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1つの「しくじり」から高額な立退き料支払いへ!大失敗立退き事例を不動産鑑定士が解説

賃貸経営/トラブル ニュース

2022/02/03 配信

不動産投資の世界において、古くなった建物を解体して新たな建物を建てるために現状の賃借人に移転(立退き)していただく事は大変重要な要素と考えられる。

どちらかというと賃貸人から依頼されることが多いが、賃借人側から立退き料の鑑定評価を依頼され、その中から見えてくる賃貸人側のしくじりポイントを見ていく事で是非今後の参考にして欲しい。

結果として、東京都内の木造アパート家賃15万円に対して、立退料約440万円で妥結した(個人情報保護と守秘義務の観点等から案件を特定されないように立地や時期や数字等はフィクションとして加工している)。

時系列としては、令和2年1月に築50年の6戸の木造アパートが新所有者に所有権移転し、立退き交渉開始、令和2年3月から所有者では無く代理人(弁護士ではない)からの立ち退き交渉始まる。

他の住戸は6ヶ月程度の立退料で退出完了。一戸(依頼者)だけ難航し、令和2年11月賃貸人が原告となり、いきなり裁判開始。事務所使用の許諾があったかなかったか、ペット飼育の了承か否か等の事実確認が争われる。

裁判での、原告側の立退料意見書約170万円。被告側(賃借人)、立退料意見書約900万円。 最終的には高齢の旧賃貸人を過度に巻き込むことに賃借人が心情的に負荷を感じて、令和3年11月に立退料約440万円(約29ヶ月分)で妥結。

写真は中国の一棟だけ立ち退かなくて頑張っているところ。
写真は中国の立ち退き例。一棟だけ立ち退かなくて頑張っている様子

原告側(賃貸人側)しくじりポイント

1:新賃貸人への引継ぎ事項が不備

まず、旧賃貸人と賃借人は事務所使用許可の承諾書を口頭ではなく文書で締結していた。

更に大型犬のペット飼育についても旧賃貸人も犬を飼っており、犬の飼育の話もお互いにしていた。文書での承諾は無いものの大型犬が部屋にいる状態で賃借人の部屋にも訪れており、事実上の承諾があったと考えられる。

旧所有者は、その二つの事項を新所有者に伝達していなかった。

住居としての契約を勝手に事務所使用していると新所有者は認識しており、交渉段階では、契約解除も視野に入れた交渉をしていたようだ。

大変圧迫的な対応だったようで、賃借人も感情的になった経緯もあり、そこがしくじり要因の基礎になったと考えられる。

2:賃借人との接触の仕方

上記要因から契約解除も視野に入れた対応であり、代理人が交渉にあたったのだが、大変圧迫的な対応で、最初は、賃借人に立退料1ヶ月分から話をされたようである。

また、この行為は非弁行為(弁護士法に定められている弁護士のみに認められている行為を弁護士以外の者が行うこと)に当たる可能性も高く今回の裁判の中でも指摘されている。

つまり所有者が直接、または所有者とマスターリース契約をしている者、または弁護士先生が当事者として直接交渉するべきということだ

また、立退き交渉のベテランからのアドバイスとしては、賃借人との交渉では、交渉のペースを両者等分にする為に、立ちながらの扉脇での交渉だと難しい場合が多いという。賃借人も落ち着いて話すことができないからだ。

ましてや女性の一人暮らしでは、状況悪ければ、交渉相手が部屋の中に乗り込んでくる可能性もあるので、恐怖が先行する場合もある。

それを避けるためにも、近隣のファミレスや喫茶店で落ち着いて話しをする方が、交渉が妥結しやすいとの事だ。

参考にしてみみるのも良いかもしれない。

3:早期に、所有者が賃借人に対して裁判を起こし、期間が長期化する

全ては1と2の要素が基になっていて、賃借人側も既に感情的になっていた。更には原告は当初、3ヶ月分の立退き料を支払う事と、脅しのように毎月2ヶ月分の迷惑金を支払う事を訴えている。

住居の契約なのに、事務所使用しているという事での解約事由を基にしていると思料されるが、裁判の過程で、事務所使用承諾書が提出されて、形勢不利になってしまったのである。

被告側が高齢の旧所有者を更に巻き込む事を嫌がって、妥結しなければ、更に被告有利になっていると思料される。

このように立退きをしくじると費用が嵩み期間が長期化し、事業に赤信号が灯る事もあり、細心の注意が必要である。

ちなみに立退料の構成要素としては以下の通りである。借家権価格と通常損失補償額に分類され、通常損失補償額は更に借家人補償、工作物補償、動産移転補償、営業補償、移転雑費補償に分けられ、各々更に細分類される。

項目を見て明らかなように、一般的には住宅より事務所、事務所より店舗の方が立退料は多くなりがちである。

1:借家権価格
2:通常損失補償額
A:借家人補償
(1)家賃差額補償
(2)敷金等差額運用益損失補償
(3)権利金等補償
B:工作物補償
(1)新設費用
(2)工作物補償
C:動産移転補償
D:営業補償
(1)収益減補償
(2)得意先損失補償
(3)固定的経費補償
(4)従業員に対する休業手当補償
(5)賞品及び仕掛品の減損補償
(6)仮営業所での営業補償
E:移転雑費補償

文:竹内敬雄(たけうちゆきお)

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執筆:竹内敬雄(たけうちゆきお)

竹内敬雄様11

■主な経歴

IAC財産設計株式会社 代表取締役
不動産情報誌の広告営業を経て、不動産鑑定の千本ノックを経由して、不動産デベロッパーへ入社。マーケティング担当として商品企画にも携わった後、総合的に不動産をサポートする現在の会社を創業する。士業集団シニアライフSOSを通じて税務法務も含めて総合的に大家さんをサポートしている。
保有資格:不動産鑑定士、宅建士、CCIM、上級相続アドバイザー
宅建マイスター等

■主な著書

「これから大きく変わる相続税と法律」共著

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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