中国が不動産不況に陥っている。報道各社は、中国国内の不動産が投げ売りされ、底打ちをする気配が見えないとする。中国の不動産バブルは崩壊するのか。
過去を振り返れば、1992年に故・鄧小平が明確化した社会主義市場経済路線が中国国内の不動産開発を活発化させ、不動産への過剰投資が大都市部を中心にインフレ率の大幅な上昇を招いたことで、インフレ抑制策を実施して不動産開発が一時的に低迷した。そのテコ入れ策として1998年に住宅制度改革を行った。
このテコ入れ策は、個人の住宅取得を促進するためのものだった。住宅制度改革前までは、農村などを除いて低廉な家賃で住宅を実物分配していたが、住宅建設資金が回収できずに慢性的に供給不足になったことから住宅の実物分配が廃止され、代わりに政府は分配住宅の払い下げ、コストに見合った家賃を設定し、住宅補助金の支給を実施した。
中国不動産価格はつるべ落とし
その後の経済成長は目覚ましく、今や中国は世界第2位の経済大国となった。中国の動向次第で世界経済に与える影響は大きい。その大国が今、不動産不況に見舞われている。
不動産価格はつるべ落としの一途をたどる。ニッセイ基礎研究所客員研究員の三尾幸吉郎氏は、「その背景には販売不振がある。2023年の販売面積は1117㎡と、直近のピークである2021年のおよそ6割になっている」と最新のレポートで分析している。
中国不動産の異変は、民間の不動産開発大手の恒大集団を端緒に、碧桂園(カントリーガーデン)が続き、両社とも決算発表を行えない状態に追い込まれている。
カントリーガーデンは、中国最大の不動産開発事業者の一つだが、米国の格付け機関は、「その信用不安は、国の不動産市場や金融市場に波及する可能性がある」と指摘している。
同機関は2022年に3570億人民元(約500億ドル)の売上高を記録したが、全国販売の低迷は、軟調な経済見通し、高い失業率、開発業者の未完成リスクに対する懸念が根強い中で、回復プロセスが長引く可能性があるとし、中国の中堅大銀行12行について、不動産セクターに対する企業向け貸出の不良債権比率は、2020年末の1.9%から2022年末時点で4.4%に上昇したと推計している。
2022年末時点で、カントリーガーデンは銀行などからの借入額は1625億人民元に上り、そのうち72%が設備、投資用不動産、使用権資産、不動産で担保されていたという。
住宅の在庫は積み上がりの一途へ
不動産市況の悪化が底打ちする兆しを見せない中で、銀行や投資家がリスク回避姿勢を強める可能性が高く、デベロッパーの資金調達環境はしばらく厳しい状態が続きそうだ。
2022年以降、中国当局が発表した支援策にもかかわらず、中国の銀行は民間開発業者への新規融資に慎重な姿勢を崩していない。不動産市況悪化に伴い、一般消費者や不動産投資家の心理としては積極的には動くことはない。
このため、住宅市場の活動と住宅価格をさらに悪化させる可能性が高まっている。
前出のニッセイ基礎研・三尾氏は、「不動産バブルがまだ崩壊していないとはいえ、足元の住宅在庫は積み上がっていることで、住宅需要は減少傾向をたどると見られる。このため、不動産業の不振が中国経済全体の成長率を押し下げる状態が長期化する」と予想している。
ただ、多くのマーケット関係者は、日本の不動産市場に与える影響について、直接的に影響するような事態にはならないと予想している。
むしろ、中国経済に向かっていた資金は、そこから撤退して日本に向かう可能性が高いとみている。日本ではマイナス金利が解除されたものの、低金利の水準が当面続くこともあって海外の高金利状態との見合いから日本の投資適格不動産に資金が流れ込みそうだ。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))