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東急田園都市線5駅で駅改良計画「Green UNDER GROUND」。人気の街の価値をさらに上げる計画とは?

都市計画・再開発(地域情報)/東京 ニュース

2023/06/19 配信

東急田園都市線の、世田谷区、目黒区部分にある池尻大橋駅、三軒茶屋駅、駒沢大学駅、桜新町駅、用賀駅の5駅を対象に「Green UNDER GROUND」と名付けられた改良計画が進められている。駅を変えるだけではなく、街の価値を上げる計画として注目したい。

地下化から45年目のリニューアル

駅構内に貼られたリニューアルプロジェクトの告知。各駅ごとにテーマカラーが異なる
駅構内に貼られたリニューアルプロジェクトの告知。各駅ごとにテーマカラーが異なる

渋谷駅から二子玉川駅までの間、地下を走る東急田園都市線で、渋谷駅の隣、池尻大橋駅から二子玉川駅の手前の用賀駅までの5駅(世田谷区・目黒区内)を対象に「Green UNDER GROUND」と名付けられた駅のリニューアルプロジェクトが進行している。

この区間は、かつて玉川線、愛称「玉電」と呼ばれるコンパクトな電車が地上を走っていた部分。1977年に地下化され、新玉川線として開業。2000年に田園都市線に統合された。

それから45年。鉄道も、社会も大きく変化した。

乗降客数増に加え、社会も大きく変化

コロナで減少したものの、それまでは乗降客数は上昇の一途をたどっていた(資料提供/東急)
コロナで減少したものの、それまでは乗降客数は上昇の一途をたどっていた(資料提供/東急)

乗降客数は地下化以降の45年間で1日最大約20万人増加。電車内に空調がなくても不思議でなかった時代に比べると現在は空調は必須の設備になった。2000年の交通バリアフリー法以降は誰にも使いやすい鉄道が求められるようにもなった。今後は地球温暖化などへの配慮も必要だろう。

さらにコロナ禍では毎日定期券を利用して通勤する人が減った。その一方で自分が住んでいる地域を見直し、地元で働く、飲食や買い物をする人や地域活動をする人なども増えている。都心に出かける人は減ったとはいえ、人は動いている。

通勤が必須だった時代であれば駅は単なる都心への入口で良かっただろうが、今後、通勤の機会が減る可能性を考えると、駅や鉄道の役割は今後変わっていく必要がある。駅で考えればもっと魅力的な場であり、地域の中で意味を持つ場になる必要があろうし、地域内での移動を促進する役割も必要かもしれない。

駒沢大学駅で行われている内容は?

では、具体的にどのようなことが行われているのか。2021年7月から工事がスタートしている駒澤大学駅では通路やトイレなどの駅構内の工事と駅ビル等の地上での工事、周辺地域との連携といった3つの取組みが同時に進行している。

駅構内の通路やトイレのリニューアル自体は他でもよく行われており、目新しいものではないが、面白いのは脱炭素・循環型社会へ向けた取り組みとして、旧玉川線の廃材として保管されていた敷石を洗面台に活用し、廃材処理時のCO2削減を実現しているという点。すでに完成、使われるようになった駒澤大学駅のトイレは2022年度グッドトイレ選奨・社会的活動部門の奨励奨を受賞している。

地上直結のエレベータの設置も

改修後、再オープンしたドトールコーヒーショップ。緑の公園を思わせる外装は西口で建築されている2棟のビルにも踏襲される
改修後、再オープンしたドトールコーヒーショップ。緑の公園を思わせる外装は西口で建築されている2棟のビルにも踏襲される

地上での工事のうちのひとつは、駅東口に直結する駒沢大学駅東口ビルの耐震補強工事。ここにはドトールコーヒーショップが入っており、工事に伴い2020年末に閉店、2022年8月に工事完了に伴って再出店している。

