今回のコラムも病室で書いています。今回、右足を手術したのですが、昨年11月に手術した左足より半月板がボロボロになっていたようです。脛骨骨切り手術の痛み自体は左足の時よりも良好です。
病院では新聞を読んだり、本を読んだりして過ごしています。北国の雪解けが始まる4月ころからは野外で軽いウォーキングを始められると期待しているところです。
現在の病室は暗かった前回と違い南東向きの窓の側にベットがあり、晴れの日の午前中は燦々と光が差し込んできます。その時間帯は穏やかな気持ちになり、病気を克服しようと前向きな気持ちにもなれます。
北国の人間に太陽の光は最高の栄養剤だと感じる次第です。ファミリー物件を新築するなら、全戸日当たり確保して南東向きで作りたいですね。( 理想論ですが、そう思い続けたいです )
さて、前回のコラムの最後で、オイラの今年の主題として以下の4つを記載しました。
1)貨幣価値の下落に対応できる投資スタンス
2)金利上昇に対応できる投資スタンス
3)資産価値が維持できる投資スタンス
4)安全安定な投資スタンス
今回のコラムはこの4つのうちの前半2つについて、オイラの頭のなかで深掘りして書いてみたいと思います。
■ 10年の固定金利が足を引っ張ったデフレ時代
1)の貨幣価値下落について考察します。多くの方は知らないと思いますが、日本ではバブル後にデフレとなり、それ以降、「 キャッシュイズキング 」の時代が長らく続きました。
オイラも28年前に借金をして買った1棟目では、デフレの恐怖を体感しました。この恐怖感はリーマンショック後に不動産を購入した人にはなかなか実感として伝わらないと思います。
1棟目を例えとして単純化して言えば、5,000万で購入した不動産が毎年10%価値が下がるのに対して、元本は5%しか返済出来ないという状態が続いたわけです。
28年前のオイラは利回り10%、価格5,000万の中古アパートに対して、1,500万( 30% )の自己資金を投入し、借入3,700万円、金利4.5%、返済期間17年の条件で融資を受けてそれを購入しました。
元利均等払いで毎月26万の返済額でしたが、その返済内訳は金利が半分以上の14万円弱、元本は12万円強の支払いという内訳でした。つまり、年間の元本返済は150万円弱でした。
5,000万の不動産価値が10%下がるとしたら、500万の価値が減少しますが、元本返済は150万しか進んでいません。( 1年経過して4,500万の価格の物件に対して4,850万の借金があることになります )
これは、自己資金が30%も入っていての話ですから、フルローンだとしたら更に恐ろしいことになります。
次年度に4,500万の不動産の価値がまた10%下がれば、4,050万になります。450万も不動産の価値が下がったのに元本返済は155万です。元利均等なので元本返済額は年々増えて行きますが、金利返済の方が多い状態にしばらくは追いつきません。
( ざっくりとしたイメージをお伝えするための話で正確な数値ではないことをご理解ください )
当時、発表される路線価、公示価格は下がり続けていました。不動産価格が下落している証しですから、毎年、新聞紙面に掲載される価格を見ると憂鬱な気持ちになりました。
どこまでも下がり続ける不動産価格に、初心者だったオイラは、自ら選んで踏み出した不動産投資は間違いだったのだろうか? どうなってしまうのかと、先の見えない恐怖をひしひしと感じたものでした。
この頃は不動産投資仲間もおらず、その恐怖は一人で受け止めて消化しなければなりませんでした。邱永漢さんの本から「 明けない夜はない 」との一文を見つけ、折れそうな心の拠り所にしたものです。
今のオイラの姿を見ると想像できないかもしれませんが、苦しい苦しい時代を乗り越えてきました。そのおかげで現在があります。
これがデフレの怖いところですが、5年継続して不動産価格が10%づつ下がった場合、5,000万の不動産が5年後には2,950万になります。その時の残債は2,886万ですから、ほぼ不動産価格と残債が同じになります。( 単純にするため不動産価格と不動産価値とは別な話として書いています )
最初に投下した1,500万の自己資金分がわずか5年あまりで消滅してしまったのと同義です。実際に1995年から5年経過した2000年当時の市況で売却したならば、2,950万円程度しか売れなかったでしょう。
借入時、オイラには先を見る力がなく、銀行員に勧められるがままに10年間の固定金利を選択しました。その結果、現金価値が上がる( 資産価値と相対的にという意味で )につれて下がってきた低金利を使う事ができなかったのも、苦しい経営に拍車をかけました。
もしも変動金利で借りていれば、下がっていった金利が返済を助けてくれたはずです。そうなれば、もう少し不動産価格の下落にも耐性を持つことができました。
■ インフレ時代の金利対策
この先、政策金利が上がる( 貨幣価値が下がることと同義 )とすると、長く持つつもりの物件は今のうちに長期間で固定しておくのがいいかもしれません。それがインフレ時代に向かう時のお金の借り方だと思います。
全部の借入を固定にできるわけでもありません、変動しか選択のない金融機関もあります。固定にするための費用が多額ならば、変動のままにしたほうが良い場合もあるでしょう。
また、固定金利に変更した後で売却をした場合は法外な違約金を請求される可能性があるので、売却するつもりで買った物件ならば、変動のままが良いでしょう。
これも所有物件のポートフォリオ次第ということです。売却や持ちきりなども含めた将来戦略が大いに関係してきますから、計画的に進めていくことが重要です。
オイラ自身は全体借入の3分の1程度が固定金利です。しかし現在、コストがかかっても全体の半分程度まで固定金利に変えることを検討しています。
と言いつつ、いまだ日銀が緩和で粘っていますし、政府も既発国債の暴落は避けたいでしょうから、急激に金利が上がる可能性は低いとも考えられます。
過去の歴史では第一次大戦後のドイツや戦後の日本のようなハイパーインフレがありましたが、当面は国債のデフォルトも考えられませんから、急激な金利上昇を想定するのは現実的とはいえないでしょう。
しかし、政策的に無理に抑えこんでも、オイラには「 金利は上昇したがっている 」ように見えます。事業計画上、ある程度の金利上昇を見ておくことに越したことはないと考えます。
■ 日本円の貨幣価値低下への備え
話は変わりますが、オイラの自宅の今年1月のガス料金( 12月利用分ですね )が昨年1月請求分の1.7倍くらいの金額で請求がきていました。
普段の生活で使うガソリン、灯油、電気料金、ガス代、食品、輸入頼みの工業金属類、輸入飼料、全ての物の価格が上がっています。資源インフレですので日本円の相対的な貨幣価値は既に下がっているはずです。
ここに円安も絡みます。日本国内でお金を使う時よりも、海外に出て円を使う時の方が、さらに円の実力の変化を実感することになるでしょう。
インフレはデフレ時とは逆に現金の価値が減価していきますから、インフレ耐性の高いものへ交換しておくことも金融資産全体のポートフォリオを守るため必要な手当だと思います。
対策として、低金利・長期固定で借入したお金で不動産を買う、コツコツとドルコストで金を買い続ける、日本のなかでもインフレに強い会社の株式を買う、ドル建てで米国株・米国債券を買うなどをある程度分散してやっておくと心の安定剤になるかもしれません。
現預金の一番良い使い道は、今までのオイラであれば絶対に考えなかった「 借入金の繰り上げ返済 」になるかもしれません。( そうならないことを希望しますけれども… )
今日は(1)貨幣価値の下落に対応できる投資スタンスと(2)金利上昇に対応できる投資スタンスについて病室で考えたことを書いてみました。
次回は(3)資産価値が維持できる投資スタンス、(4)安全安定な投資スタンスについて考えてみます。