東京都23区最西端の駅の高架下を3期にわけて開発
西荻窪駅は、東京都杉並区にあるJR東日本中央本線の駅。杉並区およびJRにおける東京23区最西端の駅であり、東京都区内のJR駅としては中心駅となる東京駅からもっとも遠い場所にある。
駅の南北に商店街が広がり、アンティークショップやカフェ、雑貨店、古書店が多い。吉祥寺駅と荻窪駅の間にあり、高級住宅街として知られる松庵も近い。文化的でありながらも堅苦しくないエリアで、住みたいまちランキングの上位に選ばれることも珍しくない。
そんな人気の場所で始まったのが、高架下の開発計画。ジェイアール東日本都市計画は、西荻窪駅~吉祥寺駅間の全長約200mの空間を「寄り添う高架下日々西荻窪」のコンセプトをもとに開発すると発表した。
開発のキーワードは「豊かさ」「愛着」「安心」の3点。開発総面積約は5000㎡となり、1期~3期にわけて飲食店や物販店、サービスを中心としたテナントが入り、地域住民が日常で利用できる場所として整備する。
また、周辺環境や気持ちの良い歩行空間のため、敷地内に緑化された歩道も整備。高架下の南北に抜ける道路周りに共用空間を設け開放的な空間も演出し、催しや地域活動の拠点としての利用を想定している。
外構部には木材を使用し、環境配慮型の開発を進めるのも特徴だ。1期開発の供用ファニチャーには多摩産材を多く使用し、健全な森林サイクルの活性化に貢献することで、持続可能な社会の実現を推進するという。
すでに開発は行われており、11月上旬には第1期区画にスーパーマーケット「オオゼキ西荻窪店」がオープン。今後も、2025年度までに完成を目指し、各種テナントのオープン、設備の供用が始まる見通しだ。
地域住民にとって、日常で使える店舗・サービスが増えていくのは、喜ばしいこと。高架下空間の活用と地域活性化を兼ね備えた開発と言える。
一方、近隣の荻窪や吉祥寺といったスポットに比べるとややおとなしく、安い賃料で住めるのが魅力のまちだが、再開発が進むことで変化が起きるかもしれない。
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で西荻窪駅周辺市の賃貸マンションの賃料は3.96%、中古マンション価格は7.56%上昇している。賃料は東京都と同水準だが、マンション価格は東京都の変動13.53%に比べると、やや低め。ただし、住みやすさが向上することで注目が集まり、需要が高まるかもしれない。
駅近くで道路の拡幅計画も進行中
地域における再開発の動きも見られる。西荻窪の駅周辺は道が狭く、駅前広場も十分なスペースがあるとは言いがたい。小さな店舗が集まっているのは魅力だが、火事が起きた際は心配だという声も。
こうしたことから、高度な防災都市の実現と拠点形成・拠点間連携を目的に、駅北側の商店街「北銀座通り」を走る「都市計画道路補助132号線」の拡幅が計画され、青梅街道から善福寺川を越えた区間については事業が始まり、駅南口の再開発も浮上している。
西荻窪駅周辺は、東京23区内で残り少ない下町情緒が残るエリア。ただし、建物の老朽化は必至で、更新が迫られていることも事実だ。今後、まちの景観は変わっていくのかもしれない。
一方、近年は鉄道系デベロッパーによる、高架下開発が活発だ。西荻窪駅の開発を担うジェイアール東日本都市開発は、秋葉原駅~御徒町駅、有楽町線~新橋駅、高円寺、亀有駅~綾瀬駅間など数多くのプロジェクトを実施しており、こうした動きは首都圏のみならず全国各地に広がっている。
土地の広さは限られ高層化できないデメリットはあるが、個性的な店舗・サービスを集めることで人気のスポットは多く、まちの活性化にも寄与している。にぎわいや雇用の創出にもつながり、鉄道を活用した地域づくりは今後も増えていくだろう。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))