もちろん、単なる再出店ではない。1階にはPC作業などがしやすい一人用のブース席が7席用意されており、地元の人により利用してもらいやすいような工夫といえよう。また、テラスに置かれたベンチには旧池上駅木造駅舎の古材、店舗内の床にはリサイクル材から製造された素材を使用したり、マイボトル持ち込みによる割引サービスを導入するなど、SDGsを意識した取組みもある。

西口の工事現場。国道246号を挟んで東口がある
西口の工事現場。国道246号を挟んで東口がある

もうひとつの地上工事は西口で建設されている2階建て、4階建ての2棟の新築。そのうちの4階建てビルは国土交通省の「令和4年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されており、日本初の耐火・構造技術を導入した木造駅ビルになる。

このビルで大事なポイントは1階に駅と地上を繋ぐエレベーターが設置されること。駅がより利用しやすくなり、バリアフリー化も推進されるのだ。また、1階、2階には店舗も入る予定で、駅の利便性も向上する。

これら3棟のビルは駒沢大学駅のリニューアルコンセプト「UNDER  THE  PARK」に合わせて木の葉をイメージしたデザインに統一される。地下駅は地上を歩いている人に分かりにくいものだが、デザインを統一、しかも分かりやすく目立つ存在にすることでその問題を解決しようという意図である。

地域に愛される駅づくりも進む

地域との連携では地元にある駒澤大学の大学三大駅伝3冠への挑戦を応援するプロジェクトを行っており、2023年1月の箱根駅伝の前には駅構内通路に応援メッセージを書くコーナーが作られた。

駅員が総出で用意した応援メッセージコーナーには250人ほどがメッセージを寄せ、駅伝終了後には特製横断幕に貼られて陸上競技部の優勝祝賀会に花を添えたという。駒澤大学の学生にとっては単に通学で通う駅ではなく、大学を応援してくれる駅と感じられ、愛着を覚えたのではなかろうか。

また、2023年5月27日から9月末まで(予定)は駅近くにある、建替え事業前の更地約2300㎡を暫定利用して駅周辺の事業者、地域住民参加型の環境・循環をテーマにした農園の運営が始まった。農に親しみたいと思ってもなかなかチャンスのない地域であることを考えると、地元の人たちに人気を呼びそうである。

桜新町駅リニューアル工事もスタート

桜新町といえば、駅前の八重桜の並木、サザエさん美術館などが有名な住宅街
桜新町といえば、駅前の八重桜の並木、サザエさん美術館などが有名な住宅街

2023年5月からは桜新町駅のリニューアル工事もスタートした。桜新町駅のリニューアルコンセプトは八重桜の桜並木で有名な同駅らしく「WITH THE CHERRYBLOSSOMS」。地下2階、地下3」階のホーム階では、桜並木を想起するアーチ状の壁面を新設して木材のカウンターやベンチを設置、桜の木の下に人が佇むような、ほっとする居場所を作るそうだ。

また、設備改修では空調機を大幅に増強・ 新設して駅構内の暑さ改善による快適性向上も図られる。コンコースをはじめとした駅構内の利便性向上も図られる予定で、詳細は未定ながら、より使いたくなる駅になりそうである。

鉄道駅のリニューアルには時間がかかる

池尻大橋駅周辺。幹線道路の地下を走る鉄道だけに工事には時間がかかる
池尻大橋駅周辺。幹線道路の地下を走る鉄道だけに工事には時間がかかる

鉄道駅での工事は終電通過後から始発が来るまでの時間でしか作業ができないため、通常の工事の3倍以上の時間がかかり、かつ今回のプロジェクトの対象となる駅は幹線道路などの下にあるため、その制約も受ける。

駅構内のリニューアルというだけならもっと簡単なのだろうが、設備の増強や新しい機能を付加することなどを考えると、まだまだ時間はかかりそう。それでも駒沢大学駅では姿が見え始めてきているなど着実に伸展はしており、今後には期待が持てる。すでに人気沿線の同沿線がさらにバージョンアップすると考えると、どう変化していくかは注視しておきたいところである。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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