「ザ・ラグジュアリー・コレクション」が鳥取進出へ
1室6万円以上 コロナ禍収束でインバウンド回復 富裕層狙う
新型コロナウイルス禍が収束してきたのを受け、日本の地方が「熱く」なっている。それを示すのが、各地で相次ぐ外資系高級ホテルの進出だ。
たとえば2026年度には、鳥取市の鳥取砂丘近くに、山陰では初となる「五つ星ホテル」の「ザ・ラグジュアリー・コレクション」が開業予定。九州でも福岡や鹿児島に今年、相次いで高級ホテルがオープンした。
インバウンド(訪日外国人観光客)の回復を見越し、単価の高い富裕層を地方に呼び込んで受け皿になろうと、いち早く動き出した格好だ。人の流れが集中すれば消費や投資が活性化し、雇用や賃貸需要の増加にもつながる。ビジネスチャンスとなりうるので、不動産投資家もこの動きに注目していきたい。
鳥取砂丘近くにオープンするのは、米系の高級ホテルブランド「ザ・ラグジュアリー・コレクション」だ。日本国内では6軒目となる。
鳥取砂丘近くの遊休地へ2026年度にオープン。鳥取砂丘を見下ろす形で、独立した低層4階建ての2棟からなる。部屋の数はスイートを含めて108室。客室単価は、1室6万円以上になるとみられている。一部の部屋には、露天風呂がつく。ホテルからは、鳥取砂丘や日本海の開けた眺望を楽しむことができる。
鳥取砂丘には、「砂丘センター見晴らしの丘」「鳥取砂丘ビジターセンター」「砂の美術館」などの観光施設が並ぶ東側エリアと、キャンプ場や大型アスレチック遊具のある「チュウブ鳥取砂丘子どもの国」「柳茶屋キャンプ場」など、さまざまな活動を「アクティブ」に楽しめる西側エリアがある。
鳥取市は、ホテルの宿泊者や西側エリアの利用者が東側へ簡単にアクセスできる交通ネットワークを整備し、ホテルに設ける砂丘コンシェルジュがネットワークの案内を担当するとしている。
また、同市は、ホテル側が地元雇用を積極的に行うとしており、従業員らが周辺に集まり賃貸需要を生み出す契機にもなりそうだ。
福岡市の複合施設には「ザ・リッツ・カールトン」オープン
複合ビルに入居 スイート含み167室 伝統工芸いかした内装
地方ではこのほかにも、外資系の高級ホテルが続々と開業している。
今年6月、福岡市でオープンしたのは、五つ星の「ザ・リッツ・カールトン福岡」だ。九州で初めての五つ星ホテルとなる。4月に開業した25階建ての複合ビル「福岡大名ガーデンシティ・タワー」に入っている。
10室のイートを含む合計167室あり、6つのレストランとバー、室内プール、スパ、ウエディングチャペル、クラブラウンジが備わっている。ホテル内は、福岡の伝統的な博多織などをヒントにしたデザインが施されている。
福岡は、インバウンドの回復の度合いが日本国内でもとくに著しいという。ザ・リッツ・カールトン福岡を増加するインバウンドの受け皿とし、さらなるインバウンドの呼び込みにつなげていきたい考えだ。
米マリオット・インターナショナルと開発を手掛けた積水ハウスの仲井嘉浩社長は、オープニングセレモニーで「福岡市は世界的な観光地のひとつであり、来訪者が増加して活力が増す中で、九州初の 五つ星ホテル『ザ・リッツ・カールトン福岡』が開業することは、国際都市『福岡』のさらなるブランド向上にも寄与するものだと考えております」とコメントした。
鹿児島には5月、「シェラトン」開業 1泊3万円から
日本の10月の訪日客は251万6500人、初めてコロナ前上回る
同じく九州では、5月、鹿児島市に、鹿児島県で初めてとなる外資系ホテル「シェラトン鹿児島」がオープンした。
市中心部にある複合施設「キラメキテラス」の6~18階に入居している。客室は、スイート10室を含み合計228室で、10タイプのバリエーションを提供。レストラン、バーのほか、温泉、ガーデンチャペルやジムなども備える。1室あたりの宿泊料金は約3万円からだ。
外資系ホテルの進出が話題になるのは、これまで東京や大阪の都市部がほとんどだった。地方へも進出が盛んになってきたのは、ごく最近のことだ。
後押しになっているのは、インバウンドの回復といえる。日本政府観光局(JNTO)によると、今年10月の訪日客数は251万6500人で、2019年同月比べ0.8%増と、初めてコロナ禍前を上回った。
収益計画にシビアな外資系が地方進出を決断したことは、それだけ地方の経済の潜在的な力が強い証拠だといえる。賃貸需要の拡大にもつながっていく話であり、不動産投資家はしっかりアンテナを張っていきたい。
取材・文:
(おだぎりたかし)