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動き始めた群馬県前橋市。中心市街地再生の事例となるか。白井屋ホテルを契機に変化し始めた、街のポテンシャルを考える。

都市計画・再開発(地域情報)/横浜・川崎・千葉・埼玉/首都圏 ニュース

2021/12/06 配信

高崎で新幹線から両毛線への乗り換えが必要
高崎で新幹線から両毛線への乗り換えが必要

地方都市での様々な試みが話題に上がるようになった。そのうちでも2021年、耳目を集めたのが群馬県前橋市である。群馬県の県庁所在地ではあるが、東京から向かうと高崎で新幹線から両毛線への乗り換えがあり、今ひとつ、不便な感じがする。

一方で中心市街地にある前橋中央通り商店街には創業100年以上という老舗が多数並んでおり、そのうちには日本でも指折りの売り上げを誇る呉服店もあるのだとか。歩いてみても、それほど賑わっているようには見えないものの、実は……というのが前橋という街なのである。

老舗旅館をルーツとするホテルが起爆剤に

金融機関の並ぶ通りにあって異色の存在、白井屋ホテル
金融機関の並ぶ通りにあって異色の存在、白井屋ホテル

その前橋に2020年12月に人目を惹く新しいホテル・白井屋ホテルが誕生した。

新しいというのは妥当ではないかもしれない。もともと、その地には江戸時代に創業、300年もの歴史を持つ旅館・白井屋があった。1970年代にホテルに建て直されたものの、2008年に廃業。しばらく放置されており、一時はマンションに建て替わるかという噂もあったが、2014年に前橋市出身の起業家であり、眼鏡の製造販売を手掛けるJINSジンズホールディングス)の代表取締役CEOの田中仁氏に継承され、再生されることに。

ちょうど田中氏が社会貢献を意識、地元に寄与することを考え始めたタイミングであり、また、スケルトンになった建物や人通りの少ない街を面白がるアーティストたちの参画もあって、ホテルは事業収支からではなく、良いモノを作ろうという意図から作られることになった。

そのための試行錯誤にかかった時間が6年半。ビジネスとして考えるとあり得ないような時間だが、それが功を奏した。隣地が買えることになり、新棟を建設することができたのである。これによって白井屋ホテルは金融機関が並ぶ表通りと、飲食店街が広がる馬場川の両方に接することになった。

取材の訪れたのがブルーボトルコーヒーのオープン日だったため、多くの人が訪れていた
取材に訪れたのが「ブルーボトルコーヒー白井屋カフェ」のオープン日だったため、多くの人が訪れていた

個人的にはホテルが異なる性格を持つ二つの地域を繋ぐ場所に立地するというシンボリックな意味が加わったことを面白いと思う。

建物としても内部をスケルトンにして大胆な吹き抜けを作った既存建物・ヘリテージ棟と傾斜地を活かした緑の小山・グリーンタワーという、異なる表情の空間を持つことになり、それも面白さを倍加させたのではないか。

既存棟の内部をスケルトンにして減築、吹き抜け空間には大胆なアート作品が
既存棟の内部をスケルトンにして減築、吹き抜け空間には大胆なアート作品が
随所にアートが飾られており、それを目当てに訪れる人も少なくない
随所にアートが飾られており、それを目当てに訪れる人も少なくない
部屋は間取りも設え、アートもすべて異なる
部屋は間取りも設え、アートもすべて異なる

客室は減築の結果、25室となったが、それぞれに異なる間取り、アートに彩られており、建築、アート、デザインなど様々な興味を持つ人たちの関心を惹き、開業以来、多くの人が訪れるようになった。

海外からの評価も高く、開業から1年の間に海外の雑誌等の賞を3つ、立て続けに受賞しているといえば、その実力がお分かりいただけるだろう。コロナ禍で海外からのゲストを迎えられていないにも関わらず、この評価なのである。

ホテル建設中に新たな店舗も続々

加えて、このホテルの計画が進行している間に街には新たな場も生まれた。ホテルから馬場川沿いの歩道を行くと前述の前橋中央通り商店街まではすぐなのだが、この商店街に新しく行列ができるような飲食店が誕生したのである。

昼時、休日には多くの人が訪れている
昼時、休日には多くの人が訪れている

具体的にはポートランドで人気のクラフトパスタ店、新感覚のどら焼きが話題の和菓子店、海鮮丼の店で、いずれも建築家が手掛けたスタイリッシュな店舗も人気の要因。

さらに面白いのは和菓子店は白井屋ホテルにも関わるデザインオフィスが出店したものであるという点。田中氏の、白井屋ホテルのチャレンジに刺激され、全くの新業態にチャレンジしたのだという。

和菓子のような伝統的なジャンルでも、今の感覚で作れば話題になるものは生み出せると考えると、勇気づけられるではないか。

もちろん、この先の予定もある。ホテル敷地内に2021年9月には「ブルーボトルコーヒー 白井屋カフェ」、11月には「白井屋ザ・ベーカリー」が立て続けに開業、馬場川沿いを歩く人が増えたが、さらにその通りを今後整備していく計画があるという。

中心市街地ではそれ以外にも複数の計画

また、2022年完成を目指して前橋の中心街でのプロジェクトも進行している。ひとつはスーパーマーケット長崎屋の跡地で「Qのひろば」と名付けられ、使われてきた場所を開発するというもので、地上4階建ての、2階以上が分譲住宅になるというもの。1階は地域に開かれた広場、通り抜けられる通路とそれに面した店舗が作られる予定とか。

建設予定地。周辺は飲食店などが集まる繁華街。ここにもう一度人の流れが生まれたら面白い
建設予定地。周辺は飲食店などが集まる繁華街。ここにもう一度人の流れが生まれたら面白い

建設予定地を訪ねてみると、周辺には飲食店が集まり、かつては賑わったであろうことがよく分かる場所。地元のコミュニティバスの経由地でもあり、ここに拠点ができればおもしろいはずである。

もう1か所は前橋中央商店街と繋がる弁天通商店街に面して間口を接する細長い土地を利用、1階に通路と店舗、2階から6階に若い人たちの入居を想定した賃貸住宅を作るという。いずれも中心部に少なくなった若い層を呼び戻すための計画だ。

これらはいずれも田中氏や田中氏と共に街に関わっている人たちのプロジェクトだが、それ以外でも街を歩いてみると新しくできたであろうブックカフェやギャラリー、コワーキングスペースなどがいくつか見られ、明らかに変化しつつあることが分かる。

前橋中央商店街に面した広大な空き地。ここもこれから開発されることになっている
前橋中央商店街に面した広大な空き地。ここもこれから開発されることになっている

ひとつ、気になったのが前橋中央商店街の中心部に面した広大な空き地。再開発計画が出ては消え、出ては消えを繰り返してきた土地だそうで、現在は主に駐車場として使われているが、中心部にこんな空洞を作ったままではまずいだろうと思う。幸い、基本構想が発表され、ようやく開発が進む段階に来ているという。早期の変化を期待したい。

中心市街地からは離れるが、前橋駅北口では同市始まって以来という27階建てのタワーマンションの建設も始まっている。いろいろな意味で動き始めている街というわけだが、その一方でまだまだ使われていない余白も多い。これからが面白そうである。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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