建築費や資材も高騰するなか低価格でコンパクトな住まいへの関心が高まっている。今回はテントタイプの「インスタントハウス」に注目したい。
インスタントハウスは、建築申請が不要な非建築物の「テント工作物」であり、設置するスペースさえあればどこにでも数時間で、かつ低コストで施工できる点が魅力だ。投資対象としても魅力的なのではないか?
インスタントハウスの開発・設計を手掛ける、株式会社LIFULL ArchiTechの代表 幸田 泰尚氏に話を聞いた。
北海道から沖縄まですでに100棟を超える販売実績
インスタントハウスは東日本大震災の被災所での名古屋工業大学大学院の北川啓介教授の経験がきっかけの研究をもとに、LIFULLと名古屋工業大学との共同研究にて開発された。災害時の避難所としての利用目的に開発された経緯から、短時間で設置できるのが強みである。
緊急時の避難施設として開発された経緯から、短時間で設置できるのが強みである。
「設置するにはまず、設置したい場所にドーム型のポリエステル素材のテントを空気で膨らまして、ペグなどで固定します。その後、テントの内壁に、硬質発砲ウレタンを吹き付けることで断熱性に優れ、豪雪地帯でもご利用いただけます」
耐風性にも優れ、震度6強の地震に対しても崩壊しない耐震性も兼ね備えている。
すでに北海道から沖縄まで、100棟を超える販売実績がある。種類は大きさが異なるS,M、Lの3種あり、最も売れているのが15㎡のMサイズで、販売金額は税込み187万円(施工費・運搬費などは別途地域により異なる)である。
「Mサイズではシングルベッドを最大4つ置ける広さがあり、グランピング施設で利用されるケースが多いですね」
民泊への投資に意欲的な読者も多いことから、少し詳しく解説をすると、グランピング施設など宿泊施設として利用するためには、浴室やトイレを備えた「本棟」が必要で、宿泊施設として許可を取っていることが前提となる。
本棟に付随してインスタントハウスを導入することで、部屋数を増やして収益性を上げることができる。昨今のキャンプブームも相まって、グランピング施設で導入されることが増えている。
「庭に設置して書斎兼ワークスペースに使用しているケースや、
ゴルフスクールやフィットネスのために用いられている例もあり、幅広い用途が見込めます」
注文から3週間後には納品。数時間で完成。被災地でも活用
「ご注文後、3週間程で設置が可能です。施工時間はMサイズであれば3~4時間程度で、1日に2棟設置可能です」
短時間で設置できることから今年4月にはトルコ・シリア大地震の被災地に3棟設置し、現地で働く人のワークスペース兼宿泊スペースとして活用されている。
ほかにも遮音性に優れた個室を確保できることから、感覚過敏の人のためのカームダウンスペースとしての利用も推奨されている。
最近では、認知度が増してきたことから、新たなニーズも増えているそうだ。
「グランピング施設などで利用される場合、外側のテントが樹液などで汚れることもあります。基本的には中性洗剤で汚れを落とすことができますが、オプションで汚れがつきにくい光触媒加工を施すことも可能です。ほかにも扉を標準のジップタイプではなく、より頑丈な木やアルミに変更することも可能です」
どれぐらいの期間、利用できるものなのだろうか?
「外膜のテント自体は10年程はご利用いただけると想定しています。保証期間は1年ですが、2020年の販売開始から3年間、実証実験で耐久性が確認されています」
グランピング施設では半年~1年で初期投資回収の例も!
「人気エリアのグランピング施設では1人1泊1~2万の宿泊費が見込めます。初期投資の金額を半年~1年で回収できたとの声も聞いています。またランニングコストを抑えられる利点もあります。断熱性に優れているため、光熱費を例年の半分に削減できたとの声もいただいています」
すでに民泊を行っている投資家にとっては敷地内にインスタントハウスを設置することで増床でき、収益アップにつながる可能性がある。またインスタントハウスを設置して副業でサロンやレンタルスペースとして、活用することもできそうだ。
ちなみに非建築物で建築申請が不要であるがために、現時点では「賃貸住宅」としての利用はできない。また購入できるのは「法人」が対象ではあるが、「個人事業主」も相談可能とのことである。
どれくらいの断熱性があるのかなど、気になる方はインスタントハウスを導入しているグランピング施設などで宿泊して試してみるのもいいだろう。
3Dプリンター住宅などと共に、低価格でコンパクトな空間として2024年、ますます注目されていくのではないだろうか。