグプロジェクトの影響は広範囲に及び、市全体の活性化に寄与するだろう。
今後だが、2024年10月に都市計画が決定すると、25年4月の事業認可、11月の権利変換計画認可を経て既存施設の解体が行われ、27年内に新築工事に着手、31年内の完成を予定している。これにより、千葉県内でまたひとつ魅力的なまちが誕生する。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))