東京・豊洲の豊洲市場場外エリアに今月オープンした大型商業施設「豊洲 千客万来」。日本各地から海鮮やご当地グルメが大集結し、開業から連日、中国人などの外国人観光客が大挙して押し寄せている。6000円を超える海鮮丼にも行列ができるほどのまさに「千客万来」な新スポットに足を運んでみた。
約1万㎡の都有地を事業用定期借地権方式(50年間)により万葉倶楽部株式会社が民設民営する千客万来は、約70の飲食店やショップなどからなる「豊洲場外 江戸前市場」と、温浴・宿泊施設の「東京豊洲 万葉俱楽部」で構成されている。
食楽棟は地下1階・地上3階で、2階は「江戸時代の活気あふれる市場」を再現した「目利き横丁」と「豊洲目抜き大通り」。「目利き横丁」では水産仲卸企業「水長水産」が厳選した旬の食材を使ったメニューの数々を提供し、客は食べ歩きを楽しむことができる。「豊洲目抜き大通り」には、寿司や天ぷらといったなじみの深い料理の店が軒を連ねている。
外国人が集中しているのは、豊洲市場の海鮮を使った寿司や海鮮丼が食べられる3階のフードコートだ。本マグロやウニをこれでもかと盛り込んだ海鮮丼は6980円とフードコートとは思えない高価格。にもかかわらず、外国人が行列している。SNSで「インバウン丼」と呼ばれている所以だ。
メディアでは6000円超えの海鮮丼や3個6000円の生牡蠣に殺到する外国人の姿が頻繁に取り上げられているが、2000円未満で各種グルメを楽しめる比較的安価な店舗、商品も存在している。
広い歩道に面した1階には、3軒のラーメン店や和食店などが並ぶ。例えば本まぐろの旨味を凝縮したスープがウリのラーメン店では、マグロラーメンと海鮮丼のセットが1580円と良心的な価格。しかしこの店は筆者が訪問した2月中旬の時点ではキャッシュレス決済に対応していなかったこともあってか、客は日本人ばかり。
2階の人気店「相馬水産」の一串800円の中トロ串、500円の赤身串に並ぶ来場者の大半も日本人だった。
施設内の高価な海鮮には外国人観光客が、比較的安価なラーメンやテイクアウト商品には日本人観光客が押し寄せるという「経済格差」が垣間見えた。
団体バス駐車場を完備し、はとバスが千客万来内での海鮮バイキングランチを組み込んだツアー(大人10800円)を発売するなど、外国人観光客が気軽に訪れることのできる仕組みが整っている一方、公共交通機関でのアクセスの悪さは以前から指摘されてきた。
徒歩4分の最寄り駅は、新交通システム「ゆりかもめ」の市場前駅。ゆりかもめ以外の交通手段は、東京BRTか都営バスしかなく、極めて不便だ。
インバウンド頼み路線で行くのか、国内のリピーター客獲得に力を入れて行くのか。新施設が「千客万来」であり続けるための戦略が問われている。
健美家編集部(協力:
(おおさきりょうこ))