確定申告の作業をしているなかで、不動産の売買契約書に印紙が貼っていないケースが見受けられました。今回のコラムでは、印紙が貼っていないとどうなるのか。印紙税を節税する方法はあるのかについて、解説したいと思います。
1.印紙税とは何か
印紙税とは、不動産売買契約書や領収書等の一定の文書( 20種類 )を作成した際に課税される税金です。納税方法は、作成した文書に決められた金額の収入印紙を貼って、消印(文書と印紙の彩文とにかけて署名又は押印すること)をすることで納付が完了します。
納税義務は文書を作成した時に成立し、その文書の作成者が納税の義務があります。
※不動産売買契約書や請負契約書に貼る印紙の額はこちらをご参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
2.収入印紙を貼らないとどうなるのか
収入印紙が貼っていない契約書であっても、その効力は有効です。ただし、収入印紙を貼らないと、罰則があります。
<印紙を貼っていない場合>
その納付しなかった印紙税の額と、その2倍に相当する金額との合計額( すなわち印紙税額の3倍 )に相当する過怠税がかかります。
ただし、税務調査等により過怠税の決定があることを予知されたものではなく、かつ、作成者が自主的に納付していない旨の申出( ※ )を行った場合は、納付しなかった印紙税の額とその10%に相当する金額との合計額( すなわち印紙税額の1.1倍 )の過怠税になります。
(※)印紙税不納付事実申出書
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/inshi/annai/pdf/23120080.pdf
<消印がない場合>
消されていない印紙の額面金額に相当する金額の過怠税がかかります。この過怠税は経費計上をすることができませんので、注意が必要です。
( 2倍や10%部分だけでなく、もともと収める印紙金額も過怠税になります )
3.印紙税を節税する方法はあるのか
印紙税を節税する方法について、紹介します。
( 1 )契約書の正本を1通のみ作成する
印紙税は、作成された文書に対して課税されるものであり、同一内容の文書を2通作成しても、それぞれの文書が契約の成立を証明するものであれば、それぞれが課税文書として印紙税がかかります。
コピーした文書は、単なる写しにすぎないことから、課税文書には該当しないことになります。契約書を1通、コピー1通作成した場合、正本1通のみに印紙を貼ればよいことになります。
ただし、契約書のコピーであっても、下記の要件を満たすものは課税文書として扱うため、印紙が必要です。
@契約当事者の双方又は一方の署名又は押印があるもの
A正本等と相違ないこと、又は、写し、副本、謄本等であることの契約当事者の証明( 正本等との割印を含む )のあるもの。( ただし、文書の所持者のみが署名・押印、証明しているものは課税文書に該当しません。)
印紙税の節税という観点からは、コピーは有効かと思います。しかし、将来的なトラブルになった場合の裁判上などの証明力になると、コピーよりも正本の方がより証明力は高いと言えます( コピーは改ざんの可能性があるため )。大事な契約書は原本を手元に置く方が安心です。
( 2 )課税のものと課税対象外のものを区分する
領収書に貼る印紙は、営業に関しないものは非課税となっています。自宅を売却した場合に、受け取った売買代金は、営業に関しないものになるので、領収書に収入印紙を貼る必要がありません。
それでは、賃貸併用住宅を売却した場合の領収書はどうなるのでしょうか? 賃貸部分と自宅部分を、内訳金額を記載するなど、明確に区分した領収書を発行すれば、自宅部分に係る領収金額には、印紙税がかからないことになります。
( 3 )消費税の課税事業者の場合は、消費税を別で記載する
消費税の課税事業者が、不動産売買契約書、請負契約書、代金の領収書を作成する場合に、消費税額等が区分記載されているとき又は、税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、消費税額等が明らかとなる場合には、その消費税額等は印紙税の記載金額に含めないこととされています。
( 例 )
請負金額 1億800万円( 消費税額等800万円を含む )
⇒区分されているため1億円が記載金額として3万円の印紙が必要になる。
請負金額 1億800万円( 税込み )
⇒区分されていないため1億800万円が記載金額として6万円の印紙が必要になる。
請負金額 1億800万円( 消費税額等800万円を含む )
⇒区分されているため1億円が記載金額として3万円の印紙が必要になる。
請負金額 1億800万円( 税込み )
⇒区分されていないため1億800万円が記載金額として6万円の印紙が必要になる。
なお、消費税の免税事業者が売主となる場合の売買契約書や領収書は、消費税を納めないため、区分していても消費税を含めた総額が記載金額になります。
( 4 )国外で契約書を作成する
印紙税法は日本の国内法ですから、その適用地域は日本国内に限られます。
国税庁のホームページにも次のような記載があります。
『 課税文書の作成が国外で行われる場合には、たとえその文書に基づく権利の行使が国内で行われるとしても、また、その文書の保存が国内で行われるとしても、印紙税は課税されません。』
契約書の作成が国外で行われたことの証明は残しておく必要があります。次のような措置を取っておくとよいでしょう。
@契約書上に作成場所を記載する。
⇒署名押印の下に、「 ○○にて調印 」と記載するなど。
A署名押印をしている現場の写真などを日付入りで残しておく。
⇒場所や日時を証明できるようにしておく。
⇒署名押印の下に、「 ○○にて調印 」と記載するなど。
A署名押印をしている現場の写真などを日付入りで残しておく。
⇒場所や日時を証明できるようにしておく。
たかが収入印紙ですが、高額の不動産売買になると、収入印紙も高額になります。知っているのと知らないのでは、損をすることもあります。
不動産を購入するときのご参考人になれば幸いです。