2024年、不動産業界にとって大きな転換期となりそうな話題が、4月に建築物の販売・賃貸時の「省エネ性能の表示制度」が始まることだ。
不動産仲介サイトで賃貸住宅の省エネ性が、家電の省エネ性の表示と同じように、★の数や数値で表示されるようになる。
20年程前から建築家として設計事務所として断熱性の高い住まいを手掛けてきた株式会社 白岩工務所の代表取締役 白岩且久氏は「これを機に賃貸住宅の断熱性や省エネ性も、入居者の判断材料になっていくのではないか」と考察する。
白岩氏に断熱性の高い賃貸住宅を建てるポイントから、すでに建っている賃貸住宅の断熱性を高めるリフォームのポイントなどを聞いた。
寒すぎる住まいは危険!WHOが提唱、「冬季室温18度以上」
一段と寒さがこたえる季節になってきた。光熱費の高騰から、節約のためにエアコンを我慢している人も多いのではないか? 実はそれ、体に悪いかもしれない。
以前、健美家ニュースでもご紹介した『“生活環境病”による不本意な老後を回避する―幸齢住宅読本―』によると、寒すぎる住まいは危険で、WHOは「冬季室温18度以上」を推奨している。
交通事故で死ぬ人の数よりも、お風呂場で亡くなる人の数が日本では多いのである。それくらい日本の住まいの寒さは危険だと指摘されている。ちなみにこの本で紹介されている、「断熱改修をしたら、血圧の高さが解消した」という住まいを手掛けているのが白岩氏だ。
50年の実績がある設計事務所を経営するが、断熱に力を入れるようになったのは20年程前からだ。断熱に着目されたきっかけは?
「友人から高断熱・高気密の家を作ろうと頼まれたのが始まりです。実際に完成し、住んでみると冬は暖かく、夏は涼しく、エアコンの使用量も減り、住み心地がとても良いことがわかりました。
以来、当社では断熱の研究を重ね、建てている住宅は賃貸住宅も含め、高断熱・高気密+自然エネルギーを利用した住宅ばかりです。東日本大震災を機に、ますます自然エネルギーを活用した家づくりが必要になると感じ、これまでに『節電住宅』の著書を出すなどして、自身のノウハウや実例をお伝えしています」
断熱性を上げるポイントは、基礎、屋根、窓ガラス!
高断熱・高気密にするためには、さまざまな工夫があるものの、大きなポイントは基礎断熱の仕組みである。
「当社で特許を取っている外断熱のシステムは基礎を2メートル掘って地熱を取る仕組みです。地下10mまで掘ると、その土地の平均気温と同じ、温度になります。
例えば東京なら16.6度ほど。10メートルも掘る必要はなく、2メートル掘り、基礎の廻りに断熱材を入れます。2メートル下では7~8月の暑いときでも20度以下です。この自然の涼しさを住まいに活かそうと考えたのです」
基礎断熱の次に大きな効果があるのが屋根である。たとえば古いアパートや住宅の既存の屋根に断熱材を貼り付け、その上に屋根材を施すことで、大きく断熱性を改善できる。
屋根の次は、窓である。
「窓は当然、気密性の高いペアガラスを採用します。すでに建っている住宅も、窓をペアガラスに交換したり、内窓を付けたりすることで、断熱性を改善できます。また南側に庇を付けることも重要です。夏場の日射が入るのを防ぎながらも、冬場は日差しが入る利点があります」
建築費は1割アップでも、光熱費が下がり、入居者に好評!
「当社の高断熱・高気密+自然エネルギーを活用する方法で建てた、世田谷の賃貸住宅では、気温32度のときに、室内が26度と、冷房なしでも過ごせる涼しさでした。
賃貸併用住宅でしたから、オーナーさまにも断熱性の高さを実感していただき、2棟目の賃貸住宅もご依頼いただきました。高断熱・高気密にすることで建築費は通常より1割ほど高くなりますが、冬暖かく、夏涼しく、光熱費を抑えることができ、入居者にも大変好評だと聞いています」
それが次の写真の「TAISHIPIA」「TAISHIPIAⅡ」である。
「室内にロフトがあると、暖気が上に上がって寒くなりがちですが、高断熱・高気密で建てたロフト付の賃貸住宅は、冬場も暖かいと好評をえています。退去があっても3日で埋まると聞いています」
「特に寒い地域では、断熱改修の効果が大きいため、迷っているならぜひやるべきです。4月の省エネ性の表示開始までまだ時間があるため、断熱リフォームをするなら今でしょう。お困りの際はぜひご相談ください」
※取材協力:株式会社 白岩工務所 代表取締役 白岩 且久氏
自然素材でシックハウス対策に力を入れ高断熱、高気密、耐震性の優れた注文住宅の設計施工を行う。狭小住宅・リフォームも得意で賃貸住宅も多く手掛けている。
自然エネルギー利用の建物空調システムを開発し特許取得(太陽暖房 ひだまり、 地熱冷房 そよかぜ)。対応地域は東京・神奈川が中心だが、設計は全国対応。施工は地元の業者に依頼することも可能。