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宇都宮の次世代型新交通「宇都宮LRT」が目指すものは?駅東口では大規模再開発も。

都市計画・再開発(地域情報)/横浜・川崎・千葉・埼玉/首都圏 ニュース

2022/06/10 配信

北関東の主要都市栃木県宇都宮市で次世代型の路面電車、宇都宮LRTの建設が2023年春の完成を目指して進んでいる。これに呼応するようにJR宇都宮駅東口では大規模再開発も行われており、駅も含め、街の風景は大きく変わりそうである。

完成は1年遅れて2023年3月

雷をイメージしたというビビッドなイエローが目を惹く
雷をイメージしたというビビッドなイエローが目を惹く

宇都宮市がLRT整備に向けた基本方針を策定したのは2013年3月。建設工事は2018年6月に始まっており、2021年5月には黄色と黒の鮮やかな車両がお披露目させてもいる。当初完成予定よりは1年遅れたが、2023年3月には完成が予定されている。

宇都宮駅東口から工業団地などへ向けて走る路線
宇都宮駅東口から工業団地などへ向けて走る路線

運行ルートは、JR宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地までの14.6kmとなっており、沿線には清原工業団地、芳賀工業団地、芳賀・高根沢工業団地に加え、作新学院大学や栃木SCのホームスタジアムであるグリーンスタジアム、現在戸建てに加え、アパート、マンションなどの開発が進む住宅地などもある。

もちろん、農地がある地域も走っており、そうした地域では利便性の向上により、住宅ニーズが高まるであろうことも期待される。

計画概要。当初予定から予算がアップ、一時、問題とされた
計画概要。当初予定から予算がアップ、一時、問題とされた

よく言われるのはLRT開通はこの工業団地へ向かう渋滞解消のためということ。実際、これらの工場へ鬼怒通りでは鬼怒川を渡る柳田大橋の東側を先頭に数kmに渡って渋滞が発生。空いていれば20数分の距離に1時間かかることも少なくないとか。

それが30分ほどで結ばれるとなれば、車から乗り換える人もいるだろう。現在は全線最高時速40kmとなっているが、いずれは最高時速の引き上げの可能性もあると言われており、となると車よりも早い乗り物になるかもしれない。

市内に新しい軸を作ることで公共交通を再編

だが、宇都宮市のホームページによるとそれだけがLRT導入の目的ではないという。市ではバスや鉄道、デマンドタクシーなどといった現在の交通手段に次世代型路面電車電車LRTを加えることで、バスなどの他の交通手段も便利になり、誰もが快適に移動できる公共交通ネットワークを実現したいと考えている。

それなら既存のバス路線を活用すれば良いと思う人もいるだろうが、宇都宮市はこれまでバス路線の利便性向上などに注力してきたものの、バスの利用者は減る一方だった。

しかし、移動時間の効率向上、外出機会の増加で経済の停滞を防ぐためにはなんらかの手段が必要で、それがLRTなのだという。

というのはLRTにはバスよりも時間通りに走り、100%バリアフリーであるなど優れた点がある。それによって多くの人が現在車で移動している宇都宮市の東西方向に公共交通の軸をつくることで、そこを走っていたバスの一部を郊外に割り振ることができ、路線バスの本数やコースを増やすことができる。

つまり、LRTで新しい軸を作ることで、それをてこに市内の交通事情そのものを変えるという計画というわけである。

本当に渋滞解消に繋がるか

ただ、いくつか、懸念も指摘されている。

まず、渋滞は本当に解消されるかという点。LRTは宇都宮市の中心部から郊外を繋いでいるが、工場団地に勤務する人は必ずしも市中心部に住んでいるわけではない。LRT沿線に住んでいる人は利用するとしても、それ以外の人が相変わらず車通勤を続けるなら根本的な渋滞解消にはならない可能性もある。

LRTを軸としてそこにバスを接続、利便性向上を図るためには乗り継ぎがうまくいくようにしなくてはいけないが、それがうまく行くかどうか。

仙台市では地下鉄東西線開業時に市中心部へのバス乗り入れを減らそうとしたが、沿線住民の反対で大きく減便することができなかった。これまで直通で行けたところに乗り継ぎが発生する面倒のを嫌う人が少なくないのである。

もうひとつは現段階では市の中心部である駅の西側にはアクセスしていないこと。

宇都宮市中心部はJR宇都宮駅と東武宇都宮駅に間に広がっており、栃木県庁や宇都宮市役所はいずれも東武宇都宮駅に近く、中心となっている商店街も同様。ここを繋いだほうが市としての交通利便性は大きく向上しそうだが、現時点では整備に向けて調査中となっている。

現在開業に向けて整備されているエリアに比べると市街地でもあり、費用、問題も多いはず。不安を感じる向きがあるのは当然かもしれない。

東口では約2.6万㎡で大規模な開発が進行中

風景を一新する規模の開発が進行している
風景を一新する規模の開発が進行している

一方で東口側ではこれまで駐車場などに使われてきた約2.6万㎡を利用、「宇都宮駅東口地区整備事業」が行われている。

これはホテル2棟(ただし、うち1棟の計画は白紙に)、コンベンション施設、シェアオフィスに分譲マンション、駐輪場、駐車場、商業施設、医療機関からなる複合開発で、すでに高度専門病院である宇都宮脳脊髄センター・シンフォニー病院は2021年12月に開業、駐輪場は2020年から稼働している。

交流拠点施設、交流広場の完成予想図。隈研吾氏が関わっている
交流拠点施設、交流広場の完成予想図。隈研吾氏が関わっている

今後は2022年5月竣工予定のプラウド宇都宮を皮切りに、商業施設宇都宮テラス、カンデオホテル宇都宮(いずれも2022年8月開業予定)、交流拠点施設ライトキューブ宇都宮、交流広場宮みらいライトヒル(いずれも2022年11月開業予定)と続々とオープンしていく予定。

LRTが走り出す頃には新しい宇都宮市の顔が誕生しているという計画で、そうなれば街の風景は大きく変わる。東口側に新たな拠点が生まれるかどうか、しばらくは変化に注目したいところである。

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健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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