空室を、競合物件よりもスピーディに効率よく埋めるには、いくつかの方法がある。最も重要なのが物件情報のマーケティングであるが、その中でも3大ポータルサイトへの掲載は当然欠かすことができない。
しかし、ポータルサイトへの掲載は、競合物件も当然同じことをしているため、それだけでは決め手に欠ける。空室物件があふれている昨今、もう一工夫してポータルサイト以外のソーシャルメディア(SNS)の活用を今一度考えてみる必要がある。
■セグメントを絞った
募集活動を意識する
ソーシャルメディアといっても、最近では様々なプラットフォームが存在しており、その特性とユーザー属性をしならなければならない。
それらを理解することで、より特定のセグメントにリーチしやすい広告とすることができる。ソーシャルメディアを活用するためには、まずは物件に入居するであろう「ターゲット」を意識することが重要だ。
どのような年代の、どんな属性の人に入居してもらうのかを、あらかじめ絞っておくことから逆算して、メディアを選ぶことができる。
多くの賃貸住宅は、入居する「ターゲット」をあらかじめ定められていないことがほとんどで、世代や性別などを特別決めることなく、ポータルサイトを中心としたマーケティング活動を行っているのではないだろうか。
このように、セグメントを特定せずに、全方位的な「マス」マーケティングを中心におくと、募集活動の焦点を絞ることができない為、広告効果も捉えきれずにダラダラと空室期間が増えてしまうことになる。
意識しなければならないのは、募集している部屋に対して、入居するのはたったの一世帯だけ、ということである。最終的にそこに住むのはたった一世帯であれば、何百人もの入居候補者がいても、その一世帯に刺さる募集活動を展開したほうが圧倒的に効率が良い。
たとえば、壁紙の色ひとつとっても、世代や性別により好むものが違う。設備やライフスタイルに寄り添った、セグメントを意識した空室対策が重要なのだ。
■ソーシャルメディア戦略
とセグメント
入居者を効率よく獲得するには、先ほども述べたように「ターゲット」と「セグメント」を意識したい。 賃貸住宅の募集は、ポータルサイトの効果はもちろん高いが、無料で使えるツールは使わない手はない。 特に意識したいのは無料で使えるソーシャルメディアである。
ここにメディアの種類と年代別のマトリクスがある。ソーシャルメディアは、世代によりある程度の利用者層が分かれており、またプラットフォーム特性の効果を使うことができるため、膨大な情報に埋もれることがない。そのためセグメントを絞るほどに、相性が良くなる。
しかも無料で使えるということは、上がり続ける宣伝広告費を抑えることもできるため、一石二鳥とも言える。
一部屋に住むのは、たった「一人」または「ー家族」なのだから、セグメントを絞って誰が住むのかということに意識をして入居者募集活動をした方が、効率がよいのである。 例えば、年代・性別・趣向をもとに、セグメントを絞り 「どんな人が住むのか」を明確にしてみることだ。
ただ何も考えずにポータルサイトに掲載するよりも、 誰に何を伝えたいのかを明確にし、ユーザーに刺さるマーケティングをしなければ、募集掲載コストばかり掛かり効果が上がらないということになりかねない。
■外国人就労者を取り込む
2022年出生者数が80万人を割った。これが意味するのは、将来の賃貸住宅のニーズはますます減っていくということである。
このまま進めば国内の生産力が落ち、経済が確実に停滞して行く。 今後、そのような事態を防ぐために、日本は海外から若い労働力を確保しなければならないはずだ。
当然、外国人が国内に居住するためには賃貸住宅が必要であるが、外国人にとって日本での賃貸住宅への入居はハードルが高い。自分たちが本来求めている住宅が、満足に供給されているとは言いにくいのではないだろうか。
言葉や保証人の壁もあり、課題も多い。今後ますます増えるニーズではあるが、まだ需給ギャップは大きいはずだ。
■無料の掲示板
「Craigslist」を活用してみる
外国人向けの無料で使える募集サイトといえば 「craigslist(クレイグスリスト)」(https://tokyo.craigslist.org/search/apa)というものがある。 このサイトは本来、不動産のポータルサイトというわけではないが、ローカルでの情報交換サイトとして1995年から世界50ヶ国、580都市で利用されていて、多言語に対応している。
その中でも不動産や住宅情報が掲載されていて、サイトを検索すると、多言語で物件情報を検索できるようになっている。あるカリフォルニアの管理会社では、物件情報を掲載するのに、日常的に使っているそうだ。
日本に来ても日本語を読めない人も多いため、外国人をターゲットにする物件では、クレイグスリストを掲載しない手はない。なお、掲載費用は無料のため、英語に堪能な場合、オーナー自らが掲載しているケースもある。
ターゲットを絞り込むことで、ポータルサイトに依存しない募集活動を展開できる。ますます釣り上げる宣伝広告料を抑えるためには、ターゲットの選定とソーシャルメディアの活用が欠かせない。
執筆:
(いまいもとつぐ)