自治体の文京区は周辺地区と合わせて整備指針を策定
東京における都心の1つ、飯田橋駅付近で新たな再開発計画が進行している。
再開発の対象になっているのは、飯田橋駅を出てすぐの場所にある、飯田橋交差点の北東側だ。
※引用:文京区
上記地図のうち、南地区の左下に当たる部分が飯田橋交差点となっている。
再開発計画が進んでいるのは「南地区」と書かれた紫の網掛けがかかっているエリアだ。
当該エリアの自治体である文京区は「後楽二丁目地区まちづくり整備指針」を策定しており、上記の地図はまちづくり整備指針の対象範囲を示している。
街づくり整備指針は当初2005年に策定されていたが、西地区(赤い網掛けの一部)における再開発の完了や社会情勢の変化などを背景として、2021年に内容が更新された。
西地区に建っているのは住友不動産が手掛けたファーストタワーというビルだ。
更新された「まちづくり整備指針」の中では、後楽二丁目地区の周辺エリアが持つ主な特徴として、主に以下のものが挙げられている。
- 当該地区から南にある九段下のエリアにかけて業務機能(オフィスなど)が集積している
- 当該地区の北側には木造の住宅が多い
- 当該地区の東側には運動場や東京ドームシティなど賑わい創出に貢献する施設が多い
- 当該地区の西側には神楽坂の商店街などがあり、人が集まる環境が整っている
※引用:文京区
つまり、後楽二丁目地区の東西南北にはそれぞれ特徴的なエリアが形成されており、それぞれに人が集まる環境が整っているということだ。
一方で、後楽二丁目地区そのものにおいて、解決すべき課題点として主に以下の内容が挙げられている。
- 空き地や空き家などの低未利用地が増えており、まちとしての機能更新が必要
- 飯田橋交差点の歩道橋がバリアフリーに対応できていないほか、ラッシュアワーや雨天時には歩行者で飽和している
- 緊急時の避難場所や憩いの場として利用できる、まとまった広場空間が必要
- 築古の木造建物が多く、火災リスクが高まっている。また、狭い道路が多いために緊急車両の進入が困難
なお、文京区が対象地区の地権者向けに実施したアンケートでは、防災と土地利用に関する意見が特に多く寄せられた。
周辺の状況や課題点を踏まえて、文京区が策定した後楽二丁目地区の整備方針は主に以下の通りだ。
- オフィス、商業施設、住宅を主とした複合施設を整備する
- 地区内外をスムーズに移動できる道路を整備する
- まとまった緑地空間を整備して憩いの場を作る
- 建物の不燃化と耐震化を促進して、災害対応力を強化する
南地区では後楽二丁目地区全体の顔となる新施設を整備
今回、再開発の対象となっている南地区では特に、文京区南西部の玄関口として、地区の顔となるようなにぎわい施設を整備することとされている。
また、後楽二丁目地区の中では最も飯田橋駅に近く、外堀通りに面している交通利便性の高さから、業務機能を集積させる方針だ。
※引用:文京区
環境影響評価調査計画書の中で示されている敷地配置計画を見ると、南側には駅前広場、北東側にも別途広場を設けることが分かる。
また、建物は東西で高層ゾーンと低層ゾーンとに分かれており、高層ゾーンは35階建てでオフィス・住宅・店舗等が入るようだ。低層ゾーンには店舗と住宅が入る。
なお、高層ゾーンの建物は大半のフロアがオフィスとなり、下の方のフロアに店舗等が入る予定。
スケジュールとしては、2026年度から既存建物の解体を始め、その後約5年をかけて再開発建物の建設工事を行う予定。2030年度には建物が完成しそうだ。
完成すれば、飯田橋駅前のイメージがまた1つ変わるだろう。今後の経過に要注目だ。
取材・文:
(はたそうへい)