個性的なショップが軒を連ねる商業地として発展
東京都目黒区に位置する自由が丘駅は、東横線と大井町線が乗り入れるターミナル駅。目黒区自由が丘と世田谷区奥沢にまたがる繁華街の中心地であり、駅の周辺には商業施設、さらには閑静な住宅が広がる人気のエリアだ。
1980年代はファッションや雑貨のまちとして知られるようになり、日本で初めてモンブランを提供した「東京自由が丘 モンブラン」をはじめとする老舗があり、2003年には「自由が丘スイーツフォレスト」がオープンするなど、スイーツのまちとしても人気。美容室も多く、まち歩きをしながら買い物やグルメが楽しめるのが特徴で、「自由が丘」ブランドを確立している。
一方で、商業エリアの道幅は狭く、建物の老朽化も進んでいる。近年は再開発の波が到来しており、2023年10月には大丸ピーコック跡地にイオンモールの商業施設「JIYUGAOKA de aone(自由が丘デュ アオネ)」がオープン。
かねてより進められていた「自由が丘一丁目29番地区第一種市街地再開発事業」も本格化し、昨秋からは同地区再開発組合および参加組合員のヒューリックと鹿島建設が複合施設の新築工事に着工した。
同事業は地区内の権利者が中心となり共同建替えを検討し、2017年5月に再開発準備組合を設立。2020年の都市計画決定を経て2022年には再開発組合が設立され、同年3月から既存建物の解体工事が進められていた。
場所は駅前の好立地で施行面積は約0.5ha、高さ60m、地上15階・地下3階の複合施設が建つ。延床面積は約4.6万ha、低層部は商業・業務施設、中高層部は賃貸住宅となる予定だ。
周辺に高層ビルはないので、ランドマーク的存在になるだろう。1階の南北には貫通通路、敷地周辺には街路樹を植栽した歩行者通路、敷地内には「にぎわい環境空間」も整備し、まちへの回遊を促す歩行者空間を整備する。
今回の事業の狙いは、土地の合理的・健全な高度利用による建築物の不燃化・共同化を図り、地域の安全性・防災性の向上に寄与する地区施設を整備するとともに、商業・業務・住宅機能を導入することで、魅力ある駅前市街地を形成すること。今後は2026年度の竣工を目指す。
自由が丘駅前では複数の再開発プロジェクトが進行中
目黒区ではこれまで、自由が丘駅前の交通環境や防災性の向上を図るため、「東京都における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)」において優先整備路線に選定されている補助127号線の整備と一体的に進めるまちづくりを推進。
自由が駅前西および北地区において、自由が丘のまちづくりの会社である「都市再生推進法人 株式会社ジェイ・スピリット」と協働し、まちづくり活動を支援してきた。この流れを受け今回の事業も決定したが、今後は同じく駅前広場に隣接する西地区・北地区でも大規模な再開発が行われる方針だ。
自由が丘は文化性・ファッション性に富んだ店舗が多く、落ち着きがあり回遊性のある商業地として発展してきた。一方で、先述したように道路が狭く歩行者と自動車の交錯や路上での荷さばき車両による混雑、駅周辺の建物の老朽化は喫緊の課題となっている。
一連の再開発を通じて安全安心なまちに更新することで、まちの魅力はさらに高まり、多くの人が集うエリアになっていくだろう。近隣には高級住宅街が広がるが、その付加価値も高まる可能性がある。
ちなみに、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で自由が丘駅周辺の賃貸マンションの賃料は3.73%、中古マンション価格は10.55%上昇している。
どちらも東京都の変動に比べるとやや低めの水準だが、もともとの水準が高いので高値どまりというのが実情ともいえる。だが、駅前の景観が変貌し住宅需要が増すなら、今後の上昇幅に変化が現れるかもしれない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))