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単身高齢者死亡後の契約解除、残置物処理を円滑に。国交省がモデル契約条項を策定

政策(不動産投資関連)/緩和措置 ニュース

2021/06/14 配信

単身高齢者に住宅を貸す場合、いくつか懸念される事項がある。そのうちのひとつに賃借人の死亡後に契約関係がどうなるか、残置物をどう処理するかという問題がある。

住んでいる人が亡くなっているのに契約が継続するとしたら、残置物がいつまでも処分できないとしたら、建物オーナーとしてはいつまでもその住宅を次の入居者に貸せないことになってしまう。

契約時に死後事務委任契約を締結、死亡後を委任しておく

残置物の処理等に関する契約の要旨
残置物の処理等に関する契約の要旨

そうした事態を防ごうと国土交通省住宅局住宅総合整備課が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定、公開した。

これは契約時に単身高齢入居者が受任者と死後事務委任契約を締結しておき、入居者が亡くなった場合には受任者があらかじめ定めてあった通りに契約関係、残置物を処分できるようにしておくというもの。これが可能になれば単身高齢者に部屋を貸すことの不安がひとつ取り除けることになる。

国交省で作成した活用手引きに従い、ざっと説明していこう。

契約時、入居者は賃貸借契約と同時に受任者と死後事務委任契約(以下委任契約)を結ぶ。委任契約を結べるのは単身で60歳以上の高齢者と限定されており、個人の保証人がいる、若年層であるなどの場合は想定されていない。

こうした場合には亡くなったとしても、その後の契約関係、残置物を処分できる人がいると推察されるためで、それにも関わらず委任契約を利用した場合には民法や消費者契約法に違反、無効となる可能性がある。

受任者としてまず挙げられているのは入居者の推定相続人のうちのいずれか。入居者が亡くなった後の権利、財産の処分という、入居者および相続人に大きな影響のある契約のため、誰でも良いというわけにはいかないのである。

ただし、推定相続人を受任者とすることが難しい場合には居住支援法人、管理業者等の第三者が受任者となれる。賃貸人は入居者と利益相反の関係になるため、受任者とすることは避けるべきと考えられるが、これに関しては管理業者にも似たような懸念がありうる。誰を受任者にするのが妥当かについては今後、もう少し検討が必要なのではなかろうか。

入居者は財産を分類、整理しておく

契約締結にあたって入居者は自分の財産を分類整理、それを記録しておく必要がある。廃棄するもの、相続人に渡すなどで廃棄しないものを分けておき、受任者が死亡後に残置物を処分しやすくするためである。

リスト化する、品物にシールを貼るなど目印をつけておくなど、やり方はいろいろ考えられるが、自分がいなくても受任者に一目で分かるようにしておくことが大事。残した財産を渡す相手についても受任者に分かるようにしておくべきだろう。

入居者死亡後、受任者は契約解除、残置物処理を実施

受任者の仕事は入居者死亡後から始まる。ひとつは賃貸借契約の解除事務の委任に関する契約に基づき、賃貸借契約の解除を行うこと。把握している相続人に引き続き居住することを希望するかどうか等、意思を確認した上で賃貸借契約を継続させる必要がなければ、賃貸人と合意の上、賃貸借契約を解除することができる。

もうひとつは残置物の処理事務の委任に関する契約に基づいた残置物の処分。廃棄しない家財については入居者が指定した先へ送付。廃棄する家財については入居者の死亡から一定期間が経過し、かつ賃貸借契約が終了した後に廃棄することになる。

また、換価することができる残置物については換価するように努める必要があるともされている。

この間、賃貸人は入居者が亡くなったことを知った際に受任者に通知したり、受任者が住居内に入る際の開錠、家財を搬出する際の立ち合いへの協力を求められることがあるとされている。

大きな前進ではあるものの、今後の課題も

ご存じのように賃貸借の権利は相続される。かつて貸し手市場だった時代には権利を相続した人が引き続き居住したいという例が多かったのかもしれない。

だが、今の時代、単身高齢者が住んでいた部屋を借り続ける権利を相続しても住みたいという人が現れることはあまり想定できない。同様にいくら私有財産の権利が絶対だとしても、単身高齢者が所有する家財を相続したい人が多いとも思いにくい。

だが、これまでは個人の権利を擁護することが優先され、それが単身高齢者の入居を阻んできた。今回、単身高齢者限定でその権利の一部を受任者に委任することが可能になるとされたわけで、これまでの経緯を考えると大きな前進である。単身高齢者に部屋を貸すことのリスクがひとつ軽減されたのだ。

とはいえ、問題もある。たとえば残置物の処分は「入居者の死亡から一定期間」経過してからとされており、モデル契約条項の説明ではそれを少なくとも3か月としている。

契約解除後とあるのは当然としても、3か月は長すぎないだろうか。また、賃貸借契約の解除についても、契約時にあらじめ推定相続人に確認しておくという手は考えられないだろうか。

それ以外では費用負担も気になるところ。今回のモデル契約条項では受任者が負担した経費は入居者の相続人に請求することになっているが、相続人がいない場合も多々ありうると思われる。

その場合、経費は誰が負担することになるのか。実際の契約運用に当たってはそうした細かい点をもっと詰めていく必要があろう。

建物所有者としては入居者が亡くなった後、その事実が物件の価値を毀損させず、他の入退去同様の手配で新規入居者募集が可能になることが大事と考えるはず。そのためには、この重要な第一歩がさらに次の一歩に繋がることを期待したいところである。

健美家編集部(協力:中川寛子)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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