天神ビッグバンによって、大きく変貌する街並み
天神交差点から半径約500mを対象とした天神地区再開発プロジェクト「天神ビッグバン」。
福岡市は国家戦略特区による施策や福岡市独自の施策などを1つのパッケージにして、アジアの拠点都市としての役割・機能を高め、新たな空間と雇用を創出することを目指すプロジェクト「天神ビッグバン」を2015年2月に始動。
「天神ビッグバン」の対象となるなるのは、天神交差点から半径約500m(約80ヘクタール)のエリア。プロジェクト開始の2015年2月から2022年5月末の段階で建築確認申請数が59棟、竣工棟数は2022年5月末時点で50棟にのぼる。
2021年9月に第1号プロジェクトとなる天神ビジネスセンターの竣工を皮切りとして、今年6月には福岡大名ガーデンシティに「ザ・リッツ・カールトン福岡」が開業するなど、天神エリアは大きく変貌している。
福岡市民の誰もが知る場所が再開発に
そのような状況の中、福岡県を南北に走る西鉄天神大牟田線沿線の住民にとって天神の玄関口として親しまれてきた西鉄福岡駅ビル、冬のせいもん払いをはじめ多くのイベントで買い物客が賑わう新天町商店街、カルチャーの発信地として若者が集まる商業施設「福岡パルコ」を含む約2.2ヘクタールが「(仮)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」として一体的に再開発される。
新天町商店街商業協同組合、新天町商店街公社、パルコ、西日本鉄道、三井住友銀行の5者は、「天神二丁目南ブロック駅前東西街区都市計画推進協議会」を設立し、再開発への検討を進めてきた。
福岡市が進める再開発促進事業「天神ビッグバン」の容積率緩和などの優遇措置を受けるため、福岡市に計画概要書を提出し、これが受理された。2030年度の開業を目指し、複数街区にまたがり段階的・連鎖的にプロジェクトが進められる。
「(仮)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」の対象となるエリアは、天神ビッグバンの中心となる天神交差点に面した立地で、向かい側には2024年竣工予定で福ビル街区建替プロジェクトが進行するなど、立地だけでなく、天神の顔としての役割も担うロケーション。
西鉄福岡(天神)駅は1日平均の乗降人員が98,680人(2021年度)。平日は通勤・通学、週末は買い物客と、西鉄天神大牟田線を使って、県内各地から多くの人で賑わう。まさに西鉄福岡駅ビルは天神の玄関口だといえる。
新天町商店街を南北に通るメルヘン通りは、毎年7月の山笠の時期には飾り山が設置され、多くの観光客が訪れる。また、テレビやラジオ番組の街頭インタビューでも数多く利用されるなど、市民にとって馴染みのある場所だ。
「(仮)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」における再開発エリアはメルヘン通りを中心として、東側のパルコ本館・三井住友銀行(1936年竣工)、パルコ新館(1976年竣工)、新天町ビル(1968年竣工)、西鉄福岡駅ビル(1961年竣工)を一体化させた敷地面積約7,900㎡の東街区、西側の新天町商店街(1954年~1961年竣工)を敷地面積約5,900㎡の西街区で構成。
現在細分化されている街区を再編し、誰もが憩える空間としての広場の設置、地上貫通通路・地下通路などで安心・安全な歩行者ネットワークの確保、駐車場共用車路の東西接続など、東西街区の共同整備を行う。
さらに敷地の一体化による大型街区化によって、大規模な敷地を活かした施設の導入、老朽化している建物のさらなる耐震性の向上にも取り組む。また、歴史を継承しつつ未来に向けた商店街・商業施設が低層部に形成される。
換気・非接触・身体的距離の確保等による感染症対応や環境負荷低減、まちに潤いを与える緑化、「Fukuoka Art Next」の推進も行い、天神の中心地としての立地ポテンシャルを活かした、新しい文化・芸術を感じられる複合施設を予定している。
市民にとっては慣れ親しんだ街並みも一部で老朽化が目立つなど、その動向が注目されてきた西鉄福岡駅ビル・新天町商店街エリアも、このプロジェクトによって次のステージへと進むこととなった。
西鉄天神大牟田線の始発駅でもある西鉄福岡(天神)駅に直結した立地でもあり、福岡県内から多くの人が訪れるエリア。2030年度の開業予定が今から待ち遠しい。
取材・文:
(たけいやすのり)