
約15ヘクタールの
広大な敷地が検討対象に
神奈川県の相模原市では、JR相模原駅の北口エリアについて土地利用方針の検討を進めている。
相模原駅は、リニア新幹線の予定停車駅に隣接する橋本駅からJR横浜線で1駅進んだ先にある駅だ。
相模原市の資料によると、2021年度におけるJR相模原駅の1日平均乗降客数は約48,000人となっている。これは埼玉県の南浦和駅や神奈川県の平塚駅などとほぼ同数だ。
駅の周辺環境としては、駅直結の商業施設であるセレオ相模原及び相模原イッツが目を引く。
2つの商業施設を合わせると、2022年8月時点では50弱の店舗や施設が営業している。

また、相模原駅の南側には「さがみ夢大通り」という通りがあり、通り沿いには銀行や多くのオフィスビルなどが並んでいる。

相模原市が相模原駅の周辺に着目している理由の1つは、交通利便性の高さだ。
相模原駅は圏央道の相模原インターチェンジに近く、高速道路を利用すれば成田・羽田の両空港にアクセスできる。
そのほか、JR横浜線によって八王子・横浜の双方へ容易に移動可能だ。
一方で、都市機能の多くは駅の南側に集まっており、北側は都市開発が十分に進んでいるとは言い難い。

駅の北側で都市開発が進んでいなかった原因は、北側の敷地が在日米軍の総合補給廠(そうごうほきゅうしょう:補給基地のこと)として利用されているためだ。
しかし、2014年9月に基地敷地の一部が返還されたため、土地利用方針の検討が進んでいる。

※引用:相模原市
新たな大型商業施設が
開発される可能性も
相模原市が駅北口エリアの開発によって解決したい都市課題は複数あるが、着目したいポイントは「昼間人口と交流人口の拡大」及び「利便性の向上」だ。
相模原駅の周辺には駅ビル以外に目立った商業施設がなく、オフィスビルなども南口の大通り沿いにあるものが大半なので、駅周辺の就業人口があまり多くない。
また、市民アンケートによると相模原駅周辺には買物できるところがあまりないと考えている人が多く、商業施設の建設を望む意見が多数を占めている。

※引用:相模原市
開発の方針は未だ検討中ではあるが、市民アンケートの結果を踏まえれば、スポーツジムなどを含む大型商業施設が建設される可能性は高い。
商業施設が建設されれば地元の雇用喚起にもつながるため、市としても課題解決につなげられるだろう。
小田急線の
延伸計画も
相模原駅の周辺でもう1つ注目したいポイントは、小田急多摩線の延伸計画だ。
小田急多摩線は2022年現在、JR相模原駅の北東にある唐木田駅が終点となっている。
しかし、唐木田駅の南側に3つの駅を新設することが検討されており、実現すればJR相模原駅は横浜線と小田急線の2路線が乗り入れる駅となる見込みだ。

※引用:相模原市
小田急線が乗り入れれば、相模原から新宿まで乗り換えなしのアクセスが可能となる。また、途中の下北沢で乗り換えれば渋谷へ行くこともできる。
なお、2019年に発表された資料では、路線の完成時期は2030年頃が目途とされていた。
一方で、コロナを発端としたテレワークの普及により鉄道利用者が減少していることや、各鉄道会社の業績悪化などが延伸計画の障害となる可能性は否めない。
しかし、駅北口エリアの開発と併せて延伸計画が進んだ場合には、今後JR相模原駅の周辺は大きく変わると予測される。今後の展開には要注目だ。
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取材・文:
(はたそうへい)