マテリアルの価値について食や衣類などではエコ指向が進んでいる。
リノベーションやDIYといった「改修」手法による物件の価値向上の流れにもその影響はあるが、そこで使われるマテリアル、建材においてそういったリユース、リサイクルのマインドをつなぐ新たな仕組みがここで紹介するHUB&STOCKだ。
リユース・リサイクルの伸びしろ
近年のエコロジー指向、SDGsの一般化に伴い、食におけるフードロスを子ども食堂などの社会的な解決とともに削減する動きや、衣類におけるリサイクル素材、古着のマーケット化などの、エコロジーマインド自体が市場をつくる動きが大きくなってきている。衣食に加えて住においてはそのような動きがあるだろうか。
例として、リノベーションにおける建築再生や、耐震や環境改修などの長寿命化改修などが思いつくだろう。
「新築」というステータスは現在の再生技術からいえば、技術的、性能的なものではなく、単に履歴や感情の上での話になっている。長寿命化の手法、技術によって、解体して新築する以外にも十分これから使用していくためにひつような空間性、耐久性、環境性能を持った建築を手に入れることは可能なのだ。
しかしながら、そこに改修という工事が行われる限り当然ながら古い素材建材と新しい素材建材交換は行われる。
ここに新たなサービス「HUB&STOCK」がリリースされ、普及を始めているので紹介をしたいと思う。
このサービスは、これまでは捨てられていた建材をレスキューし「アウトレット建材」として販売するものだ。
価格は定価の60~80%OFFで新品未使用の建築資材が入手できる。もちろん、資材はその時々に応じてラインナップは変わるが、品質を備えたものが安価に手に入り、さらに建設の環境負荷を下げることにつながる、という三方良しの事業なのだ。
建材ロスはどこで生じるのか
「アウトレット」という言葉があるように、基本的に発注=出荷と実装のミスマッチがこの「建材ロス」を生んでいる。
建設現場において資材は「足りない」ということはあってはならない。それが起きて再発注をすることは、その現場が止まる、スケジュールが壊れる、ということになる。資材、建材の標準サイズ=定尺(ていじゃく)そのままで使うことはないのもあって、つい余分を見て現場は資材建材を発注することになる。経験として一般におよそ1割から4割程度の余剰発注が行われている。
これら余剰建材、資材はその現場から別の現場で利用されることはなく、廃棄物として処分されてしまう。これは現場経費の会計上、発注されたもの=使用されたものとなってしまうからだ。リサイクル法によりこれら処分にも処分経費がかかる。
HUB&STOCKの仕入れ先は一都三県に所在する20社以上の建設会社であり、HUB&STOCKは各社の現場から廃棄される前に買い取る。それにより処分による環境負荷を軽減し、また安価でそれを一般に提供する、特にリノベーションなどの量的に少量にも対応する販売をおこなっている点が新しいマーケットゾーニングをつくっているといえるだろう。
リノベーションに向けた資材提供
リノベーション、DIYといった現代の空間再生の情報は、そのすそ野の広がりとともに、メインはSNSやweb媒体になっている。このHUB&STOCKもインスタグラム、LINE、そしてwebカタログを二か月ごとに更新している。
これらの商品リストの更新性と、在庫情報の同時性がこういったネットマーケットでは重要だが、ほぼリアルタイムでそれらを把握することができていると聞いている。
リノベーションに向けた、というキーワードがあるのは、たとえば無地クロスのような無難なものももちろんラインナップされているが、仕入れの特性から少量使用の特色のある在庫が見られることだ。
また、その時々の入荷は現場によるのでラインナップ数も一般的な建材カタログほど多くない。このラインナップが多すぎないというところはむしろどれを選ぶかについての判断を早くできる効果がある。建材を選んだことのある方はよくわかってもらえると思うが、建材カタログには「多くの無難」が無数に並んでいる。
ベージュ、という色の意味がゲシュタルト崩壊するほどである。SH-7790とSH-7789の違いなど、並べて見比べなければ決して見分けることができない。結果、無難な無地、無難なクリーム色だったり、10何年以上同じ品番を使い続けたりして陳腐化していく部屋のいかに多いことか。
その点、HUB&STOCKのカタログはいい意味で無難でないものが迷うほどでない数でならんでいるところが良い。おそらくそういったラインナップを形成するようなセレクトをしているのだろう。
リノベーション、DIYにおける楽しさ、価値の根底には、「いまそこにあるものを生かす」という考え方があると考える。その「いま」「そこ」にある材料のリアリティに触発されて生まれる新しい空間づくりにこのHUB&STOCKのサービスがフィットする場面は多いのではないか。
また、実際のリフォームにおいても、そういった前歴や環境負荷軽減のミッションなどのストーリーや考え方が住まい手に対してつながる流れも、それは一つのオーナーからテナントへのメッセージとしてのアピールになることだろう。
リフォーム、リノベーションにもう一歩のアイディアが欲しいときにヒントとして検討してみてはどうだろうか。
執筆:
(しんぼり まなぶ)