今日は出張中のカフェでフルーツサンドを片手にこの文章を書いています。
それにしても今回で16話になるわけだけど、こんな1ミリも不動産投資の勉強にならない記事を読者のお前らは本当によく読んでいるな。
この文章を読むことで確実に人生を無駄にしていることをもっと自覚してほしい。このクソ文章にコラムとしてお金を払っている健美家編集スタッフもどうかしていると思う。
こんなゴミコラムを読んでいる読者も編集スタッフも本当に愛してる。
いつもありがとう。
■大人になってからこんなに怒られることってありますか、この短期間に
新築アパートを建てるために、古いアパートと戸建付の土地を買い、解体工事を進めていたのに、解体業者がなんと市役所への届け出をおらず、参ってしまった、というのが、前回までのあらすじ。
市役所ではこっぴどく怒られた。
なにせ届け出もしないで解体工事をしてしまったのだから。
俺は「2度とやりません」という顛末書を市長宛に書かされた。
顛末書なんてサラリーマンの本業でも書いたことないわ。
しかも、俺の落ち度ってなんなんだよ・・・。
解体屋さんが届け出を出してないって言ってくれたら俺が初めから出しにいくのに「出した」と嘘を疲れたら防ぎようがないわ。
本当に出したかどうか市役所に電話確認するなり、受領印をもらうべきだったのか。
そこまで人を疑わないとこの業界ではだめなんだろうか笑
幸い事故がなかったから、俺への処罰はなく、おおめに見てもらえたけど、解体業者は罰金を払ったかもしれない。
実際におっさんが罰金を払ったかどうかはわからないけど笑
あのおっさんのことだから逃げ切った気がする笑
結局、解体工事は監理会社としてちゃんとした免許をもっている会社に間に入ってもらうことで続けることができた。いままでの解体業者はその監理会社の下請けという立ち位置で届け出を出した。
最初は「期限を過ぎているので受け取れません」って市役所に言われた笑
「届け出を受け取れない」ってなんだよ笑
結局受け取ってくれたんだけど。
一応説明すると、もともとの建築請負契約を結ぼうとしていたあの羽◯研二社長の工務店と解体工事の前に「解体工事の契約」を結んでいたことで助かったのだ。
途中までなんの監理もしてくれなかったけど、監理料を払うことで間に入るのを引き受けてくれた。
そもそも500㎡未満は届け出がいらないとかなんとかネットで見たことがあるのだけど、本当のところはよくわからない。
かなりイレギュラーなことなのは間違いないし、もっと思い処罰を受けていてもおかしくなかった。なにせ届け出を出していない状態で工事を開始し、足場が倒れて住民から苦情の嵐だったわけなので・・・。
このあたりはちょっと書けないこともあるのだけど、大人の事情ということであまり詮索しないでください笑
■解体現場へ足を運ぶ運ぶ
そんなわけで役所への対応はカタチとしては整ったのだけど、近隣住民との闘いはまだまだ続いていた。監理に入ってくれた工務店の社長も毎日現場にくることはない。
一応「水を撒け」とかいろいろな指示はしてくれるのだけど、言うことを聞くのは最初だけで、相変わらず騒音は続いているし、水を撒かないので粉塵が舞う現場である。
俺は地主の家に呼び出されては謝り続ける日々が続いた。
地主の鉢植えの葉っぱを見せられたんだけど、粉塵が舞うので葉っぱが真っ白になっている。
「こんな状況だから外で洗濯物を干せないのよ」
俺はただただ頭を畳にこすりつけて時間がすぎるのを待った。謝り過ぎておかしくなりそうだったので、頭の中ではエロいことを心が壊れるのを防いでいた。
この文章を読んでいる人の中にはサラリーマンも多いだろう。上司や取引先に怒られている時は眉間にシワを寄せて唇を噛む表情で謝りながら、頭の中ではエロいことを考えるのをおすすめする。
しかし、いくらエロいことを考えたとしても事態は全く変わらない。
俺は現場のおっさんたちが全然水を撒かないので、自分で毎日出勤前に水を撒くことにした。
幸いコロナのせいで時短勤務になったので、出勤前に水撒きをできる時間ができたのだ。コロナのせいで建築費が高くなったけど、コロナのお陰で水を撒くことができたのである。
世の中うまくできている。
朝、解体現場に直行するともう工事は始まっている。
この人たちはいい加減だけど朝の作業開始は早いのである。
世の中にはFIREだなどと言って働かない人がいるというのに、朝早くから働くこのひとたちは人間としての芯の部分は案外まともなのかもしれない。
ショベルカーがコンクリートを破壊する場所をめがけて俺が放水をする。
ショベルカーが別の場所へ移動するとしつこく追尾して水を撒く。
ホースから放たれる水が陽光に煌めいて小さな虹ができていた。
