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週末には60人以上が来訪 荒川沿いの不便な立地を逆転の発想でサイクリストに人気のスポットに

賃貸経営/技あり・話題の賃貸物件 ニュース

2023/08/07 配信

遠くからでも見える、視認性の高さが人を呼んでいる
遠くからでも見える、視認性の高さが人を呼んでいる

2022年8月、荒川沿いにサイクリスト向けのサポート施設としてTOKYO荒川BASE CYCLING STATION(以下荒川BASE)が誕生した。

駅から遠い工場地帯に立地、当初はニーズがあるのかどうかを悩みながらスタートしたというが、現在、週末には1日60人以上が訪れる人気スポットに。不利な立地をどう逆転させたかを聞いた。

不動産としての活用に悩む立地、建物

足立区宮城は隅田川と荒川に挟まれた、交通の利便性にはやや欠ける場所。最寄り駅としては日暮里・舎人ライナーの足立小台駅あるいは京浜東北線・東京メトロ南北線・都電荒川線の乗り入れる王子駅、東京メトロ南北線の王子神谷駅などがあるが、もっとも近い足立小台駅で徒歩30分といえば、立地はイメージできるだろう。

周囲には工場と住宅が点在。少しずつ住宅が増えているという印象だ
周囲には工場と住宅が点在。少しずつ住宅が増えているという印象だ

荒川BASEがあるのはそのうちでも川に近い工業地域。現在はかなり住宅も混在しているが、もともとは工場が並んでいた地域で、荒川BASE自体も以前は製造業の工場として利用されていた。ところが、コロナ禍で仕事が激減。閉鎖することになってしまった。

さて、空き工場となったその後をどうするか。重量のある機械を設置するため、建物建設時には非常に深くまで杭を打っており、解体する場合にはそれも撤去する必要があり、1000万円ほどの費用が必要だと分かった。

その費用をかけて解体、売却は現実的ではない。だが、不動産として活用を考えると住宅の場合には交通の利便性がネックになる。工業地域のため、民泊もできない。

近くを首都高が走っており、午後からは屋上も含めて蔭になる
近くを首都高が走っており、午後からは屋上も含めて蔭になる

では、どうするか。物件の所有者であるHさん(仮名)はかつて線路際のうるさい立地を逆手にとって音楽マンションを建設、人気を博したことがある。マイナスと思われる点も見方を変えればプラスに転じさせられる可能性があるというわけだ。

荒川沿い、サイクリストの多さに着目

道を挟んだところに土手があり、こんな風景が広がる。必ずしもマイナスばかりの立地ではないのだ
道を挟んだところに土手があり、こんな風景が広がる。必ずしもマイナスばかりの立地ではないのだ

そこで目をつけたのが荒川沿いを走るサイクリストたち。荒川沿いには本来はサイクリングロードとしてではないものの整備された道路があり、サイクリストには走りやすいそうで、最近ではアラサイという言葉もあるほど。彼らが一休みできるスペースを作ったらどうだろうと考えた。

1階。壁際にはさまざまな工具などが並べられている
1階。壁際にはさまざまな工具などが並べられている

そこで生まれたのが荒川BASEだ。1階にはキッチンを備えたカフェ&休憩スペースがあり、駐輪ができるのはもちろん、自転車整備もできるようになっている。空気入れや工具なども揃っており、パーツの販売も行われている。

2階はトイレとイベントスペースがあり、1階がいっぱいの場合には2階も飲食スペースとして開放している。実際のところ、最近は利用者が増えたため、2階を使うケースも増えている。最大で25人ほどが入れるという。イベントスペースとしての貸し出しも行っている。

3階の個室。今後の活用に期待がかかる
3階の個室。今後の活用に期待がかかる

3階は6室の個室が作られており、ミニキッチン、洗濯機、シャワー室が用意されている。現在はスタッフの休憩スペースとして使われており、今後の利用についてはアイディアを膨らませている最中なのだそうだ。

週末営業が成果に繋がった

と書くと、最初から現在の成功を当て込んでいたようだが、実際には違う。当初はそもそもサイクリスト達に利用してもらえるのか、不安もあった。そこで営業は利用者が見込める土日だけに限定、しかも、この施設のための人は雇わず、Hさん一家が総出で当たることにした。できるだけ費用をかけず、自分たちでできることから始めたのだ。

だが、それが結果として形になり、週末には1日数十人もがやって来る人気スポットになったのにはいくつか要因があるように思われる。現地を見学、Hさんの話を聞いて思ったのは以下の点。

●立地を活かした外壁のロゴマーク
建物の外壁には大きく荒川BASEというロゴが入っているのだが、これがちょうど川の土手からよく見える位置にあたっており、視認性が非常に高い。知らないで走っていても、ここに何かがあると分かるのだ。

ココが撮影スポット。柵に自転車を立ちかけてその横に立って撮影すると実に絵になるというのだ
ココが撮影スポット。柵に自転車を立ちかけてその横に立って撮影すると実に絵になるというのだ

来訪者の中には土手の柵に自転車を置き、ロゴをバックに写真を撮る人も多いそうで、思わず撮りたくなるスポットになっている。そうやってSNSにあがる写真が増えれば、次はここを目指して来ようと思う人も増える。ロゴが良い仕事をしているのだ。

●洗車サービス
荒川BASEでは近隣の自転車店の協力で洗車サービスを行っている。これが人気だという。自転車乗りに聞いてみたところ、手間がかかるというだけでなく、賃貸住宅に住んでいる場合はどこで洗うかという問題があるのだという。広い、水栓のあるバルコニーがあれば良いのだろうが、そうした住宅は少ない。

ちなみにこの2~3年で自転車の洗車専門店が登場、少しずつ増えてきている。オーナーを募集している会社もあるので、新規事業としてもあり得るかもしれない。

●情報発信
インスタグラム、ツィッターで情報発信を続けており、インスタではフォロワーが1000人以上。2~3日に1回くらいの頻度で更新されており、ファンを作ることの大事さがよく分かる。

それ以外にもこれを成功させたいというオーナー一家の熱意ももちろんポイント。さまざまな要因が現在の来訪者数に繋がっているわけだが、それでおしまいというわけではない。

現在は土日祝日のみの営業だが、きちんと採算が取れるのであればもっと営業日を増やす手もあるだろうし、Hさん一家が毎週末ずっと続けるのも大変。次の段階はそのあたりをどうしていくか。

難しそうに思えるが、実験を繰り返しながら場所の可能性を発掘することをHさん自身が楽しんでおり、次の打つ手のアイディアも既にあるのだという。

バーベキューなどもできるようにと屋上にもあらかじめ水栓を用意してある
バーベキューなどもできるようにと屋上にもあらかじめ水栓を用意してある

また、3階に加え、広々と気持ちの良い屋上も現在はあまり活用されていない。今の好況を続けながら、さらに発展させていければ、不動産会社が扱いたがらなかった建物が収益を生む優良不動産に化けることになる。早くその日が来ることを期待したい。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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