不動産投資にまつわる書籍は実に数多く存在する。どんな本を読むべきかは手に取る人の属性や目的にも依るが、「不動産投資オススメ書籍」として頻繁に名前の挙がる、いわゆる”名著”というものがいくつか存在する。
そのひとつが『Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて（技術評論社）』という書籍だ。個人投資家でありながら100億円を超える資産を運用している著者の玉川陽介氏が自ら開発し、実務で運用している収益計算Excelシートがなんとダウンロード特典として付属している。
その完成度の高さは多くの不動産投資家に好評を博しており、物件購入判断時の収支シミュレーションや融資申込時の提出資料として発売から6年経過した今なお愛用され続けている。著者が最近とある地銀の担当者から聞いた話では、融資申込を行う人の実に半数がこのExcelシートを収益試算の資料として提出しているというから驚きだ。
今回は、そんな名著の続編としてこの度発売された『Excelでできる不動産投資「資産管理」のすべて（技術評論社）』という書籍を紹介する。
10年で100億を運用した上で辿り着いた不動産投資の結論
成功に必要なのは、良い物件を買うことではない
本書のまえがきにおいて著者の玉川氏は、10年で100億円以上の不動産を運用する過程で約70社の金融機関とやりとりをした上で「不動産投資は、不動産そのものよりも金融機関との関係性が重要である」と結論づけている。
長期保有の賃貸業として成長するためにはいかに金融機関からの信頼を得るかが鍵だが、現実には多くの入門者が数億円までの規模で頭打ちとなり、購入意欲はあっても金融機関の支援を得られずに買い進むことができていないと著者は語る。
本記事をお読みの不動産投資の皆さんのなかにも、数棟買い進めてきたけど、なかなかこれ以上進めず”天井感”を憶えている、という方も居るのではないだろうか。
賃貸業が一定規模を超えてくると、金融機関からは「多額の運用を任せられるのか、優れた取引先であるのか」ということを問われる。そうなってくるとお金を借りるというよりは、金融機関から資金の預託先として適切であると認められ、協賛や投資を集める感覚が近いという。
では、どうしたら金融機関から優良先と認められるのか。本書では必要な要素として以下のように定義し、それぞれについて詳細に解説している。
①金融機関の仕組みと融資審査に対する理解
金融機関の思考を理解し、融資の基本ルールを抑えた上で金融機関ごとの得意メニュー、融資枠に当てはまる案件を用意して持ち込むことが大切。
②融資を意識した財務開示
決算書だけでは保有物件一覧、入居率、修繕履歴など賃貸業に特有の情報が伝わらない。必要な情報を網羅した財務資料を提供することで融資審査が効率化し、融資獲得にプラスに働く。
③税務や会計についての専門知識
金融機関との折衝において自社の収入、経費等について適切に説明できることは当然に必要。税理士に頼りきるのでなく、自ら判断できるスキルを獲得するべし。
④効率よく資産や物件を管理する運用能力
ITを駆使した管理手法の事例と要点。資産運用・管理の効率化はもちろん、金融機関に対して運用能力の高さを訴求し、優良先の地位確保にも。
100億投資家のすべてが凝縮された賃貸業の「模範解答」
特典の財務資料Excelシートを活用すれば成功は必定?!
そして本書にも前作同様、特典として著者特製のExcelシートが付属している。著者が自らの不動産実務において実際に使用し、ブラッシュアップを続けている財務資料のひな形で、多くの金融機関から「取引先のなかで最も資料がよくできている」とお墨付きの代物だ。
ひな型に添って入力するだけとはいえ財務資料を作り込むのは骨が折れることだろうが、その努力は金融機関の信頼と融資獲得といった結果に表れるはずだ。
もうお分かりだろうが、本書はすでに不動産投資をある程度進めている中・上級者を対象としており、これから始める初心者にとっては難しい内容となっている。
反対に「不動産投資のフローをひと通り経験して、ある程度のことは分かっているけど、正直なんとなくの理解や感覚で進めている部分もある…」というような方にはピッタリだ。本書で知識や思考を補強し、特典のExcel財務資料を経営に役立てれば、投資家として次のステージへ進むための扉もきっと開くのではないだろうか。
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