俺が毎日水を撒いている姿を地主たちが遠目で観察をしていた。
そんな俺の姿を毎日見たせいか、苦情の電話も鳴らなくなった。
現場のやる気ない作業員も、俺にばかりやらせると申し訳ないと思ったのか、少しずつ水を撒いてくれるようになった。
俺の靴は毎日現場に通っているうち、粉塵でめちゃくちゃ汚れてしまった。
建物がすべて壊れても瓦礫の山がのこる。
なんとか解体が終わり、業者は重機をつかってざっくりとゴミを選り分けていた。
鉄は鉄で集めて売ると儲かるらしい。
木材は手作業でトラックに投げ入れた。
地面に落ちている木材をトラックへ投げるとトラックの荷台にいる人がそれを拾って沢山詰めるように荷台の上に整理して積んでいく。
しゃがむ、木材を掴む、投げ入れる。
しゃがむ、木材を掴む、投げ入れる。
小さなアパートと、豪邸1個分の木材である。途方もない量だった。
木材以外のゴミは袋に詰めていった。
袋の口をあけておくとショベルカーで器用に袋の中に入れていく。
袋がいっぱいになると口を結んでまた次の袋へという具合に作業が進む。
この原稿を書いている2023年現在、解体工事はこれを含めて3回お願いをしたけれど、ほとんどの不動産投資家は更地になった現場しか見てないんじゃないだろうか。
通常は解体現場に張り付かれると業者としては嫌なんだろうけど、俺が働くことで地主からの冷たい視線やクレームを逸らす効果があることを解体業者理解しているのか、文句を言われることもなかったし、なんなら気さくに話しかけてくれた。
解体工事の社長は俺がいつもやりとりしている人以外にもうひとりいた。
この写真左上の、ショベルカーに乗っている人がそうだ。
どうやら下請けらしい。
今回のケースだと孫請けになる。
毎日解体現場へ出勤(?)する際に、カップラーメンとコーヒーの差し入れをしていたおかげだろうか。
俺は作業員と徐々にうちとけてきた。
東北の方で働いていたけど大阪に戻ってきた仕事のできるお兄さん。この人が現場では社長の右腕のような存在である。日本中をフラフラして金がなくなったら日雇い作業をする生活を行っているらしい。
すぐに楽な仕事をしようとする”チョビ髭”はよく観察していると、できるだけ力を使わなくて済む仕事ばかりしていた。水を撒く仕事が楽だとわかったのか、俺が出勤(?)すると俺より先に水を撒いていることがあった。
ただ、水を撒くシーンではない時まで水を撒いているので現場の孫請けの社長によく怒鳴られていた。そんなときはへへっと笑いながら当たり前のように水を撒くホースを俺に手渡してきた。
「へへ」じゃねーよww。本来、お前らの仕事なんだよ笑
”じぃ”と呼ばれている腰が直角に曲がっている老人はチョビ髭とは真逆で武闘派である。腰が直角に曲がっているのだからそれこそ楽な仕事をやればいいのに、瓦礫拾いとかしんどいことをやろうとする。
直角に曲がっているから地面に落ちている瓦礫は拾いやすいのだが、そのままトラックを見もしないで瓦礫をトラックに向けてぶん投げるので危なかった。
「あぶねーだろ!じぃ!」と荷台の兄ちゃんが怒鳴っているのだが、じぃは耳が聞こえないのか口が聞けないのかあるいはその両方なのかわからないが、返事もしないで瓦礫をノールックで投げ続ける。
ある土曜日の昼時に俺がいつものように水を撒きにいくと、作業員の人たちが昼飯を食べていた。
社長が大声で誰かと電話している。
社長「オー!わかった。次の土曜やな。こっちの現場ももうすぐ終わるからそっち行くわ。そっち行くけどワシはコレラやぞ。ガハハハハ」
現場の作業員も釣られて笑う。コロナじゃなくてコレラだと言っているのはマジなのか、冗談なのかわからない。
雑なひとたちである。でもどこかその雰囲気は温かい。
社長は電話を切ると俺に気づいて、手を挙げて挨拶をしてきた。
俺も水を撒きながらペコリと会釈をする。完全に従業員である。
社長がよたよたと立ち上がり、解体現場の奥の方へ歩いていく。
何をするのかと思ったら、おもむろにズボンを下ろして放尿を始めた。
黄色い液体がキラキラと輝きながらひと筋の放物線を描き、瓦礫の山の中へ消えていく。
社長がコトを終えたあと、俺はその場所へ念入りに水を撒いた。
シュボボボボとホースから吹き出た水は俺の怒りを象徴しているようだった。
考えてみたら現場には仮設トイレが置いていなかった。
みんな解体現場で直接用を足していたのだろう。
ようやく解体が終わったのは4月の終わりころだった。
約一ヶ月という長い闘いだったのだ。
最後にひとこと解体業者に言いたいことがあるんだ。
お前が立ちションした土地は、俺の土地なんだけどな!!!
もうええわ
絵:エフジェエ