埼玉県寄居町(よりいまち)は、荒川が秩父山地から関東平野に流れ出る扇状地の要にあたり、玉淀河原などの景勝地を抱える。寺社仏閣などの史跡も多い。
秩父往還の宿場町でもあったことから、3路線が乗り入れており、都心からのアクセスも悪くない。
町では、国の補助を受けて市街地活性化事業を進めている。2020年には、玉淀河原や雀宮公園の整備が完成し、2023年4月、寄居駅南口に事業の核となる観光の拠点施設がオープンした。
■ 水の町として多くの景勝地や史跡を抱える寄居町
埼玉県寄居町は、埼玉県の北西部、都心から70キロ圏に位置する。荒川が秩父山地から関東平野に流れ出る扇状地の要にあり、古くから城下町、秩父往還の宿場町として発達した。現在も、寄居駅には東武東上線、JR八高線、秩父鉄道線の3線が乗り入れている。
水資源が豊かな町であり、1985年には寄居町から荒川に注ぐ風布川の日本水が名水百選に指定された。同年に、このような「水」の清らかさを背景として、寄居町は、緑と清流を観光に生かすだけでなく、産業と調和させ保全していく「水の郷百選」にも選ばれている。
風布川流域は、1995年に名水の水源地「日本水の森」として水源の森百選に選ばれており、狼淵や夫婦滝をはじめ、姥宮神社の胎内くぐりなど、数多くの景勝地を抱える。
また、鉢形城跡をはじめ、十二支守り本尊の霊場や寄居七福神といった寺社仏閣などの史跡も多く、文豪や梨園に愛されてきた景勝地としても著名である。
特に、荒川沿いの玉淀河原は、扇状地の頂きの部分にあたり、荒川の流れが広々とした峡谷を作り出している。かつて、文豪田山花袋は、「東京付近ではこれほど雄大なながめをもった峡谷は、ほかにない」と激賞したとされる。
■ 賑わいを取り戻すべく、寄居町中心市街地活性化基本計画を策定
景勝地として知られる寄居町も、近年は、大規模小売店舗の撤退や郊外への店舗移転とともに、中心市街地の空洞化に悩まされている。そこで、平成30年、賑わいを取り戻すべく、寄居町中心市街地活性化基本計画を策定した。
それによると、集客と回遊性の向上、立ち寄り場所・機会の充実、住まい手・担い手づくりの3つを軸に、市街地の活性化を進める計画である。
集客と回遊性の向上は、寄居駅南口駅前の整備を中心に、都市計画道路の整備、公園整備、大規模小売店の新規誘致などをおこなう。
立ち寄り場所・機会の充実としては、「商いチャレンジ応援プロジェクト」という施策の下、空き店舗の有効活用の推進や創業支援などをおこない、商店街を再生したい考えだ。
住まい手・担い手づくりとしては、定住転入希望者への支援をおこなう。転入者の新築住宅の取得補助、新婚夫婦への家賃補助などをおこなっている。
寄居町では、具体的な数値目標を設定し、寄居駅にも近い荒川沿いの景勝地・玉淀河原の利用者数を、向こう5年間で約10,000人増やし、74,200人と見込んでいる。
■ 2023年4月、寄居駅南口駅前に2つの拠点施設がオープン
寄居町中心市街地活性化事業の総事業費は約24億円で、その半分は国が補助する。
その目玉である寄居駅南口駅前の整備は、計画の策定から一気に進み、2023年4月には、拠点施設である「yotteco」や賑わい創出交流広場(YORIBA)がオープンした。「yotteco」は、延べ床面積483平米の2階建の現代的な多目的拠点施設だ。1階では、観光案内や移住定住相談、特産品の販売をおこなっている。
2階には2つの多目的スペースがあり、予約によって一般個人や団体の専用利用も可能だ。
先行して、2020年11月には、荒川の景勝地・玉淀河原の整備が完成した。親水広場、親水遊歩道が整備され、荒川の雄大な流れを間近に眺めながら、バーベキューを楽しんだり散歩したりすることができるようになった。
同時に、長らく閉鎖されていた七代目松本幸四郎の別邸跡地である雀宮公園を整備し、リニューアルオープンさせた。幸四郎の愛した「武州寄居町雀亭」をイメージした東屋が建築され、園内中央部には南北を結ぶもみじ橋が設置されている。
雀宮公園は、玉淀河原に隣接しており、公園からは河原の景色が楽しめる。寄居駅や玉淀駅からのアクセスが良いことから、これらの駅から、雀宮公園、そして玉淀河原へと回遊する観光客を見込むことができるだろう。
既に、寄居駅南口から、玉淀河原に向かう道路周辺には、新しい飲食店なども出現し始めており、今後の市街地活性化に期待したい。