• 完全無料の健美家の売却査定で、できるだけ速く・高く売却

×

  • 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集

物流施設立地に注目が集まる理由。まちに開かれた施設に変身!最先端物流施設ALFALINK相模原に潜入

不動産投資全般/社会問題・情勢 ニュース

2023/07/31 配信

物流施設に注目が集まっている。特にコロナ禍で海外に比べて遅れた印象のあったEC市場のうち、物販系分野が伸長、ネット通販でモノを買うことが一般的になりつつある。それに伴い、物流がライフラインのひとつであることを認識した人も多かったはずだ。

しかも、最近では物流施設が単にモノを保管、流通させるための場として以上の意味を持つようになっている。地域のコミュニティのハブ、防災拠点となっていたり、そこから新しいビジネスが生まれる可能性もあるなど、物流施設が立地することが地域を変えるかもしれない。

ここでは神奈川県相模原市にある日本GLP株式会社の最先端物流施設ALFALINK相模原を例に、物流施設のこれからを探ってみたい。

バブル崩壊後に物流施設に大きな変化

物流施設の変化が始まったのはバブル崩壊後。国土交通省の「物流不動産の隆盛の背景や理由(サマリー)」と題した資料によると、荷主企業が産業構造、経営環境の変化に対応するため、流通経路の見直しを行ったこと、資産圧縮の一環で自社保有の物流施設を賃借化し始めたこと、物流業務の3PL事業者への委託が定着したことが背景にあるという。

日本GLP株式会社ブランドクリエイション部の大石真史氏も2000年頃にはまだ「賃貸で倉庫を借りる?そんなニーズはないと言われたものです」と語る。

だが、実際には先進的な企業は自社保有から賃借化へと動き始めており、同時に3PL事業者(=third party logistics。荷主企業に代わって効率的な物流の企画立案等を行い、これを一貫して請け負う高品質のサービス)も台頭し始めていたのである。

また、その頃から物流施設に求められる役割も変化してきた。効率的な経営のためには在庫の削減・最適化、リードタイムの短縮などが求められるのは当然として、インターネットの普及による通信販売の需要拡大を背景に貨物の小ロット化、時間指定配送など顧客ニーズの多様化が進み、多頻度小口輸送が増えてきた。

それを受けて多頻度かつ迅速な入出荷対応、24時間操業体制その他物流施設に求められる役割も変化してきている。

投資家的には不動産証券化に関する制度整備を受け、物流施設を含む投資用不動産への投資額が増大してきたことも忘れてはならないポイント。

物流施設はテナントの定着率が高く、賃料も安定的でかつ近年は社会のインフラとしてその意義、存在は年々重さを増してきている。投資先としても魅力的というわけである。

もうひとつ、首都圏、近畿圏では高速道路網の整備によって物流施設の立地可能エリアが拡大している点も忘れてはならない。かつての物流施設は湾岸部に集まっていたものだが、現在では内陸部へ拡大している。

実際、今回は2023年5月末に物流施設4棟、共用棟1棟が全棟竣工したALFALINK相模原を見学させていただいたが、それ以外でも2023年6月末に全棟竣工したALFALINK流山、2024年以降に予定されているALFALINK茨木、2026年以降に予定されているALFALINK昭島などと内陸の立地が多くなっている。

2011年以降、公共性、事業継続性にも目が向くように

2011年の東日本大震災では事業の継続性、公共性にも目が向くようになったと大石氏。

「仙台で私たちの倉庫が避難所として使われました。安全に品物を保管できる場所はまた人の安全を守る場所ともなり得るのです。また、あの時、物流を止めてはいけないとも強く思いました。そのためには交通の要衝であることに加え、災害にも強い場所に立地、事業を継続させられるようにすることも重要です」。

さらに雇用確保、生産性向上のためには物流施設には快適性も求められており、2020年以降は雇用対策、生産性のさらなる向上のために自動化、ロボット化なども推進している。そうした多様なニーズを盛り込み、これからの物流施設として誕生したのがALFALINKという物流プラットフォーム。

単に運ぶだけではなく、地域と共生して豊かなまちづくりに関わる、サプライチェーンすべてを繋いで新しい価値を生む、そこから生まれた解決策を広くシェアするなどを目指しているそうだ。

ロゴはもちろん、コンセプト開発、ネーミング、共用施設棟「RING」、ランドスケープのデザイン監修までトータルにブランディングのディレクション、デザインを行ったのは佐藤可士和氏。物流、倉庫という言葉の持つ固いイメージとは異なる明るい伸びやかさ、連携をイメージさせる流れるようなデザインが印象的だ。

明るい共用棟には快適に働くための各種施設

では、実際のALFALINK相模原をご紹介しよう。総延床面積は約67万㎡超あり、日本最大級の物流拠点で共用棟を中心に4棟の建物が配されている。そのうち、2棟は1社で1棟を丸ごと使うBTS型で、残り2棟はマルチテナント型と呼ばれる多種の企業が利用するタイプとなっている。

倉庫というと窓のない、暗くて不愛想な建物をイメージするが、商品の日焼けを避けるため、建物自体の窓は少ないものの、共用棟を中心に緑が豊富にあるためか、全体としては爽やかな印象があり、これが物流施設かという驚きがある。

