札幌市営地下鉄「南平岸駅」は、昔は「霊園前駅」と呼ばれていて、隣の駅「平岸駅」と比べると、賑わいが少なく物寂しい雰囲気の駅であった。
旧駅名の「霊園前駅」は平岸霊園の最寄り駅であることが由来だったが、「縁起が悪い」「住宅地のイメージが悪い」という理由で住民から名称変更の要望があり、平成6年10月14日の東豊線の延伸開業に合わせて、「平岸地区の南側」という意味から現在の「南平岸駅」の名称に変更されたのである。
札幌で不動産投資を行っている投資家は「平岸駅」と「南平岸駅」では、駅の人気度に大きな差がある事はご存知だと思う。
SUUMOによる「2020年の住みたい街ランキング札幌版」では、地下鉄「平岸駅」は10位に入るが南平岸駅は20位以内に入らず圏外である。
しかし南平岸駅付近では、近年分譲マンションなどの供給も増えており、今現在も京阪電鉄不動産が手掛ける新築分譲マンションが建築中で来年2021年に完成する予定である。
そして南平岸エリアで注目されるのが仮称「札幌平岸リードタウン」と呼ばれる4万8500㎡の開発である。
この開発は、積水化学工業と長谷工不動産が、「自衛隊札幌病院」跡地を取得し、「SEKISUI Safe&Sound Project」として災害に強いサステナブルなまちづくりをすすめる注目プロジェクトである。
開発地はこのようにかなり広大な敷地で、現在土壌汚染の回復工事や地下埋設物除去工事なども終わり、プレハブの現場事務所が設置されて、着工がもうすぐの状態である。
財務省北海道財務局の資料によれば、両社は2020年1月に同土地を国有財産二段階一般競争入札で落札し2月14日付で契約金額4,505,000,000円の売買契約を締結した。
この仮称「札幌平岸リードタウン」では、戸建分譲住宅や分譲マンションの他、商業施設、医療施設を建設する複合型の開発を計画、住・商・医が徒歩圏内に揃った地域のシンボルとなるコンパクトシティを目指す計画で、全域の竣工は2024年の予定だ。
南平岸は、札幌市の南東部に位置し、「さっぽろ駅」へ7駅11分という利便性の高さと、天神山緑地や精進河畔公園等の豊かな緑を兼ね備えた、非常に環境良好な地域である。
そこに、このような大規模開発が「南平岸駅」より徒歩約8分の場所で始まる事によって、将来の南平岸駅エリアの利便性は大きく向上し、人気度も上昇する事が予測される。
「札幌平岸リードタウン」の概要を積水化学工業株式会社のプレスリリースから要約する。
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1.積水化学グループが手掛けるまちづくり「SEKISUI Safe&Sound Project」
「札幌平岸リードタウン(仮称)」では、コンセプトに掲げる「Safe&Sound:安心・安全で、環境にやさしく、サステナブルなまち」の実現を図ります。
まちの地下部分はインフラ技術で基盤を整備し、地上部分は電力、飲料水等の確保で在宅避難が可能なレジリエンス機能を備え、積雪地域でも快適に暮らしていただける住まいの提供を予定しています。まちの中央には芝生スペースを設け、災害時の一時避難場所や冬季の一時堆雪場として使用できるよう計画しております。
また、多彩な商業施設により地域経済の活性化に貢献するだけではなく、セキスイタウンマネジメント株式会社による地域コミュニティの形成、管理運営など豊富なサポートを通じて、周辺地域を含めたまちの魅力の維持・向上に努めます。
2.幅広い世代が集う生活の利便性を兼ね備えたまち
生活利便施設の誘致をトータルプロデュースし、人が集まりたくなる魅力的な商業施設、地域に開かれた医療環境の充実を図ります。
広い駐車場を備えた大規模な商業施設に加え、健康で快適に暮らせる医療環境を備えた幅広い世代が集う持続可能な居住環境を目指します。
3.平岸地区の暮らしを担う拠点として地域のシンボルを目指す
全国で分譲地を手掛けてきた実績を生かし、札幌市景観計画に基づく「まちなみガイドライン」を制定し、周辺の街並みと調和した良好な景観の形成を計画しております。まちなみの維持管理のみならず、中央の芝生スペースを利用して地域のお祭りやイベントへの協力、防災訓練の実施等のコミュニティ形成にも取り組んでいく予定です。
また、建築物の高さを調整することで札幌市の景観特性である山並みの通景を確保し、地域のシンボルとなる美しいまちを目指して参ります。
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この「SEKISUI Safe&Sound Project」は全国で展開されていて、その第一弾は、実は埼玉県朝霞市で取り組んでいる「あさかリードタウン」だ。「あさかリードタウン」は、2018年5月に発表され2020年11月には複合商業施設もオープンの予定である。
そしてこの札幌が第二弾の計画である。
札幌市で行われている再開発は、市の中心部ばかりが注目されるが、この南平岸駅エリアの「自衛隊病医院跡地」の再開発は、中心部以外での数少ない再開発となっており、不動産投資家が注目すべき再開発である。
人気の平岸駅エリアよりも、土地代も低めであり、こういった発展余地のあるエリアを狙うことで、資産価値の向上も望める数少ないエリアの一つだと言えよう。
執筆:J-REC教育委員 原田哲也
【プロフィール】
2010年より、一般財団法人日本不動産コミュニティー(J-REC)の北海道支部を立上げ、不動産実務検定の普及に尽くし、多くの卒業生を輩出。2018年よりJ-RECのテキスト編集、改定などを担当する教育委員に就く。
また自身が主宰する北海道大家塾は既に62回の開催を数え、参加人数も述べ3700人を超える。