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東京都・池尻大橋の築48年ビジネスホテルを複合施設に再生、「大橋会館」誕生

賃貸経営/リノベ・修繕 ニュース

2023/09/25 配信

新装オープンを告知するポスター。駅に貼られていた
新装オープンを告知するポスター。駅に貼られていた

1975年に竣工、長らくビジネスホテルなどとして利用されてきたものの、2021年に閉業した大橋会館が飲食からオフィス、ホテル、サウナとさまざまな要素を盛り込んだ複合施設として2023年夏、再生された。使えるもの、残せるものを上手に利用、新鮮な空間に生まれ変わった大橋会館を見て来た。

新旧が入り交じる池尻大橋駅界隈

渋谷駅から東急田園都市線で一駅、池尻大橋駅周辺はここ20数年で大きく変化してきた。戦前は現在の国道246号を挟んで南北それぞれに軍の施設があり、軍都池尻という言葉もあったほど。

そのためか、2013年に目黒ジャンクションができる前には目黒川周辺から商店街にかけてどこか猥雑な雰囲気の飲食店が残り、今の赤羽のような雰囲気があった。

赤羽も台地上に軍施設があり、坂の下には軍関係者や訪ねて来た人達を相手にした飲食店街が広がっているが、池尻大橋も同様に駒沢、駒場の高台からすると坂の下だったのである。

古くからの店もあれば、新しい店もあり、年齢も異なる多様な人達が行き交う池尻大橋
古くからの店もあれば、新しい店もあり、年齢も異なる多様な人達が行き交う池尻大橋

だが、1990年代からは三宿が隠れ家的な場所として人気になり、その後、池尻大橋から三宿間には小規模な個人店が増え、街の雰囲気は変わり始めた。

今でも商店街には昔ながらの家電販売店、金物店、建材店や銭湯、煎餅店、洋食店などがある一方で全国からグルメを集める飲食店やセンスの良いカフェ、バーなども多数。

今回、改装された大橋会館のプレスリリースでも池尻大橋という街について「都心の流動性がありながらローカル感の漂う、落ち着いた雰囲気のあるエリア」と紹介されている。

築48年、閉ざされた空間が開いた

入口の建物名を占める部分などはそのまま使われている
入口の建物名を占める部分などはそのまま使われている

その大橋会館があるのは国道246号沿いにある池尻大橋駅周辺から続く商店街がそろそろ途切れようかというあたり。5階建ての、通りに沿った細長い建物で、その昔のビジネスホテルといえば分かりやすいだろうか。

研修などを主体に使われていたことや名称もあり、どこか公共施設のような、勝手に入ってはいけない感があったのだが、プレス内覧会で訪れてみると印象は大きく変わっていた。

以前は通り沿いに人目を遮るようにかなり高めの植栽があり、上からはキャノピー。閉ざされた雰囲気だったのだが、そこがオープンな窓になっているのである。

ガードレールがあり、また、建物が少し低くなっているため、内部がよく見えるというほどではないものの、開かれた空間を作ろうとしている意図は感じられた。

再利用を意識した大胆な内装

外観はそれ以外は変わっていないが、階段部分などを除き、内部は大変貌である。壁、天井、床の内装材は剥がされてそのまま剥き出しになっており、かつてのフツーのビジホ、どこへやら。年配の人には改装途中と思われるような作りなのである。

その理由のひとつには今回の改装が暫定利用であるという点が挙げられる。明確に何年とは今のところ、決まっていないようだが、いずれは取壊しが待っていると考えるとそれほど多額の費用は掛けられない。

2階、オフィスの共用部。全体にシンプルな造りにそれぞれ異なる椅子が置かれている
2階、オフィスの共用部。全体にシンプルな造りにそれぞれ異なる椅子が置かれている(写真提供/大橋会館)

そのため、たとえば2階にあるオフィスのラウンジに置かれて椅子は新品ではなく、どこかで使われてきたものを再利用、さらにここが無くなった後もどこかで使われることが想定されている。

1階のレストラン。コンクリートの質感が面白い空間になっていた。テーブルの素材に注目!
1階のレストラン。コンクリートの質感が面白い空間になっていた。テーブルの素材に注目!
ブースは合板で作られており、塗装もなし
ブースは合板で作られており、塗装もなし

1階の飲食店「Massif」のテーブルには単管(建築工事で使用する鋼材。足場などに使うもの)が使われていたり、シェアオフィスの仕切に合板が使われているなど、それ以外でも最小限の手で最大限の効果を意識されている。

個人的に面白いと思ったのがこれ。棚を壁に設置してあるだけだが新鮮な驚きがあった
個人的に面白いと思ったのがこれ。棚を壁に設置してあるだけだが新鮮な驚きがあった

個人的には1階のストア&スペースに棚が壁付されていたのがツボだった。強度の問題などもあるが、これは真似できそうである。

また、築年数の古い建物の改装に際し、あまりに新しいモノを入れてしまうとそもそも浮いてしまう、味が生かされないという点もある。このあたり、大橋会館は塩梅が良く、面白い雰囲気に仕上がっている。

