利用者は1日平均38万人!
相鉄線との直通運転でさらに増える?
東京都と神奈川を結ぶ複数の鉄道路線を運営する、大手私鉄の東急電鉄(東急)。なかでも渋谷〜横浜間を結び代官山や自由が丘、田園調布といった高級住宅地を走る東横線、渋谷〜中央林間を結び二子玉川、青葉台、南町田グランベリーパークなど再開発が目覚ましいエリアを通る田園都市線はドル箱路線として知られている。

こういったメジャー路線に追いつきそうな勢いで利用者を増やしているのが、目黒線だ。同線はJR山手線に接続する目黒と横浜市の日吉を結ぶ全長約12qの路線で、商店街で有名な武蔵小山、東京工業大学のキャンパスが広がる大岡山、さらには田園調布、武蔵小杉など、沿線には住宅街や大学のキャンパスが目立つ。
元々は目黒から大田区の蒲田に至る目蒲線だったが、2000年に三田線と南北線との直通運転を開始するにあたり目黒〜武蔵小杉間は目黒線(08年に日吉まで延長)、多摩川〜蒲田間は多摩川線に分割されることに。目蒲線時代は都心のローカル線という印象だったが、目黒線になり都心へのアクセスが格段に良くなったことで存在感は高まり、新型コロナ前の2019年度の1日平均利用者数は約38万人と、10年前に比べて約6万人も増えている。
2006年には不動前〜洗足間が地下化して急行運転を開始、現在は各駅にホームドアも整備されるなど、分離後も施設の改良を続けているが、いま注目を集めているのは2022年に開業予定の相鉄線との直通だ。
これは、日吉から新横浜を経て今年11月開業予定の相鉄の羽沢横浜国大までをつなぐ「東急・相鉄新横浜戦」が開通し、目黒線・東横線と直通運転を始めるというもの。相鉄・二俣川〜目黒間の所要時間は約38分と、現在の横浜駅経由と比較して16分程度短縮される見込みだという。

出典:東急電鉄ホームページ
都心に直結するので乗り換え回数は減少し、新横浜駅付近に新駅を設置することにより、新幹線へのアクセスも大幅に良くなる。神奈川県央と横浜、東京都心部に新たな鉄道ネットワークが形成されることで、地域間の連携・活性化も期待できる。コロナ禍においてはテレワークなどの普及によりビジネスパーソンの東京離れが顕著だが、都心から神奈川へシームレスにつながる東急・相鉄直通沿線を住まいに選ぶ人もいるだろう。
目黒線は6両から8両編成に
増車各駅ホームは延伸工事を実施!
さらなる変化は、直通運転に伴う目黒線の増車だ。すでに8両もしくは10両編成の相鉄線に合わせる形で、東急は2022年度に目黒線の全車両を現在の6両編成から8両編成に増設すると発表。
今年11月に新横浜戦が開業するタイミングで、約16年ぶりの新型車両となる「3020系」も投入する予定で、同時に編成数も増やし朝の通勤ラッシュ時の輸送力も向上するという。当初は6両編成で運行するが、2022年度の上期以降に順次8両編成の運行を始める。
増車に備えて各駅ではホームの延伸工事が進められている。実のところ、目黒線や直通する地下鉄各線は将来の増車を見込み8両分の長さのホームをあらかじめ確保していて、6両分の長さしかない奥沢はホーム延伸、さらには駅の北側にある留置線も8両に対応させ、急行系列車のスピードアップのための通過線も新設するという。
三田線と南北線、南北線とつながる埼玉高速鉄道も2022年度から8両化を進める計画でホームの工事を進めていて、三田線は8両編成の新型車両も投入する予定だ。


目黒線の混雑率は、いまや田園都市線に次ぐほど高い。朝の通勤時は武蔵小杉で多くのビジネスパーソンが乗り、武蔵小山では今年6月に2棟目のタワーマンションが竣工したことから、利用者はさらに増えることに。
同所では今後も複数のタワーマンションが建つ予定で、いずれは武蔵小杉のように改札に長蛇の列が生まれる可能性がある。さらに、直通運転効果で都内から神奈川にかけて沿線住民が増えるなら、増車は混雑緩和に寄与するに違いない。
2019年11月には相鉄・JR直通線が開業し、次いで東急ともつながる相鉄線。神奈川県央〜都心部に複数の大動脈が生まれることで、住まいの選択肢も広がることだろう。沿線のさらなる発展が期待される。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)