共用棟全体を建物屋上から撮影。円形の印象的な建物だ
共用棟全体を建物屋上から撮影。円形の印象的な建物だ

円形、ガラス張りでひときわ明るく目立つ共用棟には施設で働く人達のために快適な就労環境を供するという目的からさまざまな施設が用意されている。

共用棟内にある託児所。ぬくもりの感じられる空間になっている
共用棟内にある託児所

カフェにコンビニエンスストアがあるほか、託児所も用意されており、子育て世代も安心して働けるようになっている。

移動の手段として通勤バスが運行されているのはもちろん、施設内の移動などに便利なレンタルサイクルも用意されている。

中央に見えているのがマルチコート
中央に見えているのがマルチコート

地域に開かれた場所という意図もあり、建物の前にはマルチコートがある。これは就業者だけでなく、地元の子ども達などにも頻繁に利用されている。

そこで役立っているのがこの施設の専用アプリ。こうした施設では入館手続きなどに時間がかかることがあるが、事前にアプリに登録しておけばその手間が省略でき、かつコートの予約も可能。そのため、就業者数以上に登録があり、それが地元の人達。

「コートの利用だけでなく、レストラン、コンビニエンスストアなども外部の方に利用されており、そのためにも役立っています。また、物流の世界には季節による跛行性があり、繁忙期になるとその時期だけ働きに来る方がどっと増えます。アプリにはその際の手間を省く役割もあります」。

地域のイベントスペース、防災拠点としても機能

敷地内には地元の人達が集まるイベントなども行われている。「GLP ALFALINK相模原」リング棟
敷地内では地元の人達が集まるイベントなども行われている。「GLP ALFALINK相模原」リング棟

地域のために役立っているのはコートだけではない。施設内ではサマーフェスタや各種ワークショップ、交通安全イベントその他さまざまな催しが行われ、イベントスペースとして使われている。

これまで倉庫、物流施設は閉じた存在だったと思うが、ここでは開業時に街びらきが行われており、地域と共存する開かれた場となっているのである。

地域のという意味では防災拠点としても重要な意味を持っている。相模原市は地盤が強固で揺れにくく、洪水ハザードリスクもとても低い。

また、緊急時に復旧を優先される幹線道路が周辺を走ってもおり、不測の事態でも物流を止めずに済む、あるいは止める期間をできるだけ短くできる可能性が高い。

そうした立地を活かして神奈川県、相模原市と防災協定を結んでおり、施設内では佐川急便と西濃運輸など同業他社が連携した救援物資の輸配送訓練なども行われた。

「同業他社が連携しての訓練は珍しく、これについては2022年10月にリリースを出させていただきました。それ以外でも施設の存在、安全性を地域に知ってもらう活動なども行っています」。

人、企業が出会う場、産業を生む場にも

こちらは各棟内にある休憩スペース。気持ちの良い空間だった
こちらは各棟内にある休憩スペース。気持ちの良い空間だった

そして、もうひとつ、地域に対してだけでなく、社会に対しても大きな意味があると思うのが入居企業同士、入居企業と地域住民、入居企業と自治体、就業者同士や地域住民同士などといった、本来なら出会いにくい人達がこの場で出会うことで生まれるイノベーションである。

同施設では入居企業同士が月に1回定期的に顔を合わせるなどの交流があり、そこに新たなビジネスチャンスが生まれている。防災で同業他社の連携の話を書いたが、同じような仕事と言いながら得意分野が違えば協働の可能性は十分にあり得る。

また、同じ業種であれば同じ悩みを抱えていることもあり、一緒に解決策を考えられれば効率的でもある。

「最近は単に荷物を通過させる場所としてではなく、この施設に送られてきた製品をメンテナンスして送り返したり、ここで生産したり、商品が多種揃っていることからショールーム的に使われていたりと物流施設でできることは広がっています。

また、入居しているECサイト向けに他より遅い時間まで発送の受付が行われているなど具体的なビジネスチャンスもあり、入居企業のうちには当初は1フロアの一部だけを借りていたものが1フロア全部になり、2フロアになりと急激な成長を見せる例も出ています」。

モノが通過するだけの場ではなく、ここに関わる多様な立場の人間、企業が同じ場で交わることで新しいビジネス、産業が生まれる場となりつつあると言えるわけである。

これまではトラックの出入りが多くて危険などと否定的な見方をする人もいたかもしれないが、生活に欠かせない存在であり、かつ地域を変える意味ある存在でもある。

とすると、これからは物流施設の立地は地域のポテンシャルを図る上でひとつの要素として考えても良いのかもしれない。

リニアの工事が進む相模原駅前
リニアの工事が進む相模原駅前

個人的には相模原が日本の中央部に位置し、今度の労働基準法改正でトラックドライバーの連続運転時間の限度が4時間になっても15都府県に到達しうる立地であるという点に驚いた。関東地方はもちろん、名古屋、福島県郡山市、新潟県長岡市あたりまではカバーできるそうだ。

相模原市というと最近、リニアばかりが注目されるが、自動車利用でも非常に利便性が高い立地というわけで、このメリットはもっと知られても良いのではないかと思う。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

アクセスランキング

  • 今日
  • 週間
  • 月間

不動産投資ニュースのライターさんを募集します。詳しくはこちら


ニュースリリースについて

編集部宛てのニュースリリースは、以下のメールアドレスで受け付けています。
press@kenbiya.com
※ 送付いただいたニュースリリースに関しては、取材や掲載を保証するものではございません。あらかじめご了承ください。

最新の不動産投資ニュース

ページの
トップへ