長時間、さまざまな楽しみ方ができるレストラン

掲示の裏に仕込まれた照明はOHKK、大橋会館を意味している
掲示の裏に仕込まれた照明はOHKK、大橋会館を意味している

さて、どのような施設になっているかを見て行こう。ひとつの建物にかなりさまざまな要素、仕組みを入れこんでいるのが大きな特徴。

1階は前述した通り、朝8時から夜23時までカフェ、ワインバー、レストランとして使える飲食店Massif。長時間、さまざまな使い方ができるのが面白いところで、店内のコンクリートの塊が印象的だった。

展示スペース。かなり広いのでさまざまな展示ができるほか、人が集まることもできそう
展示スペース。かなり広いのでさまざまな展示ができるほか、人が集まることもできそう

1階にはもうひとつ、ストア&スペースと名づけられた展示と販売のスペースがある。再生までには地元のアーティスト、クリエイターが多く関わっているそうで、この空間以外にも館内あちこちには絵が飾られており、空間の良いアクセントになっていた。

借りた部屋の一部を貸せるオフィスも

2~3階はシェアオフィス。2階には共有のラウンジがあり、それ以外のスペースには個人から40人まで働き方、規模に応じてサイズが選べるオフィスが作られている。小さいところでは21.88㎡、6.6坪で賃料は23万円(税込25万3000円。共益費税込で2万7830円)。もっとも大きな84.62㎡、25.6坪だと賃料は69万円(税込75万9000円。共益費税込で8万3490円)である。

オフィス室内。今ならこの状態も違和感なく受け入れられる
オフィス室内。今ならこの状態も違和感なく受け入れられる

展示会やギャラリー、撮影などにも使えるスタジオ付きのオフィスもある。渋谷から1駅3分という立地であれば来客も招きやすいだろう。

小さな会議室もあり、壁の絵が印象的だった。シンプルな空間をかっこよく見せるためにはこういう小物の使い方も大事
小さな会議室もあり、壁の絵が印象的だった。シンプルな空間をかっこよく見せるためにはこういう小物の使い方も大事

珍しいのはタイムシェアを可能にしていること。専用区画内に個室があるので、区画内で執務エリアと来客エリアを分けて使うほか、撮影スタジオなどとして外部に貸し出すこともできるのだ。

それ以外には2名までで利用できる専用ブース、フリーランスや個人事業主のための専用デスクもあり、いずれも登記可能となっている。

ホテルとしても、住居としても使えるフロア

ホテル、レジデンスは広さの異なる2種類の部屋が用意されている。こちらは広めの部屋
ホテル、レジデンスは広さの異なる2種類の部屋が用意されている。こちらは広めの部屋

4~5階にはホテルレジデンスがある。ここにも新しい仕組みが取り入れられている。普通にホテルとして主に短期滞在する以外に、住まいとして居住契約を交わし、もう少し長期に暮らすこともできるというのだ。

想定されているのは仕事場近くのセカンドハウス、多拠点居住の都心の住まいなど。入居者が使わない時にはホテルとして貸し出す「リレント機能」があり、貸し出すことで住んでいない時の家賃を払わなくて済むようになる。

ホテル、レジデンスフロアの共有部分。一部に落ち着ける天井の低いコーナーも用意されている
ホテル、レジデンスフロアの共有部分。一部に落ち着ける天井の低いコーナーも用意されている(写真提供/大橋会館)

また、4階の共用ラウンジエリアにはキッチン、ダイニング、ワークスペースがあり、居住者、宿泊者は自室以外も自分の空間として利用することができる。

広くはないが、スタイリッシュな水風呂も
広くはないが、スタイリッシュな水風呂も
サウナ、水風呂の外の、リラックスできるコーナー。元和室だったスペースを改装したそうだ
サウナ、水風呂の外の、リラックスできるコーナー。元和室だったスペースを改装したそうだ(写真提供/大橋会館)

5階には4人までが同時に利用可能なプライベートサウナも設けられている。コンパクトな空間ながら雰囲気のある水風呂エリアがあり、これは人気になりそう。オフィス、ホテルの利用者以外も使える空間である。

手前に文化浴泉の看板が見える。道を挟んだところに大橋会館
手前に文化浴泉の看板が見える。道を挟んだところに大橋会館

ちなみに大橋会館と道を隔ててはやはり、サウナで人気の銭湯・文化浴泉がある。最近のサウナ人気を考えると、このエリアの人気自体も高まりそうである。

これからも変化を続ける街、池尻大橋

池尻大橋、三宿が変わり始めた頃に近隣に居住していたこともあり、度々この界隈は訪れているが、特にここ10年ほどの変化は大きい。居住するクリエイター、アーティストも多く、大橋会館のプロジェクトにもさまざまな地元の人達、企業が関わっている。

ここで終わりになるプロジェクトではなく、何年か後には建替えもある。それまでにこの地域のファン、関係する人口を増やしていこうということだろうか。

事業主である東急は広域渋谷圏を自社がまちづくりを進めるエリアとして掲げており、当然にこのエリアも該当する。これからも大きく変わるであろうことが予想されるエリアのひとつというわけである。

その一方で界隈には意外に古い小規模な建物、アパートなどが残されてもおり、個人店に開業の余地があるのも、そうした建物があるため。その点からも変化の余地がかなりあるエリアといえるのではなかろうか。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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