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建築費4000万~、コストを抑えた木造の「長屋」に注目! 自由度が高い設計で長く愛される【建築家と建てる賃貸住宅】

収益物件購入・売却/建築家の賃貸住宅 ニュース

2022/12/16 配信

建築費も高騰する今、目を向けたいのが長屋形式の賃貸住宅だ。「長屋なら設計の自由度が高く、限られたコストや敷地のなかでも魅力的な賃貸住宅が作りやすい」と語るのは、ユキアーキテクト一級建築士事務所代表の三村由起江である。三村さんが手掛けた長屋形式の賃貸住宅について取材した。

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東京・下石神井の長屋形式の賃貸住宅。ファミリー向けの3LDKが2戸入る。建築費4000万円台(建築当時)とコスト面も魅力。

長屋はいろいろな建て方ができる点が魅力!
入居者同士の「距離感」への配慮も重要に

冒頭の写真は、三村さんが手掛けた、東京・下石神井の長屋形式の賃貸住宅だ。最寄り駅から徒歩8分ほど、南北に細長い約61坪敷地である。施主を含め、地場の賃貸事情に詳しい不動産屋さんとともに、戦略を練っていった。

「ファミリー向けのマンションが多いエリアで、賃貸派も一定数いることから、子供が2~3人いて、車を持っているファミリー層をターゲットにしました。建築にお詳しいオーナーさまから、収益性はもちろんのこと、街並みへの配慮も求められました」

そこで三村さんが提案したのが、長屋形式で 3LDKのメゾネットの2棟を横に組み合わせた設計だ。

写真の通り、住宅地になじみながらもオリジナリティのある外観デザインである。採光性に優れた南側は、1階にLDKを配置し、北側の棟は2階にLDKを構えることに。さらに2棟の間に中庭を確保して緩衝材にしつつ、各棟が接している部分は開口部を減らし、収納や水回りを配置することで、音やプライバシーに配慮した。

「長屋はいろんな建て方ができる点が魅力で、今回は2棟それぞれ戸建て感覚で1棟1棟建てて横に並べたような構造です。2棟で1棟として同時に施工しますので、足場や基礎工事など工期や人工(作業に要する延べ人数)が経済的になり、戸建て住宅を2棟別々に建てるよりコストが抑えられます」

細長い敷地のため、人と車や自転車など、それぞれのアプローチ動線を集約させるために、2階をオーバーハング(突き出る)させ、その庇の下に動線をまとめ、自転車等を置けるようにして、駐車場は北側の日当たりが悪いところに配置した。

住宅を建てる際に、三村さんが常に意識していることは、奇をてらうようなデザインではなくても愛着がもたれ、機能的であることだ。賃貸住宅の場合は、それに加えて他人同士が集まって暮らすため、入居者同士の「距離感」への配慮も欠かせない。

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内装もコストの高い素材は避け、既製品を利用しているが「使い方」を工夫する。2階部分はあえて構造材を表に出すことで、木の質感が感じられる独特の空間に。2階のリビングから少し離れた場所(右上)に、書斎を設け、在宅勤務にも応用できるように配慮した。

「丸の内」で働く女性を想定した、
1LDKのように使える「ワンルーム」で差別化

お次は、東京・文京区小日向の例である。「長屋」形式であり、2階がオーナー住戸、1階にワンルームが3戸ある賃貸併用住宅だ。丸の内沿線の最寄り駅から東京駅まで11分であることから、丸の内で働くような所得の高い女性を想定し、女性専用に。ただし駅から徒歩10分とやや距離がある。

「オーナーが女性で、もともと女性専用の賃貸住宅が建っており、単身女性の賃貸ニーズがあることが分かっていたことと、オーナーさんの『女性を応援したい』という気持ちから女性専用の賃貸住宅となりました」

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長屋形式の賃貸併用住宅。1階にワンルームが3戸入る。高収入の女性向けにして収益性を高めた。

長屋では、道路からすべての住戸にアプローチできることが条件となる。そのため、1階の3戸を道路沿いに並べ、かつ右奥からオーナー住戸に入るアプローチを設けている。

単身女性向けのワンルームで1階は、防犯性が懸念されることから写真のように2階の高さまである木のファサードで目隠しをした、「光庭」を各戸に設けている点に注目である。

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木目のファサードの背面、玄関を入ったすぐの場所に「光庭」を設置。洗濯物を保すことができ、外からの視線を遮りながらも、光が良く入る。

さらにこの部屋の魅力が、ワンルームであるももの、1つの部屋を2つに仕切るかのように、水廻りを設けたことで、1LDKのように利用できる点である。

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水廻りを部屋の中央に配置。奥は寝室として、手前はLDKのように、1つの空間だが、空間を2つにわけて利用することができる。こちらも内装や設備はコストを抑えつつ、照明を工夫することで、洗練された印象に。

「女性の入居者が友達を連れてくるときに寝室は隠しておけるように、奥のスペースにベッドを置いてプライベートな空間として利用することができるように配慮しました」

上の写真からもわかるように、奥の部屋ではクローゼットにあえて扉を設けずオープンな空間にしている。カーテンレールが設置してあり、衣類を隠したい場合は、ファブリックをかけて隠すこともできる。

「一人暮らしの場合、人によって持っている洋服の数は千差万別です。たくさん服を吊るしていいし、そうではない使い方もできるようにと考えました。ちなみに扉をつけないことでもコストカットにつながります」

最後に、これから賃貸住宅の購入や建築を考えている読者に向けてメッセージを。

「投資の目的からいかに収益性を高めるかを重視しがちですが、その土地にはさまざまな条件があります。その土地の条件や、街並みに合った建物であることが大前提です。そうすると何十年経ってもいきいきと存在価値を出すような建物になり、長い面で見て費用対効果がいい建物になります。入居者に、この建物が好きだと思ってもらえたら、愛着を持ってもらえて、早く入居が決まり、長く住んでもらえることにつながります」

今回紹介した2つの賃貸住宅ともに相場よりも高い家賃設定ながら、募集早々に満室になり、安定経営が続いている。三村さんの戦略が当たっていることの証拠だろう。

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一級建築士 三村由起江さん。三重大学工学部建築学科、大学院工学研究科建築学専攻修士課程終了。設計事務所勤務を経て、独立。女性ならではのきめ細やかさを活かしながら、『その場所で、自分らしく住まうこと』にこだわり、心地よい空間づくりを目指している。

●取材協力:アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社(ASJ)
約3000人が登録する日本最大級の建築家ネットワーク。全国各地のスタジオや定期的に開催するイベントで、さまざまな建築家と出逢い、話し合える場所を提供している。

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健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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