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「太田垣章子のトラブル解決!」立ち退き交渉難航の女性。生活保護の不正受給は許さない!

賃貸経営/トラブル ニュース

2020/12/17 配信

家主が1年間がんばったけど、上手くいかなかった建て替えの立ち退き交渉。4戸のうち他の3戸はさっと退去したので、甘く考えたのだろうか。次の計画が進まず、困り果ててご依頼いただいた。

入居者は30代前半のシングルマザー。家族は高校生の女の子と5歳の男の子。さぞや髪の毛振り乱して働いているかと思いきや、生活保護受給だった。働けない何か事情があるのか。そうであれば、立ち退き交渉も難航するはず。まずは相手方とコンタクトを取ってみることにした。

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誰も頼れないので

第一印象は、頭のキレがいい子。ボォっとはしていない。これだけ頭の回転が早いのに仕事していないという状況は、ちょっと残念に思うほどでもあった。

先制パンチは彼女から。

「子どもの関係で住むエリアが限られるので。転居するのはいいですけど、物件がないから引っ越しできません」

要は下の男の子の保育所がネックだと言う。待機児童問題でエリアを変えると、保育所に入れない。だから狭いエリア内でしか動けず、その範囲に収益物件がほとんどないと言う。確かに今の物件は、戸建の多い住宅地に建っている。

「だからこのまま住み続けるしかないので(転居しない自分は悪くない)」
そう言い放った。

そもそも保育所って、働く親にためのものじゃなかったっけ? 何か事情があるのか、探ってみた。すると彼女は、臆することなく言う。

「親とか回りに子育てを手伝ってくれる人がいないから、働けない」
そう言い切られると、役所が正規に生活保護を支給している以上、こちらは何も言えない。結局この日は、彼女の希望物件の条件を聞いて終えることにした。

いくら払ってもいいから退去して欲しい

ああ言えばこう言う、彼女はそんなタイプらしく、家主は「とにかく顔を見るのも嫌」と毛嫌いして顔をしかめる。地域の管理会社に確認すると、彼女の望むエリアには確かに収益物件が6件しかない。そのうち条件が合うのは、たったの2件。当然ながら空室はない。

とりあえず申し込みだけでもしておこうかと思えば、彼女の悪評はすでに知れわたっており、すでに家主側から拒否されていると言う。こうなればエリア内では、もはや絶望的だ。

子どもの保育所問題がクリアしてからか、それとも条件を変更してもらうしかない。前者はあとまだ1年はかかる。ここまでの期間を考えると、家主の経済的負担は大きい。これ以上待てないようで「いくらでも払う」と家主は言う。

立ち退き交渉は、1戸でも残ってしまうと収入は減るわ、次のアクションは起こせないわ、で最悪な状況である。そんな期間が10ヶ月も続いているので、家主の焦る思いは痛いほど分かった。

まずは生活保護の担当者に連絡してみた。
「誰も子どもに会ったことないんですよね。不正受給の尻尾つかみたいんだけど、賢くってなかなか……」
なるほど、やっぱりそう言うことか。ならば話は早い。私は勝負に出た。

相手のいちばん欲しいものを突きつけてみた

11月の10日、今月中に退去してくれたら100万円、来月なら50万円、新しい家の初期費用や引越し費用は家主負担、それでだめなら訴訟を提起すると突き放してみた。

そしたら彼女はすぐに食らいついてきて、1週間で物件が見つかったと言う。
「私も早く出たいんで、エリア外で決めました」

ところが不動産屋から送られてきた、初期費用の請求書を見て驚いた。ネットでは敷金1ヶ月、礼金ゼロの物件が、敷金2ヶ月、礼金2ヶ月になっている。不動産屋に確認したら、しどろもどろ。きっと家賃3ヶ月分の差額を、山分けするつもりだったのだろう。正規の料金しか払わないと宣言して、正しい請求書を送ってもらった。ふっかけてくる不動産屋も不動産屋だ。

次に引っ越しの金額も、びっくりするような高額を言ってきた。法外な値段だったので、私がいつも強制執行でお願いしている業者に半額以下でやってもらうことにした。あとでトラブルになっても、ここなら安心。

彼女は引っ越し代金まで抜こうとしていたとは、どこまで欲深いのだろう。

立ち退きの条件の書面を交わし、そこに私は守秘義務の項目を入れなかった。
そして引っ越し当日、退去した後にお金払って領収書をもらった。家主はやっと出て行ってくれたと、本当に喜んでくれた。だが私の気持ちは治らない。

随時報告していた生活保護の担当者に、条件の書面と領収書のコピーを提出。

「これで彼女を追い詰められます!」
その担当者の言葉通り、彼女は窮地に追いやられた。

驚くことに、子どもは保育所には通っておらず、彼女の母親が育てていることが判明。働けるからと、彼女の生活保護は支給がストップ。渡した100万円分は返還請求したと言う。

ご依頼いただいた立ち退き交渉は、こうして2ヶ月で終わった。
生活保護を受給しながら頑張っている人たちのことを思うと、不正受給をストップできたことの方が嬉しい。
賃貸経営は、入居時の審査が本当に大切だとつくづく感じた一件だった。

執筆:太田垣章子(おおたがき あやこ)

章子先生
【プロフィール】
OAG司法書士法人 代表
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。著書に「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)がある。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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