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2023年を振り返る。建築費上昇の継続と建築会社破産リスク~その2建築関連

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第65話 著者のプロフィールを見る

2023/11/27 掲載

1、今年の建築関連を振り返って

さて、前回の不動産関連に続いて、今回は建築関連のお話をできればと思います。今回、「インヴォイス制度」や「2024年問題」などにも触れますが、これは各制度の詳細な説明検討というコラムではないので、かなりわかりやすくざっくりとした説明に留めております。

そのため、興味のある項目については、ご自身でも調べて知識を深めていただければと思います。

2、建築資材や人件費の高騰などで建築費の上昇傾向は続く

不動産価格と同様に建築費も増加傾向だとよく耳にします。建築費が高騰すると、新築マンションの販売価格へと反映されますので、コロナ以後建築費も高騰し、その価格が反映されて、新築マンションは、どんどん高額になっているという印象です。

建築費は、人とモノ、すなわち、工事等の作業を行う大工さん等の人件費と、建物を建てる資材、建材といったモノ自体の価格が反映されていきます。

建材については、コロナ禍で海外の工場がストップし、建物はできているが「トイレ」が入ってこないなどは、よく聞いた話です。さらにロシア等の政情不安や世界的なインフレ傾向もあってか、輸送コスト、資材コストが上昇しているという話もあるようです。

職人さんや現場監督の人件費については、昨今話題の「インヴォイス制度」や「2024年問題」がかかわってきます。

インヴォイス制度は、わかりやすく言いますと、売り上げ1000万円以下の個人事業主から、正確に消費税を取り立てようという制度といってよいかと思います(※このあたりは若干不正確な点があったらお許しください)。

すなわち、1000万円以下の売り上げの個人事業主は、仕事を受けるときには、消費税を反映した金額を請求するのに、消費税の納税義務が免除されていたため、「消費税」として受け取った10%を自分の利益にできていたのです(※これを益税というようです)。

私も独立前このような時期があったので、「不思議な制度だな」と感じたことを覚えています。「もともと優遇?されていたのが、元通りになっただけじゃん」と感じられるかもしれませんが、インヴォイスは個人事業主がインヴォイス制度に対応しないと、その取引相手にその負担を負わせる制度になっています。

結論を述べますと、インヴォイス制度によって、個人事業主である職人さん、大工さんの手残り金額を同額にしようとすると、その価格増加分を、職人さんへと依頼する建設会社が負担するということになります。

先日、クリエイターの方などがインヴォイス制度に関して、デモを行ったというニュースもありましたが、建設現場の職人さんは、このような個人事業主形態の方が多く、建設業界への影響も大きいと思います。

また、「2024年問題」と呼ばれる残業時間代の上限規制が、建設業界でもスタートします。運送、建設、医療という分野については、恒常的に残業時間が長いため、すでに他の業界ではじまっていた残業代時間規制が猶予されておりました。これが2024年からスタートします。

これも結局のところは、現場監督の残業時間を抑えるためには、工期の長期化、ないしは建築費の増加ということで、施主の立場になる大家さん、投資家にも反映されてくる可能性があります。

結局のところ、建築費については、世界情勢等の影響により建築資材の高騰が進んでいるのに加えて、もともとの傾向である「職人不足」、さらにインヴォイス制度、2024年問題が後押しして、人件費も高騰し、上昇傾向が続くだろうと考えております。

色々な要因がありますが、特に、団塊の世代が抜けた後の職人さん不足は、社会にとっても大きな影響だと思いますので、何か大きなテコ入れが必要ではないかと懸念してしまいます。

3、建設会社の破産騒動とそのリスク

今年早々に、「土地から新築」の建築工事を、受注数で業界トップクラスのシェアを有していた建設会社が破産し、大変な騒動になりました。この騒動になった建設会社以外にも、経営状況が危うい、現場放置、休眠夜逃げなどの相談が数年前からちらほら生じております。

前回のサブリースと同じで、依頼した会社が破綻してしまうリスクがあるということですね。建設会社も、やりたくて破産しているわけではないので、先にお話しした建築費の高騰による利益状況の悪化が、この傾向に拍車をかけているイメージです。

工事に関する請負契約は、1億円の工事であれば、3~4回にわけて支払うものの、契約時点で工事総額を決めるのが原則です。もっとも、工事期間も1年弱程度みるのが普通ですから、その間に部材高騰、職人さんの費用高騰などがあり、どうしても当初の金額では採算が合わず利益状況が悪化するという事態がありえました。

これに対して、施主さんとしても、「契約で決まっているのに、後から追加で2000万円だなんて・・・」となかなか、追加代金請求に応じるのが難しいことも多いと思います。

他方、施主さんが追加代金に応じてくれないと、工事が回らなくなるので、本来だと赤字になるような安い金額でも、とにかく受注して、運転資金を得て無理やり回そうとする、このサイクルを続けて回らなくなった際に破産してしまう、という流れです。

「土地から新築」スキーム投資で破綻する建設会社を選ばない対策としては、「安すぎる見積もりに飛びつかない」「紹介などを参考にする」「人柄をあてにしない」「信用情報会社などから財務状況を確認する」などはあるのですが、絶対はないのですよね。

結局のところは、トラブルにあっても破綻しないだけの「体力=資金力」をもつほかないのかなとも思ってしまいます。上手くいけばリターンが大きいのですが、リスクもあり難しいところです。

4、総括

さて、今回は、建設会社版の振り返りでした。職人不足や、工期を守るための過重労働対策をするために、大手企業の中には、学校への研修を増やし職人勧誘を進めるとか、工期自体を見直して無理のない労働時間で工事を進められるようにするなどの施策を始めた企業もあるようです。

いずれにせよ、不安定な建設業界動向等、職人不足による建築費高騰は継続していく印象があります。

最後にお知らせです。下記のように、不動産大家さんのトラブル専用のホームページを公開しています。興味がある方はブックマーク等お願いいたします!( ※おそらく、自然検索では辿り着かないと思われます・笑 )

https://fudousan-ooya.com/

では、また次回もどうぞ、よろしくお願いいたします。

 

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

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