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複数の大学が郊外から都心へ!大学の都心回帰進み、賃貸住宅の需要に直結するか。大学ジャーナリストに聞く

不動産投資全般/市況 ニュース

2022/06/17 配信

2021年4月に日本女子大学が神奈川・西生田キャンパスにあった人間社会学部を、創立の地である東京・文京区の目白キャンパスへ移転した。

2023年4月には中央大学が八王子の多摩キャンパス(法学部と大学院)を文京区にある茗荷谷キャンパスへ移転する。2025年4月には、東京理科大が薬学部を、千葉・野田キャンパスから葛飾キャンパスへ移転すると発表している。

上記のように、郊外にあった大学キャンパスがここ4年ほどのうちに、都心回帰する動きがある。よりアクセスしやすい立地に変更することで、志願者数の増加を狙うものとみられる。

もともと大学キャンパスがあった郊外の学生向け賃貸住宅は窮地に陥る可能性もあるのではないか。

逆に移転先のキャンパス近くは賃貸需要が増す可能性もある。そもそも大学の移転の背景には、補助金事情もあるようで、今後も大学の都心回帰の動きは高まるのかどうか気になるところである。そこで大学事情に詳しい大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に話を聞いた。

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「ひるおび!」「ミヤネ屋」などの情報番組でもおなじみ、大学ジャーナリストの石渡嶺司さん。著書は『大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)『就活のワナ』(講談社α新書)など累計31冊、55万部。

少子化でも大学進学率は上昇中。
大学の人気に欠かせないのが立地

少子化やコロナ禍であっても、大学進学率は高まっている。大学進学者数は2004年時点で59.8万人、それが20年には63.5万人、21年62.7万人に。大学進学率では、2004年では42.4%だったものの、20年54.4%→21年54.9%と増えている。

「社会の複雑化や高度化、高等教育無償化法(2019年~)の影響や女性の大学進学率が伸びていることなどもあり、大学進学が一般的になりつつあります。今後もその傾向は高まると考えらます。ただ大学進学率が上がる一方で、短大や専門学校は現在よりも志望者が減るのではないでしょうか」

大学のなかでも、医療系など、進学に有利な学部の人気が上がっているものの、通学しやすい立地にある大学であればそれだけでアドバンテージがあるという。立地の影響を受けた大学の例に、東京富士大学と杏林大学がある。

「東京富士大学は山手線・高田馬場駅から徒歩3分という好立地にあります。2000年代までは低倍率に苦しむ大学でした。それが2010年代から立地の良さなどが見直され、人気が上がり、2004年には32.5だった偏差値は2019年には42.5~45.0まで上昇。コロナ禍でも志願倍率を上げた、数少ない大学(約60校)の1校です。

杏林大学は医学部が有名であり、医学部と保健学部は開学以来ずっと順調に学生を集めています。問題は文系学部である、総合政策学部と外国語学部です。八王子駅からバスで30分のところにキャンパスがあり、立地の悪さという点で相当、損をしていました」

杏林大学に大きな変化が訪れたのが、2016年の井の頭キャンパス移転だ。中央線・吉祥寺駅からバスで約15分の立地に移転し、キャンパスが新しいことも受験生心理に好影響を与えている。

大学移転の背景には法律の変更や、補助金の影響も?
経営の厳しい私大が公立化し、人気を回復する例も

大学移転の背景には、法律の変更や補助金など国や自治体の支援も少なからず影響があるようだ。

「1990年代以前では、大学業界では学生運動対策に加えて、進学率の上昇から『立地が悪くても学生は集まるだろう』という驕りが見え隠れしていました。

しかし、2000年代以降は郊外から都心への移転が進み、2010年代半ばから東京・首都圏の大学入試が激戦になり、もともと立地の良かった大学は、ますます人気になっていきました」

【大学都心回帰の流れ】*****************

●1959年:工場等制限法
→大学の都心での新設を制限
●1950年代~1970年代:大学進学率の急増+学生運動の激化
→都心だと土地代などが高い/学生運動の拠点化を大学経営者が忌避
●1990年代:バブル崩壊/大学進学率も上昇ながら緩やかに/大学冬の時代、と言われ始める
→受験生集めのために大学の都心回帰開始
●2002年:工場等制限法撤廃
→都心回帰へ
●2019年 都内の大学・学部新設規制
→あまり意味はなかった?/首都圏以外は影響受けず

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上記は石渡氏による、大学都心回帰の流れであるが、1959年に出された、大学の都心での新設を制限する「工場等制限法」が2002年に撤廃されたことで大学の都心回帰が進む契機になったとみられる。

地方や郊外では大学を誘致するために、補助金や助成金などの優遇措置もあったようだが、何十年後もその場所で開校していなければならないなどの拘束力はないようだ。

昨今ではまた風向きが変わり、都心にキャンパスを集約させる動きが顕著になっている。

もう1つ覚えておきたいことが、昨今では地方の私大が公立化する動きがあり、公立化することで、志願者数が増加し、人気を取り戻す例があることだ。

「高知工科大学は、2009年に私立大学から公立化し、人気が上がっています。特に地方の私大は、今後、経営が厳しくなることも予想されるため、公立化する動きも増えるのではないでしょうか。公立化することで、大学側は国から補助金などを得やすくなるなどのメリットもあり、学生にとっても、私大よりも安い授業料で通うことができるといった利点もあります」

大学の移転によって、郊外キャンパス近くの学生向けの賃貸住宅のニーズが一気に下火になるかといえば、一概にそうとも限らない。なぜなら、郊外のキャンパスを大学のほかの学部が利用するケースや、キャンパスを医療機関や社会福祉法人などが買い受けて、医療機関などに再利用されることもあり、そこで働く人などの賃貸ニーズが見込めるケースもあるからだ。

大学の移転により、大学近くの賃貸住宅が、安く売りに出るなんてこともあるかもしれない。慎重に、今後どのようにキャンパスが使われるのか、よく見極めたいものである。

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健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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