海外パビリオンはタイプA~CとXの4通り
注文住宅型のA希望は約50カ国、賃貸型のB、Cは計約100カ国
2025年4~10月に大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)で開かれる予定の2025年大阪・関西万博に海外の国・地域が出展する「海外パビリオン」の建設準備が遅れている。
資材費高騰の影響で建設を請け負う日本のゼネコンとの契約が進んでないことが理由で、開幕までに海外パビリオンすべての建設が終わることは難しいと心配されている。
一部には万博の開催時期を遅らせるべきではないかとの声も出ているが、そうなれば、期待される大阪の不動産や賃貸市場の盛り上がりも不十分になる恐れがある。
万博に参加を表明している海外の国・地域は合計で163。これらが万博でそれぞれパビリオンを出し、訴えたいメッセージや技術などを「展示」する。
その海外パビリオンには、もともと3つのタイプが予定されていた。
まず「タイプA」。こちらは、海外の国などがみずから費用を負担し、独自のデザインで建設するものだ。住宅にたとえると、「注文住宅」のイメージ。およそ50カ国・地域がタイプAを望んでいる。それぞれがデザインの独自性を発揮し、思い思いの魅力的なパビリオンをつくることを狙っている。
次に「タイプB」。日本側がまず建物を建設し、国・地域が賃料を払って個別に使い、展示するというものだ。
3つ目が「タイプC」。同じく日本側がまず建物をつくり、複数の国・地域が賃料を払って、共同で使うというもの。タイプBとタイプCは、いわば「賃貸住宅」だ。タイプBとタイプCを合わせて、およそ100の国・地域が希望している。
進まないタイプA建設 資材費高騰で建設契約条件折り合わず
代替案のタイプXは「建売住宅」 自由度なく移行進まなない
問題となっているのが「タイプA」だ。新型コロナウイルス禍の影響もあって各国・地域の準備が遅れた上に、資材費の高騰で条件が折り合わず、建設契約がおこなわれない状況になっている。9月20日現在、必要な建築許可の申請を大阪市に対して出したのは、チェコ1カ国のみだ。
この状況では、とうてい万博開催までに間に合わない。そこで、万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)が各国に示したのが「タイプX」という新しいタイプ。いわば「建売住宅」で、日本側が代理で建設業界に対して発注し、作ったものを各国に引き渡すというものだ。費用は各国の負担となる。
プレハブや鉄骨の長方形で、床面積は300~1200平方メートルの4タイプとなっている。形は変えられないが、外装や内装は自由にできる。
簡易な工法なので、スピーディーに工事を進めることができ、万博開催に間に合わせることができる代替案として、日本側はタイプAからタイプXへ変えることを各国に促している。
しかし、9月20日現在でタイプXへの変更を希望している国は、わずか1カ国だ(どこの国かは正式には発表されていない)。その理由として、簡易型のタイプXでは、各国が思い通りの独自性あるパビリオンを作れないことが挙げられる。やはり各国とも、自由度の高いタイプAで参加したい希望があるのだと思われる。
万博開催までの海外パビリオン整備に黄信号
大阪メトロ中央線沿線中心に宿泊・賃貸需要に暗雲か
だが、このままでは、やはり万博開催に間に合わないのが確実だ。
日本側が想定するスケジュールでは、近いうちに日本側がゼネコンに発注し、来年3月にはタイプXの建設を始めて、同11~12月にパビリオンを引き渡さなければならない。
今年9月20日現在でタイプXへの転換希望国が1カ国に過ぎないとうペースなら、十分な数のタイプXがそろわず、一方でタイプAも建設されず、とうてい万博開催に間に合わないだろう。
もし25年4月の開幕時に十分な数のパビリオンがそろっていなければ、万博の魅力は大きく減り、想定している客集めができなくなるかもしれない。開幕を後ずれさせれば、集客や、思ったような経済効果は後ずれすることになる。
さらには、同じ夢洲でおよそ5年後に開業が予定されている「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)」の開催にも悪影響が出る。
そうなれば、たとえば、夢洲で建設中の新駅まで延伸される大阪メトロ中央線沿線などの宿泊客需要や工事関係者、IRで働く人などを見込んだ賃貸需要の拡大は想定通りにはいかないだろう。今後の万博の準備状況を、注意深く見守っていきたい。
取材・文:
(おだぎりたかし)