こんにちは!
古民家好きのリノベ屋らいおんです。
このコラムで何回かに渡って綴っていた、三重県鳥羽市の空き家を再生した旅館のその後を共有したいと思います。
2021年に所有者のお爺さんから譲渡して頂いた築約100年の戸建てを、1年間の構想を経て旅館業という形で再生、クラウドファンディングでリフォーム資金をご支援いただき、2023年に完成したという経緯のある物件です。
想いを詰め込んだHPも作成しているので一度ご覧頂けますと嬉しいです。
■観光客数が右肩下がりの厳しいエリア
で、健美家コラムですから、気になるのは
ぶっちゃけ儲かっているのか?だと思います。
ここを今回は掘り下げていきたいなと思います。
結論:宿泊業だけでは儲からない。他事業と絡めた広告塔として活用するならアリ
ぶっちゃけ儲からないです。
そもそものエリアが鳥羽市という観光が寂しくなってしまっている場所なので、稼働率を上げようにも限界があるんですよね・・・。
ほら・・・平日とはいえ、鳥羽駅目の前がこんな感じですから・・・。
このノスタルジックな感じが僕は好きだったりするんですけどね。
静かでのどかで最高なんですよ!
ただ、宿泊業をしようとするにはかなり厳しいエリアなのは事実。
大きいホテルや旅館も廃業しているところが目立ちます。
観光課が毎年出している観光データを見ても全体的に右肩下がりなのがわかります。
コロナ禍から徐々に復活しているようにもみえますが、盛り上がっているとは中々言いにくい・・・。
近年、民泊ブームなのでこの流れにあやかりたいところですが、ブームの要因は主に外国から観光客の狙ったインバウンド需要によるものが大きかったりします。
しかし、鳥羽市はそもそも外国からの観光客が少ない・・・?
なのでドッカンドッカン大きくインバウンドを狙うのが中々難しそうでもあります。
グラフを見ると関東からの宿泊者が多いという意外なデータ。
ノスタルジックな雰囲気は、派手さはないものの、ゆっくりしたいという国内観光客がメインになるのかもしれない。
そんな鳥羽市のどこに僕の旅館が位置するかというと、このへん。
メインの鳥羽駅から車で5分くらいと実はまぁ鳥羽市の中では良いエリア。
有名な水族館や各種レジャースポットにも行きやすい場所なのは幸いです。
そして気になる稼働率ですが、月に予約5組前後といったところです。
※まだ稼働して4ヶ月なのでデータが乏しい
一泊の料金が週末4万円、平日3.5万円(一棟貸切料金)なのですが、やはり主に金土の週末が多いです。
売上額で言うとざっくり15万円前後。
ここから経費や返済などを加味すると、手残りで3万円前後・・・。
週末の単泊は国内旅行客、平日に泊まりにきて連泊されるのは海外の方が多い印象です。
中々に乏しいですよね・・・。
■なぜ集客窓口を増やさないのか!?
ただ、これの要因はわかっているんです。
単純に集客の窓口を増やさないからです。
というのも、現在の宿泊予約はAirbnbのみなんです。
これ、当然の話ですが、予約できる窓口を増やせば分母が増えるので、予約数も上がるのは必然なんです。
住宅賃貸募集でも掲載するポータルサイトを増やした方が入居が決まりやすいのと同じく、楽天トラベル、じゃらん、booking.comなど掲載媒体を増やせば良いんですもの。
※実際には一般媒介よりも専属専任の方がいいとかありますが、理屈として
ですけど、それをしない。
理由はいくつかあって
②稼働率を制限して空き日を使って還元をしたい
③希少価値を上げたい
ということがあります。
上から順に強い理由順。
とにかく、近隣とのトラブルを避けたいんです。
合理的な理由をいえば、地方の町中でしかも住宅街で商いをしようものなら、現地の住民といかに共存できるかが、長く事業をしていくためには必須だからです。
民泊の撤退理由で多いのは需要がないとか、儲からないとかそんな理由もありますが、近隣トラブルによるやむを得ない撤退というのも多いと聞きます。
ここを押さえておかないと、どれだけ良いものを作っても、その地で商売をさせてもらえないという最悪の結果になってしまいます。
もう一つの理由は、シンプルに近隣のおじいちゃんおばあちゃんに迷惑をかけたくないという心情です。
取得してからオープンまで実に2年もの間、近隣の皆さんにお世話になって応援もしてもらったので、そんな方たちに「旅館になって良かった」とシンプルに思ってほしいのです。
「こんなのできなければ良かった」なんて思わせたくないですもん・・・。
なので、物理的に分母を減らしてトラブルが起きる確率を減らすという強硬手段です。
でも、そんなことしたら何のために宿泊業やってんの?となりますが、これはもう②なんですよね。
還元したいんですよ。
綺麗事をいうと、お世話になったこの地に還元をしたい。
なので、近隣のおじいちゃんおばあちゃんの身内の方が帰省した際には、この旅館を無料で開放しています。
※クリーニング代だけもらってる
下心をいうと、放置されていた空き家を再生して、儲けのためだけでなく地域にも還元しているという、めちゃくちゃソーシャルグッドな活動実績を作れるからです。
これが広く認知されることで、空き家を何とかする人というイメージがついて、メディアにも取り上げられたり、空き家の相談をして頂けるようになったり、初めましてでもう信頼されている状況になったりと、挙げればキリがないほどのメリットがあるんですよ・・・。
この実績と信頼が、本業のリフォーム会社の経営にもめちゃくちゃ直結しているので、旅館で満室稼働を狙って月数十万円の目先の利益を取りにいくのは、消費的で非常に勿体無いと思っています。
当然、利益を出すのは大事なのですが、不動産にも役割分担があるので、集客がめちゃくちゃ期待できるエリアではガンガン稼ぐ物件という役割を。
地方のさらに田舎の集客が乏しいエリアでは、割り切って活動実績づくりをしていく、というのが僕の中での一つの解になりそうです。