金融機関からお金を借りるときに重要なのが、個人も事業者も信用力である。融資審査では、信用情報機関に登録されている情報(信用情報)をベースにその可否を判断する。例えば、住宅ローンを組む時には、年収や勤め先、他の借金の状況など、こうした情報は必須となっている。
直近に借入金の延滞があったりすると、他の属性情報との兼ね合いもあるが、住宅ローン審査を通過しないケースも少なくない。
個人破綻した場合、その情報が登録されている間は、基本的にローンを組むことができなくなる。その信用情報はどこまで知られているのか。貸金業法指定信用情報会社のクレジット・インフォメーション・センター(CIC)では、クレジットカードなどの情報として本人の氏名や生年月日、郵便番号、電話番号はもちろん、割賦販売法対象商品と貸金業法対象商品の支払状況に関する情報確定日、貸付日、出金額、残高、遅延の有無などの照会が会員会社からあれば提供している。その情報は、契約期間中および契約終了後5年以内が対象となっている。
だが、こうした支払い状況等以外の情報も調査されているのではないか、との疑問もある。
企業の信用情報を調べる会社に勤めるK氏によると、
「企業の場合は、収入と負債の比率、総資産の現状といった会社の財務内容が基本となる。上場企業は、開示情報で一定の経営状態をつかめるが、粉飾していないかなどは別のルートを当たって取材する。
また、社長をはじめとする経営幹部の個人的な部分を調べることもある。社長の交友関係や女性関係、どんな車に乗っているのか。どのような性格の人物であるのかや、個人的なトラブルを抱えていないかなども周辺や店から人となりをヒアリングするケースがある」と話す。
特に非上場のオーナー企業は、市場の監視の目が行き届きづらく、コンプライアンス上問題のある会社が少なくないとも指摘する。
個人の信用情報の一つとして、メガ銀行系列の消費者ローンを中心に多重債務者となった人の情報は金融機関の横のつながりで共有されている。
ただ、その消費者ローン業界では、多重債務者の増加を防ぐために2010年6月18日に総量規制が実施され、年収の3分の1までしか貸し付けられなくなった。
グレーゾーン金利も撤廃されたことを受け、弁護士法人などが過払い金返還のテレビコマーシャルを流し始めたことは記憶に新しい。過払い金を取り戻せる権利は、最終弁済期日から10年間までとなる。
この過払い金で480万円を取り戻した例がある。S氏が最初に借入れたのは1999年で断続的に借り入れ、2010年に一括返済した。借入先は、銀行とメガ銀系列の消費者ローンの2社。グレーゾーン金利が撤廃される前で利率も高く、それなりの過払い金が発生していると判断して訴えた。
原告側弁護を担当した壱岐坂下法律事務所の小倉保志弁護士は、「この案件は和解によって1社当たり元金に20万〜30万円の上乗せで計480万円を取り戻せた。断続的に貸し続けていたことで被告側が裁判に勝てないと判断したことと、返済最終日から換算して年間5%の利息が付くため、2010年の一括返済から8年経過しており40%の利息が発生している。
裁判が長引くことで利息が膨らむことを避けるために和解に応じた」と説明するとともに、過払い請求者は、借金を踏み倒している金融事故≠ナはないので信用情報に載らないのが現状ではないかと推測している。
老後の不安などから、本業以外の収入源を持ちたいサラリーマンの、賃貸経営に対する意欲は依然として強い。今話題の金融庁の報告書を見るまでもなく、年金だけで現役時代並の収入を確保出来ないことは自明であるからだ。
これから「なにもしないリスクが高まる」ことで、不動産投資を始める若年層が増えるかもしれない。その際、融資審査において最も重要なのは「信用力」であると肝に銘じておきたい。
健美家編集部