天神に近い渡辺通二丁目で再開発事業がスタート
渡辺通駅は、福岡市の中心部である天神エリアと西区を結ぶ地下鉄七隈線の駅。1日の平均乗車数は3317人(2022年度)で、コロナ直前である2019年の3660人に追いつきつつある。
駅周辺には九州電力本社やホテルニューオータニ博多、柳橋連合市場、福岡放送など、大手企業のオフィスや宿泊施設などが広がっている。
渡辺通は福岡市中央区東部にあり、北で西中洲、東で警固、南東で清川、南で高砂、南西で白金、西で役員・今泉、北西で天神と隣接。天神エリアの南側に立地し、南天神と一体化した市街地を形成しているのが特徴だ。
地名と同じ「渡辺通り」がまちの中央を南東から北西に貫き、広い通りが中央にあることから、上記のような大規模な施設が沿道を中心に建ち並んでいる。
この度、渡辺通駅の近くで、新たな再開発プロジェクトが始まることが分かった。それが、「(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト」だ。
計画を進めるのは、九州電力、電気ビル、十八親和銀行(ふくおかフィナンシャルグループ傘下)、福岡商事といった大手企業。九州電力が本店を置く渡部通二丁目地区において、同プロジェクトを共同で進めることを発表した。
プロジェクトのコンセプトは、「協働・共創の促進」「脱炭素ビルへの挑戦」「地域との共生」の3点。新しい働き方への対応、再生可能エネルギーなどの活用を通じたCO2排出量実質ゼロを目指したオフィスビルの建設、さらに、沿道の魅力づくりや、天然芝の緑地広場・カフェ棟を拠点とした地域の賑わいや交流促進などに取り組むことで、社会課題や環境課題の解決および地域活性化に貢献し、持続可能な社会の実現に貢献するという。
現時点でビルの高さや規模、デザイン、テナントなどの情報はないが、計画地の画像を見る限りでは、相当な規模の再開発になることは間違いない。
天然芝の緑地公園もあることから、オフィス機能以外に、人が集まりやすい施設が整備されるかもしれない。現在は2025年度中の着工を目指し、詳細を検討しているところだ。
渡部通を含むエリアは「戦略的行動エリア」
福岡市と言えば「博多コネクティッド」や「天神ビッグバン」に代表される大規模再開発プロジェクトが注目されがちだが、福岡都市圏の成長を目指す産学官連携組織「福岡地域戦略推進協議会」(FDC)による「福岡都市再生戦略」では、渡部通を含むエリアを「戦略的行動エリア」として位置づけけている。
同エリアのポテンシャルについて学識者・会員企業らと議論を重ね、2022年6月には九州電力をリーダーとする「渡部通ワーキンググループ」も設置された。
また、同WGは2023年6月下旬に、実証実験「わたなべベース -スーツで行ける秘密基地-」を開催。期間中はエリア内にある電気ビル共創館広場にワークスペースを設けるほか、働く・学ぶに関する交流イベントを実施し、さまざまな属性の人の交流により、新たなビジネス・カルチャーを創造する“キャンパス”としての街の可能性を検証した。
このように、市内の重要拠点のひとつに数えられ、さまざまな取り組みが進められている、渡部通エリア。今回の再開発は、目玉プロジェクトのひとつなのかもしれない。
同エリアに周辺には住宅街も広がっていて、これからの動きが住宅価格や賃貸需要に影響を与える可能性もある。不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で渡部通駅周辺の賃貸マンションの賃料は5.99%、中古マンション価格は16.60%上昇している。賃料に関しては福岡県の変動6.15%に比べて同水準だが、マンション価格は県の14.12%に比べるとやや高い。
交通の便が良く、都心部に比べると静かなので、今後の再開発やまちの活用によって、さらに発展するエリアと言えるだろう。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))