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トイレの壁が腐った? 結露を知らない入居者と愛ある大家としての対応

赤尾宣幸さん_画像 赤尾宣幸さん 第32話 著者のプロフィールを見る

2021/2/2 掲載

約20年前に競売で買ったファミリータイプの分譲マンション。DIYで愛をこめてリフォームした物件だ。今の入居者さんは家族4人で、家賃は56,500円、ご入居から8年間、滞納もクレームもない、ありがたい入居者さんだ。

■ 「 トイレの壁が腐った 」という連絡

その入居者さんから管理会社を通じて連絡があった。「 トイレの壁が腐って、床も沈む 」そうだ。管理会社が業者と見に行ったところ、「 便器を外して、壁板と床を張り替えなければならない 」という。そんなことしたら10万円は優に超える工事になるだろう。本当にそこまで必要なのだろうかと考えた。

壁が腐る。どういう事なのだろうか。同じマンションにもう一部屋賃貸しているが、そんな話は聞かない。他の物件でも経験したことがない。床は床板の経年劣化かもしれない。築40年近いので、床の劣化はやむを得ない部分でもある。

管理会社が送ってきた写真。窓の下や手洗いの下に黒ずんだ部分があり、化粧ベニヤの表面が浮いているところもある。

こういう場合は単に原状復旧だけではなく、原因を考えて対策を打たないとまた同じ事象が発生する。写真を見て考えた。傷みが激しいのはタンクの手洗いの付近だ。手を洗う時に水が飛んで、壁のベニヤに付く可能性がある。この繰り返しで、黒ずんできて、ベニヤの接着剤が劣化、めくれてきたのか?

そうであれば、水が付いても劣化しにくいクロスを張れば対策できそうだ。浮き上がっている部分をボンドで再度接着させ、パテを打ってクロスを張ればなんとかなるなと考えた。あるいはベニヤを剥がして、石膏ボードに交換してきちんと仕上げてもいい。

入居者さんは「 時間を掛けずにやってほしい 」という。「 見栄えは良くないが、既存の板の上にクロスを張れば、3時間程度で済みます 」と提案、合意を得た。

■ DIYの中身と「 結露 」を知らない入居者

しかし、現場は想定以上だった。窓は閉まっていて、窓ガラス、窓枠ともに結露がびっしり。ベニヤは確かに表面が「 腐って 」いた。ベニヤに穴をあけ、断熱材を確認した。一応、断熱材は入っていた。断熱不足なら、窓上なども同様に劣化しているはずだが、劣化しているのは窓枠の下だけだ。

どうやら断熱材の問題ではない。窓枠をよく見ると、窓枠の結露が垂れて下のベニヤを濡らしている。以上から、窓枠の結露が壁に流れて湿潤状態になって、ベニヤが腐ったと考えた。

とりあえず奥の面だけにクロスを張った。入居者さんに「 とりあえずの処置です。この仕上がりでよければ他の面も仕上げます。2、3日様子を見てお考え下さい 」とお伝えした。床の沈下は部分的なので、床板の劣化と想像された。既存床の上に合板を載せる補強であれば1日で済む旨をお伝えし、どうするかお考えいただくことにした。

また、結露についてご存じないようなので「 できれば窓を開けて換気してください。難しいなら、寝る前だけでもいいので、空気を入れ替えてください。そうしないとカビが発生します。見えないところに発生したカビはあなたの体にも悪いかもしれません。ご自身の健康のためにも換気をお願いします 」とお伝えした。

その後、「 クロスはこれでいいから全面に張ってほしい 」という事になり、それに合わせて床の補修も行うことにした。その日も結露していたが、窓は開けてくれていた。しかし、トイレタンクとその給水管が結露し、床にしずくが落ちていた。

クッションフロアが濡れていて、便器奥の継ぎ目が開いていた。剥がすと便器周りの床板が湿っていた。クッションフロアの継ぎ目から床下に水が入り、湿気で合板が劣化したと考えられた。補修に時間をかけてほしくないというご希望なので、既存の床に合板を敷いて補強した。

■ 入居者さんの責任かもしれないが…

今回の補修の一番大きな原因は結露だ。玄関ドアまで結露でしずくが垂れていた。窓があるのに締め切っており、換気はしていない。しかも洗濯物を室内で干していた。ある意味、入居者さんの責任ともいえる。損害賠償したらどうかという知人もいる。

しかし、愛ある大家としては「 長期入居が王道 」と考える。ここで入居者さんと揉めたり、退去されたりするより、入居者さんから感謝され、長期入居していただく方がお互いに得だと考えた。そこで、今回は無償で対応することにした。

かかった費用はクロス、合板、クッションフロアで5千円程度。最低限のDIYだからそんな費用で済んだし、入居者さんとコミュニケーションも深まった。「 結露が激しいので、できるだけ換気して、タンクの下は受け皿を置くか、こまめに拭くなどしてください 」とさらにお願いした。

ご入居から8年でかなり傷んだが、今回の補修で耐水性はアップしたし、今後は結露に注意していただけるのでもっと長く持つはずだ。

業者の話を鵜呑みにしていたら、入居者さんに長い工事期間でご迷惑をかけたと思う。原因追及はなく、高い修繕費を請求され、結露は改善されず、再発していただろう。愛ある大家として、今回のDIY対応は大正解だったと思う。

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

赤尾宣幸さん

赤尾宣幸さんあかおのぶゆき

福岡県宗像市在住
不動産賃貸業
デイサービス事業運営

FBにて以下のグループを主宰
DIYを楽しむ会
不動産イベント倶楽部
居酒屋セミナー
高齢者向きアパートの会
DIYを楽しむ大家の会

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □1960年
    福岡生まれ

    □1978年
    日本国有鉄道入社

    □1980年
    中央鉄道学園大学課程入学

    □1983年
    中央鉄道学園大学課程土木科卒業

    □1993年
    自己所有マンションを賃貸にして賃貸経営開始

    □1996年
    キリン・ドラフトマスター取得

    □1997年
    日本初の複数のテナントが入るフードコート「小倉食堂」を立ち上げ

    □2002年
    妻の夢実現のためにデイサービスを立ち上げる

    □2003年
    西日本旅客鉄道退社

    □2007年
    介護タクシー開業

    □2009年
    高齢者向きアパート開業

    □2011年
    九州経済産業局 専門家登録

    □2022年
    デイサービス事業と不動産賃貸業を行いながら、自身の夢である「高齢者向きアパートの普及で一人でも多くの人が幸せを感じてもらうこと」に向けて執筆やセミナー等を行っている

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